突然長期の海外転勤に。でも、税金などの支払いってどうなるの?
配信日: 2018.07.16 更新日: 2019.05.17
日本国内の会社に勤務している会社員が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤したり、海外の子会社に出向したりする場合には、その人は原則として所得税法上の「非居住者」となります。
Text:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
収入が会社からの給与収入のみの場合
非居住者の会社員が海外勤務で得た給与は、たとえ日本国内で支払われた給与であっても、原則として日本では課税されません。
ちなみに、会社役員の場合には、海外勤務の給与であっても国内で課税されます。
そのため、非居住者となる時(海外に出国する日)までに日本国内で得た給与について源泉徴収された所得税を精算しておく必要があります。
その精算の方法は、日本の会社員が毎年年末に行う年末調整とほぼ同様で、「給与所得者の保険料控除申告書」などの必要書類を会社に提出して、会社で精算を行います。
給与収入のほかに不動産所得などがある場合
不動産投資をしていて賃貸収入がある場合や日本で居住していた自宅を賃貸に出して、賃貸収入を得る場合など、給与収入のほかに所得が見込まれる場合には、日本で確定申告が必要となります。
このようなケースでは「納税管理人」を選定する必要があります。納税管理人とは、非居住者に代わって国税や地方税の申告書の提出や納税をするために選任される人のことをいいます。
そして、非居住者は納税管理人を選任するため、出国日までに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」をその人の納税地を所轄する税務署長に提出します。
納税管理人の選任が必要となるケース
会社員が納税管理人の選任を必要とする主なケースは以下の通りです。
(1)日本国内で不動産の賃貸(不動産所得)、売却(譲渡所得)がある場合
(2)日本国内での株式等の売却(譲渡所得)がある場合
(3)日本の企業から配当、利子などを受け取り確定申告する場合
(4)相続税や贈与税の納税義務がある場合
相続、贈与が発生した場合で、非居住者かつ外国籍であり、被相続人と相続人(または受贈者)の双方が過去5年以内に日本に住所がなかった場合は対象外となります。
(5)住民税や固定資産税の納税義務がある場合
住民税は、1月1日現在の居住者に納税義務があります。また、固定資産税・都市計画税は、1月1日現在の不動産所有者に課税されます。また、身近なところでは自動車税なども同様です。
納税管理人に関する注意事項
納税管理人は、弁護士や税理士などの資格者に限定されることはありません。そのため、親族や友人知人に依頼するケースが多くあります。
納税管理人が行うことは、非居住者の確定申告書の提出と、税金の納付が主になります。その他、税務署等から送られてくる書類や還付金などの受け取りなど、非居住者と税務署等の橋渡し役を担うこととなります。
ひとつ注意点として、日本においては税務申告書などの税務書類の作成について、税理士法という法律で、有償無償に関わらず、本人または税理士しかできないことと定められています。
そのため、非居住者に代わって税理士でない納税管理人が「私が代わりに確定申告書を作成しておきますよ」という対応はNGとなります。
あくまでも「提出と納付」に止めておかないと税理士法違反を問われる可能性があります。
ご心配の場合には、税理士に納税管理人を依頼する(おそらく有償となる)か、税理士などの専門家からアドバイスを得た上で対応することをお勧めします。
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士