更新日: 2023.03.08 確定申告
「源泉徴収ありの特定口座」でも確定申告をしたほうが良いケース
※配当所得=配当金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)-株式などを取得するための借入金の利子ですが、「株式などを取得するための借入金の利子」がなければ、配当所得=配当金額です。本稿では配当所得と配当金額は同義とします。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
配当控除とは
株式の配当金(=配当所得)について、確定申告で総合課税の適用を受けると配当控除の対象になります。配当控除は、配当所得を含め課税総所得金額等が1000万円以下の場合は10%、配当所得を含め1000万円超の場合には。以下の計算に基づく額がそれぞれ税額控除されます。
配当控除額 = A× 10% + B × 5%
A= 配当所得金額 - (課税総所得金額 - 1000万円)
B = 配当所得金額 - A(Aの値がマイナスの場合はゼロとする)
なお、REITの分配金や外国株式などの配当金は配当控除の対象外です。外貨建等証券投資信託などについては配当控除の率が異なります。
配当控除を受けること希望する場合は、総合課税の確定申告が必要です。
株式の損失と配当所得の損益通算
ある年に株式の損失があったとします。もし、同じ年に配当所得があれば、特定口座内で自動的に損益通算されますので確定申告は不要です。しかし、それは配当金の受け取り方を、株式数比例配分方式(=配当金を証券会社の口座で受け取る)を選択している場合に限られます。
配当金の受け取り方を登録配当金受領口座方式(=配当金を銀行口座に振り込んでもらう)や配当金領収証方式(=配当金を郵便局などの窓口で受け取る)を選択している場合、特定口座内で自動的に損益通算されません。つまり、株式数比例配分方式以外で配当金を受け取る場合、株式の譲渡所得の損失と配当金の損益通算を希望される場合は、分離課税の確定申告が必要です。
なお、配当控除(総合課税)と損益通算(分離課税)は、どちらか一方を選択します。
1人で複数の証券会社に特定口座を保有している場合
1人で複数の証券会社に特定口座を持っている場合はどのようになるのでしょう。例えば、A証券会社の特定口座の株式の損失とB証券会社の特定口座で受け取った配当金と、証券会社をまたいで損益通算を希望する場合はどうなるのでしょう。
特定口座内で自動的に損益通算がなされるのは、あくまでも「1つの証券会社の特定口座内」に限られます。先述のように、特定口座で保有している株式といえども、証券会社をまたいで損益通算を希望する場合には、分離課税の確定申告が必要になります。
繰越控除を受ける場合
特定口座内で自動的に損益通算がなされてもなお、通算しきれない損失があった場合はどうなるのでしょうか。
控除しきれない損失は、翌年以後3年間にわたり、確定申告を行うことにより、株式の売却益や配当金などから繰越控除できます。繰越控除とは、例えば「前年の(通算しきれなかった)損失」と「当年の売却益や配当金」とを損益通算するようなイメージです。
「源泉徴収ありの特定口座」でも年間取引報告書を発行可能
「源泉徴収ありの特定口座」でも、簡易申告口座の特定口座と同じく、年間取引報告書を発行してもらえますので、比較的簡便に確定申告を行うことができます。
「源泉徴収ありの特定口座」をお持ちの方で確定申告を希望する方は、以上のことを確認して手続きしましょう。
出典
国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
国税庁 配当所得があるとき(配当控除)
国税庁 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
国税庁 特定口座制度
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役