更新日: 2019.01.10 控除

「雑損控除」って何。雪下ろし費用、シロアリ駆除も控除になるって本当?

執筆者 : 新美昌也

「雑損控除」って何。雪下ろし費用、シロアリ駆除も控除になるって本当?
札幌市、喜多方市、飯山市などで高齢者が雪下ろし中に転落した死亡事故が報告されています。豪雪地帯の高齢者世帯では、自ら雪下ろしをするのは危険を伴います。雪下ろしを他人に頼む場合、費用が発生しますが、この費用が雑損控除の対象となることをご存知でしょうか。そのほか、シロアリ駆除費用なども雑損控除の対象となります。

雑損控除については忘れがちですが、該当する場合を知り、忘れずに確定申告して、所得税を取り戻しましょう。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

雑損控除とは

災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、確定申告により、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを雑損控除といいます。
 
雑損控除の対象となるのは、次のいずれかの場合に限られています。
(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫などの生物による異常な災害
(4) 盗難
(5) 横領
なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。
 
雑損控除の対象となる資産は、資産の所有者が納税者、または、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が38万円以下の者であることが必要です。また、棚卸資産若しくは事業用固定資産等又は「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であることが必要です。
 
例えば、別荘など趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で保有する不動産(平成26年4月1日以後は同じ目的で保有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)も含まれます。)や貴金属(製品)や書画、骨董など1個又は1組の価額が30万円超のものなどは、生活に通常必要でない動産として雑損控除の対象となりませんので注意しましょう。
 
雑損控除の対象となる「生活に必要な動産」とは、家具、什器、衣服及びこれらに類する生活用動産で、通常の社会生活を営むのに必要とされる資産をいいます。
 
雑損控除の金額は、次の二つのうちいずれか多い方の金額です。
(1) (差引損失額※)―(総所得金額等)×10%
(2) (差引損失額のうち災害関連支出の金額)―5万円
 
※差引損失額=損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより
補てんされる金額
 
損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
なお、雑損控除は他の所得控除に先だって控除することとなっています。
 

雪下ろし費用

雪下ろし費用も雑損控除の対象となります。控除対象となるのは、雪おろしを依頼した人への人件費やその人に支給した食事代、雪を下ろした後の雪の除去費用などです。雪下ろしを親族に頼んだ場合には雑損控除の対象とならない場合がありますので、事前に税務署に確認しましょう。
 
なお、昭和56年1月29日の所得税の個別通達「豪雪の場合における雪下ろし費用等に係る雑損控除の取扱いについて」にて「雪下ろし費用等に係る損失の金額の確認は、原則として領収書によって行うこととされているが、領収書の交付を受けることについて困難な事情がある場合においては、領収書に代えて支払年月日、支払先及び支払金額を記載した家計簿等により支払の事実の確認を行つても差支えないこと」とされています。
 

シロアリ駆除費用

シロアリ駆除費用も雑損控除の対象です。シロアリによる被害は、「害虫……その他の生物による異常な災害」(所得税法施行令9条)に該当し、修繕に要した費用及びそのシロアリを駆除するための費用は雑損控除の対象となります。
なお、シロアリの被害を事前に防止するための費用及びシロアリの駆除とともに行う予防のための費用は、応急的措置に係る費用でないことから、雑損控除の対象となりませんので注意してください。
 

借家人の負担した修繕費用

借家が台風で被害を受け、借家人が原状回復の修繕をした場合に、借家人が負担した修繕費は雑損控除の対象となるでしょうか。雑損控除は災害等によって自らが所有する生活用資産に受けた損害を適用対象としています。
 
しかし、借家であっても、災害等により損害を受け原状回復に要した費用のうち、家主に請求をしないことが明らかな金額については、雑損控除の対象となります。
 
たとえば、本来であれば、修繕は家主がすべきですが、家主がなかなか修繕してくれない場合、借家人が修繕をする場合があります。
民法608条1項で「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」と定めていますので、借家人が支出した金額は雑損控除の対象とならないはずです。しかし、家主との話し合いで、費用の一部を借家人が負担する場合は、家主に請求しないことが明らかなので雑損控除の対象となります。
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/

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