更新日: 2019.05.17 その他税金
同じ年収でも社会保険料に差が出る?残業と社会保険料の関係とは?
社会保険へ加入すると社会保険料が発生し、その保険料はほとんどの場合において毎月の給与から差し引かれることとなります。
そして、その社会保険料は年収がほぼ同額あっても、残業の多くなる時期によっては毎月の社会保険料に大きな差を発生させることがあります。
残業と社会保険料の間には、一体どのような関係があるのでしょうか。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
社会保険料は標準報酬月額に基づいて決定されます
社会保険料の額は「標準報酬月額」に基づいて計算されます。
給与はさまざまな事情により多少なりとも毎月変化します。それを毎月計算していてはとても手間がかかってしまいます。
そこで、ある一定の期間を区切ってその期間の給与の平均を算出し「この人の毎月の給与はおおよそこれくらいだろう」と考えるための基準が標準報酬月額なのです。
正確には標準報酬月額に対応する等級に基づき社会保険料が決定されるのですが、いったんは標準報酬月額に基づいて決定されると考えていただいても結構です。
標準報酬月額はどうやって算出される?
先に述べた一定の期間とは、基本的に4月から6月までの3カ月間とされています。
ただし、給与の算定対象となる日数が17日未満の月は除いて計算されます。例えば、4月と5月は20日分の給料が発生したが、6月は16日しか発生しなかった場合には、6月は無視し、4月と5月の給与を基にして標準報酬月額が計算されます。
標準報酬月額は昇給など給与に大幅の変化のない限り、9月から翌年の8月までの一年間、継続して使用されます。
それにより、4月から6月の給与に残業代が多く含まれてしまうと、同じ年収の人に比べて社会保険料の額が多くなってしまうといったことが起こりうるのです。
厚生年金を例に確認してみましょう
では、実際のところどのくらい差が発生するのでしょうか。
厚生年金の保険料を例に確認してみます。なお、2018年4月現在、日本年金機構にて公表されている厚生年金保険料額表を基に計算することとします。
残業が発生しなかったAさん 4月から6月の間、毎月19万円の給与
残業が発生したBさん 4月が21万円、5月が22万円、6月が20万円の給与
この場合、Aさんの標準報酬月額は19万円(18万5000円以上19万5000円未満の区分に該当)となり、実際にAさんが支払う社会保険料の額は月額1万7385円となります。
それに対し、Bさんの標準報酬月額は21万円(21万円以上23万円未満の区分に該当)となり、実際にBさんが支払う社会保険料の額は2万0130円となります。
AさんとBさんを比較すると月額で2745円の差が出ています。これを年間で比較すると3万2940円まで差が大きくなり、違いは歴然となります。
これは厚生年金の保険料のみの計算です。ここに健康保険の保険料などが加わってくることでその差はさらに広がります。
社会保険料と残業の間には関連性があります
残業と社会保険料の関係について簡単にまとめると次のようなことが言えます。
(1)社会保険料の額は4月から6月の給与で決定される。
(2)そのため、4月から6月の給与に残業代などが多く含まれる場合、同じ年収であっても社会保険料の額に差が出てくる。
毎月発生する社会保険料の額を少しでも抑えておきたいのであれば、4月から6月までの給与に残業代が少なくなるよう調整するとよいでしょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー