更新日: 2019.05.17 その他税金

2018年度から始まる課税強化の動き

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : FINANCIAL FIELD編集部

2018年度から始まる課税強化の動き
比較的高収入の人を対象に、2018年4月から課税強化が進みます。

相続した土地の評価を下げられる「小規模宅地の特例」が厳格化される、高所得者への所得課税が強化される、海外にある資産への課税が強化される、などが実施されます。

これらのポイントを解説します。
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

FINANCIAL FIELD編集部

監修:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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小規模宅地に関する特例が厳格に

資産税の代表といえる相続税は、土地の評価額が高いほど税額も高くなり、納税者には大きな負担となります。
 
これに配慮して、亡くなった人の家族が土地や家屋を相続する際は、一定面積以下の土地(330㎡以下)については、その相続税の評価額を80%減額するのが「小規模宅地の特例」制度です。遺族が住み慣れた家を手放さなくても済むように、配慮された税の仕組みといえます。
 
この恩典を受けることで相続税は大幅に減額されます。ただこの恩典を受けることができる人は、①故人の配偶者、②同居していた家族、③持ち家のない家族、となっていました。
 
特例の恩典を受ける人のうち、①配偶者、②同居家族は従来通りですが、③持ち家のない家族については、適用される基準が厳格化されます。
 
これまでは、「相続するまでの3年間以上」自分(配偶者も含む)の持ち家に住んでいない場合は、この特例を受けることができました。
 
しかし、この特例を受け相続税負担を軽減するために、自分が住んでいるにもかかわらず、家の名義だけを身内に贈与したり、会社組織の名義に変更したりするケースが目立っていました。
 
また、相続発生までの3年以上、3親等以内の親族宅に居住していた人などもいました。特例を受けるための条件づくりです。
 
こうした方策は節税の手段として、実際に利用されてきました。いわゆる「家なき子」と呼ばれる立場を敢えてつくり、相続税を軽減することを狙ったもので、5年、10年かけてこのような対応策をとる人が結構いました。
 
これは本来の政策目的とは異なるため、これからは適用基準が厳しくなり特例が受けられなくなります。
 
贈与や譲渡の事例がかなり以前だったとしても、実際に所有していた過去があれば「家なき子」としては認められず、この特例は使えなくなります。
 
実際に相続税対策を専門とする税理士などからも、この「家なき子」になる方法はかなり推奨されていました。このため2018年の4月以降、相続税を納める際は注意が必要になります。
 

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高収入会社員などへの所得控除の減額

高収入を得ている、会社員や公務員への課税も強化されます。大きく別けて2つあり、配偶者(特別)控除の見直しと、給与所得控除の上限の引下げです。
 
配偶者(特別)控除は、配偶者の所得金額に応じて控除が受けられるもので、配偶者の年間所得が38万円以下の場合は、38万円の配偶者控除があり、配偶者の所得が高くなるにつれ、控除金額が段階的に減額される配偶者特別控除があります。
 
この配偶者特別控除の条件は、配偶者の所得要件は緩和され、配偶者の所得が上がっても配偶者特別控除は受けることができます。一方で配偶者の所得が上がると、健康保険料などが発生するジレンマもあります。
 
納税者本人の年間給与が上がるにつれ、配偶者(特別)控除の額は減り、年収1220万円以上だと一切受けることはできなくなります。
 
もう1つが給与所得控除の上限の引下げです。高収入の会社員や公務員には、給与収入から差し引ける「給与所得控除」(一種の必要経費にあたるもの)が認められてきました。
 
この控除額は、2015年には、上限245万円(年収1500万円超の人)の給与所得控除がありました。それが現在は、上限220万円(年収1000万円超の人)に引き下げられ、2020年には、上限195万円(年収850万円超の人)に引下げとなります。
 
仮に1500万円の年収のある人でも、195万円の控除しか受けることはできなくなります。高額所得者ほど給与所得控除が減らされ、税負担が増す仕組みです。
 

海外資産の捕捉と課税

これまで海外の金融機関に資産を移転・運用する場合には、その運用益などは日本の税務当局から十分に捕捉されにくく、実際に課税逃れとなることも可能でした。
 
これが各国の税務当局間で連携が進み、OECD(経済協力開発機構)の加盟国を中心としたCRS(共通報告基準)がつくられ、この枠組みの運用が開始されます。
 
これにより、租税回避地を含む100以上の国や地域の金融機関からの口座情報が日本の国税当局に送られ、海外資産の把握が容易になります。海外の口座情報を、国税庁が正確に把握できるシステムになります。
 
預金はもとより、株式・投資信託などの残高、それに伴う受取利子や配当が把握されてしまいます。
 
こうして得た運用益は日本で発生した所得と合計して確定申告をする必要が出てきます。もしこの確定申告をしないでいると、申告漏れとなり税務調査の対象にもなります。
 
海外に資産を持つ人は富裕層が多いと推測され、税務調査の確率も高まると思われます。
 
海外の金融機関に資産を持つ場合、日本におけるマイナンバーの登録が義務づけられます。まだ任意となっている国内の金融機関よりも厳しくなっています。
 
それは国内の銀行へのマイナンバーの登録は、提供が求められても任意なので拒否もできますが、海外に口座を持つ場合は義務化されます。
 
このため、この対応に苦慮している人も多いと推測されますが、実際は来年春の確定申告から適用されます。
 
実際に所得が比較的に高い層を狙って、所得税や相続税などの課税強化が、現在よりも進みそうです。「正しい納税」という視点もありますが、これまで節税対策を工夫してきた人にとっては逆風になりそうです。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職