更新日: 2023.03.08 控除
ふるさと納税だけじゃない! 寄附金で税金が減る4つのポイントとは?
しかし一方で、自治体による寄附を募るための過当な競争などの問題も生じており、疑問を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それなら、ふるさと納税以外の寄附も検討してみませんか。
条件を満たせば、ふるさと納税と同様に税金を減らすことができます。そのための大事なポイントを4つ、本記事でご紹介します。
執筆者:酒井 乙(さかい きのと)
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
目次
ふるさと納税は、寄附金控除の1つ
ポイントに触れる前に、「なぜ、ふるさと納税の代わりに寄附なの?」と思われる方もいるのではないでしょうか。
しかし、ふるさと納税は「納税」という言葉がついているものの、名目上は「都道府県や市区町村への寄附」(※2)なのです。
「ふるさと」と言いながらも、自分のふるさとでなくとも納税できるため、本来の趣旨に気付かないのも無理はありません。
ふるさと納税では、ふるさとに「寄附」した額(ただし2000円以上)を所得税や住民税から差し引くことができます。しかし、この優遇はふるさと納税に限りません。例えば、自分の関心がある社会問題の解決を目指す団体などへの寄附でも受けることができます。
この、寄附した額を所得や税金から差し引くことができる仕組みを「寄附金控除」といいます。そして、ふるさと納税もこの「寄附金控除」の一種です。
では次に、ふるさと納税以外の寄附でも寄附金控除を受けるための、大切な4つのポイントをご紹介します。
ポイント1:どこでもよいから寄附すればよい、というわけではない
例えば、友人から「慈善事業を始めるので寄附してほしい」と言われて応じたとします。支払った寄附金は、寄附金控除の対象になるのでしょうか?
答えは、YesともNoともいえません。なぜなら、どのような団体に寄附すれば寄附金控除の対象になるのかは、法律によって定められているからです。
例えば、所得税においては、次のように規定されています(※3)。
1. 国または地方公共団体への寄附金
2. 公益法人などに対する寄附金で、所定の要件を満たし財務大臣が指定したもの
3. 教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する法人に対する寄附金(例えば、独立行政法人、日本赤十字社、公益社団法人、社会福祉法人、私立学校法人など)
4. 政治活動に関する寄附金のうち、一定のもの
5. 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)等の活動事業に対する一定の寄附金、など
つまり、寄附金控除の対象になる寄附金とは、国や都道府県、政府などの指定を受け、かつ社会の一定の利益になるとされる団体への寄附でなければいけません。
冒頭の例に戻ると、友人の「慈善事業」はこれら一定の要件を満たした団体に該当する可能性があるかもしれませんし、ないかもしれません。本人に聞いてみなければ分かりませんが、該当しないとなると、寄附金控除を使えないことになります。
そうならないためにも、まずは寄附する前に、寄附先に「寄附金が寄附金控除に該当するのか」を確認しておくことをお勧めします。
ポイント2:規定に沿った寄附先に寄附しても、寄附金控除にならないことも
また、寄附金控除に該当する団体への寄附であっても、以下に該当する場合は寄附金控除とならないとされています(※3)。
1. 学校の入学に関してするもの
2. 寄附をした人に特別の利益がおよぶと認められるもの
3. 政治資金規正法に違反するもの など
この中で、特に私たちに身近で、注意を要するのが「1.学校の入学に関するもの」でしょう。
例えば、お子さまが大学へ入学すると同時にその大学へ任意に寄附を行うことはよくあります。しかしその大学が、前述の寄附金控除に該当する団体に指定されていても、以下に該当する場合は寄附金控除とならないとされています。
「入学願書受付の開始日から入学が予定される年の年末までの期間内に納付した」寄附金は、原則として「入学と相当の因果関係のある寄附金」であり、「学校の入学に関してする寄附金」に当たる(寄附金控除の対象とならない)ものとして取り扱うこととされている。」
(引用:文科省「新入生またはその保護者が学校法人に対して任意に支出する寄附金について」(※4))
ただし、この取り扱いには例外があり、「入学決定後に募集の開始があったもので、新入生以外の者と同一の条件で募集される部分」については、寄附金控除の対象となるものとして取り扱われている」(引用:同)とされています。
いずれにせよ、こちらも寄附する前に、寄附先へ事前に寄附金控除に該当するのか、確認しておくことに越したことはありません。
ポイント3:所得税だけでなく、住民税が減る場合がある
寄附金控除は、所得税だけでなく、住民税から控除される場合があります。どのような寄附金が該当するのかを見てみましょう。
1.都道府県・市区町村に対する寄附金(ふるさと納税を含む)
2.住所地の都道府県共同募金会・日本赤十字社支部に対する寄附金
3.都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金
(出典:総務省「ふるさと納税以外の寄附金税制」(※5))
こちらは前述の所得税の寄附金控除と違い、お住まいの自治体(=個人住民税を納める先)への貢献があるとして、その地域の条例などで認められたものが、寄附金控除の対象となります。
つまり、寄附先の団体がお住まいの自治体で条例指定されていれば、所得税だけでなく住民税からも控除できるため、減税効果がより高くなります。
ただし、住民税は大きく分けて「都道府県民税」と「市民税」で構成されていますが、その両方が控除の対象となるかどうかは、ご自身がどこに住んでいるかによって変わってきます。
例えば、神奈川県横浜市に住んでいるBさんが支払った寄附金が、「都道府県民税」と「市民税」の両方から控除されるためには、寄附先の団体が、神奈川県と横浜市の両方で条例指定されている必要があります。
ややこしいですが、このように都道府県と市町村の両方で寄附金控除を使うには、その両方で条例指定されていなければならないことは、覚えておいたほうがよいでしょう。
整理すると、住民税における寄附金控除のパターンには、以下の3つがあります。
1.都道府県税と市民税の両方から控除できるもの
2.都道府県税からのみ控除できるもの
3.市民税からのみ控除できるもの
どれに該当するかは、お住まいの都道府県や市区町村のホームページなどに掲載されている、条例指定の寄附先の一覧表を確認したり、直接寄附先へ確認したりしてください。
ポイント4:確定申告が必要
最後のポイントは、ふるさと納税以外の寄附金で控除を受けるためには、確定申告が必要だということです。
ふるさと納税では、会社勤めなど年末調整を受けている方が利用できるワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告をせずに寄附金控除を受けることができますが、それ以外の寄附金にはそのような仕組みはありません。
この点は、やや面倒に感じるかもしれませんが、今では事前に所轄税務署で「利用者識別番号」と「暗証番号」を発行しておけば、カードリーダーやマイナンバーカードなしでe-Taxを使って確定申告ができるようになり、申告作業も楽になっています。まずは試してみるのも手です。
ここまで、ふるさと納税以外の寄附金で寄附金控除を利用する4つのポイントをご紹介しましたが、一貫して大切なことは、寄附の前に、寄附先へ事前に寄附金控除の対象になるのか確認しておくことです。
本記事をきっかけに、ぜひふるさと納税以外の寄附金にもチャレンジしてみてください。
出典
(※1)総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年7月29日) P2グラフより
(※2)総務省 ふるさと納税ポータルサイト 「よくわかる!ふるさと納税」
(※3)国税庁 No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
(※4)文部省高等教育局私学部長通知 新入生またはその保護者が学校法人に対して任意に支出する寄附金について(平成 10 年 4 月 16 日)
(※5)総務省 ふるさと納税以外の寄附金税制
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。