更新日: 2019.06.21 確定申告

本業とは違う?副業に関する確定申告ルールとは

執筆者 : 星田直太

本業とは違う?副業に関する確定申告ルールとは
2018年は、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をまとめるなど、いわゆる「副業元年」といわれた年でした。この流れを受けて、企業に勤務しながら週末などに別の仕事をされる方が、少しずつ増えているのではないかと考えられます。
 
この「副業」については、原則として確定申告が必要になります。本稿では、その「副業に関する確定申告のルール」について、簡単にまとめてみます。
 
星田直太

執筆者:星田直太(ほしだ なおた)

税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))

一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。

税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。

中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。

副業の所得区分

確定申告によって所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」とします)を計算しますが、その税額計算の基礎となる「所得」は10種類にわたります。確定申告を行うにあたっては、まず収支を適切な所得に区分することが必要です。
 
会社等に勤務をして給与をもらっている場合、その所得は「給与所得」となります。副業の形態が、例えば週末にアルバイトをする等であって、別の会社やお店等からさらに「給与」を受けている場合は、副業収入もまた「給与所得」となります。
 
一方で、副業の形態が「他者から給与を受けている場合に該当しない」(以下「給与以外の副業」といいます)ときは、給与所得以外の別の所得グループとされます。
 
では、給与以外の副業における所得区分は何かといえば、一般的には「雑所得」に該当すると考えられます。「雑所得」とは、「ほかの9種類の所得いずれにも該当しない所得」という「その他」的な性格をもつ所得区分ですが、ここでは「事業所得に該当しない所得」というイメージを持っていただければ足りるでしょう。
 
一方で「事業所得」は何かというと、こちらは「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」をいうと定義されます(なお、不動産の貸付けは「不動産所得」に、山林の譲渡は原則として「山林所得」になります)。
  
雑所得と事業所得との区分は、例えば「一定額以上の収入があれば事業所得とする」といったように、税法上明確に定められているわけではありません。後述する通り、税額計算上は事業所得が雑所得よりも有利なのですが、単に有利だからという理由だけで事業所得を選択すると、税務署から修正を求められる場合がありますので、注意が必要です。
 
事業所得該当性については、納税者と課税当局とで争いが生じた事例が少なくありません。
 
判例や国税不服審判所の裁決によれば、(1)自己の計算と危険において独立して営まれているか、(2)営利性・有償性を有しているか、(3)反復継続して遂行されるか、(4)本人の職業や社会的地位、(5)生活状況、等といった点が判断要素として挙げられ、最終的にはこれらの要素を総合的に勘案して決定するとされています。
 
「会社勤務をしているから、副業は絶対に事業所得とはならない」というわけではありませんが、事業所得性を主張するのであれば、収入の規模や生活の糧を主にどこから得ているか、肉体的・精神的負担の状況等の様々な状況を鑑みて、課税当局から質問等があった場合には十分な説明ができるようにしておくことが必要でしょう。
 

「雑所得」の取扱い

給与以外の副業による雑所得は、「収入-経費」で計算されます。雑所得であっても、経費を収入から控除することはできるわけです。さらに、事業所得では必要となる「収支内訳書」または「青色申告決算書」の作成は不要ですので、確定申告書がシンプルであるというメリットはあります。
 

「事業所得」の取扱い

「事業所得」の場合は、雑所得にはないメリットがいくつかあります。
 
事業所得を計算するうえで赤字になってしまった場合、その赤字を他の所得(例えば給与所得)と通算し、他の所得を減少させることができます。これを「損益通算」といいますが、雑所得にはこの制度がありません。雑所得で赤字が出ても、それは他の所得とは通算されません。
 
さらに、一定水準の記帳を行っている場合に「青色申告」を選択できる点もメリットです。青色申告による特例措置はいくつかありますが、なかでも「青色申告特別控除」という特別の控除枠(10万円または65万円)を使える点と、純損失(損益通算をしても使いきれなかった赤字)を3年間繰越しできる点は大きなメリットといえます。
 
一方で、事業所得の場合、「収支内訳書」(白色申告)または「青色申告決算書」(青色申告)を作成し、確定申告書とともに提出する必要があります。この点は、雑所得と比較した場合にデメリットといえるかもしれません。
 

確定申告不要制度の注意点

例えば、給与を1か所からもらっていて、その給与が年2千万円以下・かつ源泉徴収が行われており、その年における副業による所得が20万円以下であった場合は、他に所得がなければ所得税・復興特別所得税の確定申告は不要になります(ご自身が確定申告不要制度に該当するかどうかは、国税庁のWEBサイト等で確認をしてみてください)。
 
一方で、所得税・復興特別所得税の確定申告が不要であっても住民税の確定申告は必要になりますので、注意をしてください。
 

ふるさと納税「ワンストップ特例制度」の注意点

ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」は、確定申告を行わなくてもふるさと納税による税額軽減効果を得ることができる手続きです。
 
しかし、このワンストップ特例制度を選択していても、その後その年分の所得税の確定申告書を提出したときは、確定申告書にふるさと納税についての記載事項を漏れなく記載しておかなければなりません。これを行わないと、ふるさと納税による税額軽減効果を得ることができなくなってしまいますので、注意してください。
 
雇用の流動化や個人のライフスタイルの変化によって、今後も副業を行う方が増えていくことが想定されます。確定申告を忘れてしまっては、後で思わぬトラブルを招くことにもなりかねません。ぜひ、来年も申告を忘れないようにしてください。
 
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
 

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