更新日: 2020.04.07 控除
生命保険料控除について。どうしたら還付税額を最大化できる?
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
生命保険料控除とは?
生命保険料控除とは、生命保険料を支払った場合に申告できる所得控除です。平成 24 年に改正になり、以前のルールより複雑になりました。
生命保険料控除は図表1の5つの控除から構成されています。その5つの控除額が、さらに「新旧生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新旧個人年金保険料控除」の3種類に分かれ、それぞれに上限額があり、さらに全体で12万円が上限額として設定されるという複雑な構成になっています。
今申し上げた12万円は所得控除を受けられる上限額であり、実際に還付される税額はそれに各人の税率をかけたものになることをご注意ください。
【図表1】
出典:国税庁タックスアンサー「No.1140 生命保険料控除」
生命保険料控除を最大化するには?
1.夫が給与所得者、妻が専業主婦の場合は、税額還付が可能な夫名義で申告するしかありません。それ故、5種類の保険契約でいくつかのものが上限額を超えていても対応策はありません。
2.共稼ぎ夫婦の場合、この場合はいろいろと工夫の余地があります。
(1)夫婦どちらか収入の多いほうに保険料控除を集中し、所得控除の申告を行います。
(2)それでも所得控除の上限額を超えてしまう場合は、収入の少ないほうで所得控除申告を行います。
そうすれば上限額を超えた分を無駄にせずに、税金の還付を受けることが可能になります。
3.上記の場合の注意事項
(1)収入の多いほうから優先して所得控除の申告をするのは、収入の多いほうが還付税率が大きくなるからです。
(2)保険料に関する所得控除を受けられるのは、契約者または保険料負担者です。上限額を超えたからといって、夫が契約者の保険の所得控除を妻が申告することはできません。この場合、夫が契約者の保険契約でも妻が保険料を支払うようにすれば、妻が所得控除を申告することができるようになります。
どうしたら所得控除額を最大にできるか?
それでは共稼ぎ夫婦を想定して、生命保険料控除を最大化する方法を検討してみましょう。
改善前:
旧個人年金保険で妻が被保険者の契約[6]を除いてあとの契約はすべて、契約者・保険料支払者とも夫となっています。妻が所得控除を申告しているのは[6]だけで、[1]から[5]はすべて夫が所得控除を申告しています。
そのうち、新生命保険料控除については、[1]の夫が被保険者の契約だけで、控除限度額の4万円を上回っており、[2]の妻が被保険者の契約については所得控除が受けられなくなっています。
改善後:
[2]の妻が被保険者の新生命保険料契約の契約者・保険料支払者を夫から妻に変更することにより、[2]の新生命保険契約は、妻が所得控除を申告できるようになります。それにより、妻の所得控除額が、3万2500円から7万2500円に増え、夫婦合わせて所得控除額を最大化することができます。
この改善案を実行すると、妻の還付税額は、次の通り、8000円増加します。
4万円(妻の所得控除増加額)×20%(還付税率※)= 8000円(妻の還付税額増加分)
※妻の還付税率は所得税10%、住民税10%、計20%として計算しています。
まとめ
生命保険料控除の対象には多くの保険種類があり、かつ、所得控除の計算も複雑なので、いろいろと工夫の余地があります。皆さんもご自分の保険契約を検討して、還付税額を少しでも増やすことをお勧めします。
【出典】 国税庁タックスアンサー「No.1140 生命保険料控除」
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー