額面と手取りの違いに怒り!所得税ってなんでこんなに取られるの!?所得税の仕組み
配信日: 2018.06.25 更新日: 2019.05.17
日本の税制は、いくらの所得があったかを自分で申告する申告制度を採用しています。
会社員の場合は年末調整で済ませてしまい、実際に所得税がどういった税金であるのかをしっかりと把握されている方は多くありません。
今回はそんな所得税にフォーカスを当ててみたいと思います。
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
所得税について関心をもとう
平成28年の国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、会社員や公務員などの企業・組織に雇用されて給与を得ている人数は約5000万人となっています。
そのうち85%以上の人が、源泉徴収による所得税の納税を行っています。ほとんどの人が、所得税に関する手続きを行わずに済ませています。
私たち納税者が特別なにもしなくても所得税に関する事務処理は滞りなく完結する仕組みができあがっています。
2015年に世界を騒がせた「パナマ文書の流出」という事件がありました。「パナマ文書」とは世界中の富裕層が税金の回避を目的に、所得税の安い外国で納税を行ったリストのこと。
アイスランドでは首相の辞任などを含む大きなスキャンダルとなりました。
大きな資産をもつ富裕層ですら所得税に関してさまざまな手段を講じています。日々の労働で得られた賃金は大切な資産であり、それに課される所得税の仕組みを知ることは、お金に関する悩みを解決する第一歩になります。
確定申告・年末調整・源泉徴収とは?
これらは年末になると出てくるお決まりの単語ですが、しっかりと理解できているでしょうか。
日本の所得税は申告制度を採用しており、納税者本人が得られた収入を証明し、税額を計算した上で所得税を納付します。これを「確定申告」といいます。
所得が給与のみの場合または給与所得と給与以外の所得(収入-経費)が20万円以下の場合は、「年末調整」で勤務先の会社が税額を確定してくれます。
その際、生命保険料控除や配偶者控除、扶養控除などの一部の所得控除も併せて申告し、納めるべき税額が決定されます。
給与所得を得ている方は、12月になると手取り額が多くなった経験がありませんか?年末にまとめて所得税を支払うのは納税者に大きな負担となります。
そこで、会社が毎月の給与から、一定額を所得税の納税に備えて天引きをしてくれます。
これが「源泉徴収」です。天引きの際、年間の収入額や所得控除の額が確定していないので、少し多めに源泉徴収がなされています。12月になると所得控除などが反映され、源泉徴収されすぎていた場合には、差額分が還付されます。
そのため、一時的に給与の手取り額が増加することがあるのです。
年末調整は所得税の納税に関する事務処理を簡素化する手続きです。雑損控除・医療控除・寄付金控除などの所得控除を反映するためには、自身で確定申告を行う必要があります。
この他にも2か所以上から給与を受け取っている場合や年収が2000万円を超える場合や住宅ローン控除を受ける場合は、年末調整では対応できないため、確定申告を行う必要があります。
ただし、住宅ローン控除のみ、会社員などの給与所得者に関しては、2年目以降年末調整で対応できます。
所得税の仕組みとは
所得税は給与所得を含む10種類の収入に関して課される税金となります。所得税は「累進課税制度」という稼いだ金額が大きければ大きいほど多くの税金を納める仕組みとなっています。
所得税には「総合課税」という利益と一部損失を合算して課税額を算出するものと、「分離課税」という一個一個の収益に個別に税金をかけていくものがあります。
給与所得は「総合課税」の一部であり、株式などの損益は「分離課税」となります。そのため、株式で損失を抱えてしまったとしても総合課税である給与所得から株式の損失を差し引いて所得税を安くするといったことはできません。
給与所得の所得税の決め方は、「給与所得控除」という特別な所得控除が認められており、少々特殊です。
基本的に所得税の課税所得は(収入-経費-所得控除=課税所得)ですが、給与所得の場合、経費に該当する部分を算出することが困難です。
そこで、年収額に応じて一定の割合を経費と見なす給与所得控除が導入されており、給与所得控除の課税所得の決め方は(年収-給与所得控除-所得控除=課税所得)となります。
この課税所得の金額に応じて5%~45%の税率と、一定の控除額が減らされて、最終的な所得税の納付額が決まります。
まとめ
所得税の確定申告は、避けるものや過剰に恐れるものではなく、自身の正確な税額を申請するチャンスです。税額が決定される仕組みを知ることで、所得税を節約する方法も見えてきます。
サラリーマンだからといって、所得税を安くする方法が無いわけではありません。
独身の場合、所得控除の種類が少ないため、平均年収420万円なら、年間10万円程度の所得税を納めていることになります。
2019年の10月には消費税が10%に引き上げられる予定ですので、家計への負担も大きくなることが予想されます。増税に備えて所得税との付き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級