更新日: 2019.08.20 その他税金

アルバイトで160万稼ぐ学生が家族にかける迷惑 知っておきたい税金の仕組み

アルバイトで160万稼ぐ学生が家族にかける迷惑 知っておきたい税金の仕組み
学生がアルバイトで一定の給与収入を超えて稼ぐような場合に気をつけていただきたいことがあります。まずは、年収103万円の壁が知られていますが、これを超えると所得税という種類の税金がかかります。さらに、親の税負担も増えて家族全体の手取り額が減ってしまうことがあります。
 
ここでは、アルバイトでできるだけ稼ぎたいと思っている学生とその家族のために、税金の仕組みや、稼ぎすぎるとどのような問題が出てくるかについて、ご説明します。
 
尾上好美

執筆者:尾上好美(おうえ よしみ)

アルファプランナーズ代表

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP(R)認定者
2級キャリア・コンサルティング技能士
大学卒業後、IT関連企業で、技術支援、マーケティング職等の業務に約12年間従事した後、子育てを経て、CFP®として独立。現在、ファイナンシャルプランナーとキャリアコンサルタントを兼業し、仕事(キャリア)と資産運用に関する相談業務、講師、執筆を行っている。住宅相談、教育資金に関する相談、リタイアメントプラン、相続など、子育て世代から中高年世代からの個人相談に数多く対応。「後悔のない選択ができた」と感じてもらえるような支援やサービスの提供を志している。

http://alpha-planners.com/

アルバイトの給料から差し引ける控除とは?

まず、アルバイトとして給料をもらっている場合、その所得に応じて、住民税と所得税がかかります。ただし、“控除”といって、所得の種類に応じて経費とみなされる分は収入から差し引いてよい金額があるため、実質、それぞれの税金がかかってくる収入金額が異なります。
 
住民税は、住民票登録をしている市区町村によって、若干異なりますが、基本的には、前年度の所得に応じて課税される所得割(10%)と、全員にかかる均等割5000円(※1)を足した金額になります。
 
ただし、収入から“控除”できる一定額があり、基礎控除(33万円)と給与所得控除(最低65万円)を加えた98万円を超えた場合には住民税がかかることになります。
 
これとは別に非課税限度額が定められており、給与収入100万円(※1)までなら住民税がかからないといえるでしょう。

※1 東京都の場合。地域によって金額が変わることがありますので、確認してください。
 
一方で、所得税は、その年度(1月1日~12月31日)の所得に対して課税されます。税率は、累進課税制で、所得に応じて税率のランクが上がります。
 
所得税の控除額は、基礎控除(38万円)に加え、給与所得者は給与所得控除(最低65万円)を引けるので、合計103万円(38万円+65万円)までは所得税がかかりません。
 

学生アルバイトの場合には、さらに控除できる! でも、注意も必要!

基本的には、住民税100万円、所得税103万円の壁を越えた場合には、学生自身がそれぞれの税金の納付者となります。
 
しかしながら、学生の場合には勤労学生控除を申請することによって、さらに住民税(26万円)、所得税(27万円)の控除額が加わり、住民税は124万円(※2)、所得税130万円まで所得税がかからないようにできます。
 
ですが、年収103万円を超えると、それまで親の扶養親族になっていた場合にはその対象から外れることになるで、親の収入から差し引けた控除額が少なくなり、実質、家族の税金負担が重くなるので、注意しましょう。

※2 住民税の詳細については、市区町村によって異なりますので確認してください。
 
特に、19歳以上23歳未満の扶養親族は、“特定扶養親族“として、通常の扶養親族よりも控除額が多いため、親(世帯主)に適用される所得税率が一段階上がってしまったり、勤務先によっては支給される家族手当などがなくなったりする可能性も出てきます。そうなると、親(世帯主)の手取り額はより減ってしまうことになります。
 
具体的にどの程度の金額が変わってくるのか考えてみましょう。
 
所得税の場合、特定扶養親族の控除額(63万円)がなくなると、世帯主の課税所得が増えることになります。
 
たとえば、所得税が10%、住民税が10%とすると、単純計算で12万6,000円(63万円×0.1+63万円×0.1)の納税負担が増えると考えられます。
 
アルバイトをしていて稼ぎが増えそうな場合には、まずは年収103万円を超える前に、家族に相談することが必要です。
 
※3 「源泉徴収」という形で所得税を納める場合は復興特別所得税(所得税額の2.1%)が合わせて徴収されますが、今回は考慮せずに計算しています。
※4 住民税の計算においては、調整控除額が発生しますが、今回は考慮せずに計算しています。
 

さらに、年収130万円以上になると社会保険料もかかる

アルバイトの場合でも、年収が130万円以上になると、本人の税金負担が増えるだけでなく、さらに、親の社会保険の扶養を外れてしまうことになり、国民健康保険や国民年金といった社会保険料を自分で支払う義務が生じます。その結果、長時間働いたにもかかわらず、手取りが減ってしまうことになるのです。
 
このように、住民税や所得税、社会保険の扶養上限である、100万円、103万円、130万円(※5)の金額を超えるときには、注意が必要です。
 
これらの“壁”を超えると、一気に負担が増えて手取りが減るということを意味しています。たとえば、“130万円の壁”を超えるのであれば、概ね150万円程度以上を稼ぐつもりで働かないと手取りを増やせないと考えた方がいいでしょう。
 
※5 社会保険の扶養条件とは別に、年収106万円を社会保険の加入条件にしている会社が増えています。社会保険の加入条件は、会社の規模や本人の労働時間など規定があり、これを満たす従業員は、社会保険に加入させる義務があります。
 
このように、学生がアルバイトに加担しすぎることは、自分にとっても家族にとっても得策であるとはいえません。
 
学生にとってのアルバイトは、社会経験の一つとして好ましいことだと思いますが、学生の本業である、学校での生活や学業とのバランスを考えると、学生のうちは、扶養親族の範囲(年収103万円)を超えないように注意したほうがよさそうです。
 
Text:尾上 好美(おうえ よしみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
2級キャリア・コンサルティング技能士
アルファプランナーズ代表

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