退職金、受取日をずらすと〈手取り〉が大幅アップする? 一体どういう仕組み?
配信日: 2022.05.15

ここでは、退職金の受取日をずらすことで、受け取る退職金の金額が変化する仕組みについて紹介します。

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退職金にも税金がかかる
退職金には税金がかかります。一時金形式で退職金を受け取る場合、所得税や住民税が源泉徴収または特別徴収されるので、実際に受け取る手取り金額は、額面よりも少なくなります。
ただし、退職金は長年の勤労に対する報償的給与として、一時的に支払われるものであるため、税負担を軽くする配慮として、退職所得控除が設けられており、他の所得とは分離して課税されます。また、退職所得控除額より退職金が少ない場合は、税金はかかりません。
年金形式で退職金を受け取る場合は、公的年金等控除の対象なので、控除額を超えなければ課税の対象にはなりません。ただし控除額を超えた場合、控除額を超えた退職金は雑所得として扱われるので、所得税や住民税の課税対象となります。また、所得が増加することになるので、社会保険料の負担額が増える可能性があります。
退職所得控除額で退職金の手取り額は変わる
退職所得控除額は、勤続年数によって計算されます。勤続年数20年までは勤続年数×40万円が控除額となり、21年目以降は、勤続20年の退職所得控除額の800万円に、1年ごとに70万円ずつ加算されていきます。(ただし勤続年数2年以下の控除額は80万円とされます。)この場合の勤続年数とは、1年未満の端数の日数がある場合は、繰り上げて1年として計算されます。
そのため、30年と1日働いた場合は、31年と計算されるのです。勤続30年の退職所得控除額は1500万円、勤続31年だと1570万円となります。
勤続年数が1年違えば、40万円または70万円分退職所得控除額が増額されます。その1年は、たった1日だけの違いで得られるのです。退職金が退職所得控除金額以上であれば、退職金を上回った金額の2分の1が課税対象となる課税退職所得金額です。退職所得控除金額が高額であればあるほど、課税退職金額は低くなり、差し引かれる税額は少なくなります。
退職金の手取り額をアップする方法は?
まず大切なことは、退職所得控除額を増やすために、勤続年数を増やすことです。そして、もし可能ならば、退職金を退職所得控除の範囲内の金額で、一時金形式で受け取り、残りの退職金を年金形式で公的年金等控除の控除内に収まるように受け取れば、税金として納める金額は少なくて済み、手取り額はアップします。
ただし、年金形式で退職金を受け取ることで、所得額が増加するので、社会保険料は増額する可能性があります。
退職金の受取日をずらして手取り額をアップする
退職金の受取日をずらして手取り額をアップするということは、退職所得控除額を計算する上での勤続年数を多くするということです。ただ単に受取日をずらしても、勤続日数が変わらなければ意味はありません。
勤続日数が29年と364日なら勤続年数は30年ですが、あと2日働くことで、勤続日数が30年と1日になり、勤続年数は31年となります。このように日数を増やすことで、退職金の金額は変わらなくても、実際に受け取れる手取り額を増やすことができるのです。
出典
国税庁 退職金と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部