更新日: 2019.10.09 控除

【FP解説】扶養なのにうっかり130万円超えてしまった場合の対処法

執筆者 : 林智慮

【FP解説】扶養なのにうっかり130万円超えてしまった場合の対処法
ある日、お昼休憩に買い物に出たら、近所のA子さんにばったり出会いました。「ちょっと今月、働き過ぎちゃって・・」
 
A子さんは、ご主人の扶養内でいられるよう、週6日、3時間のパートに出ています。扶養の枠を超えてしまわないよう、月ごとに調整しています。
 
しかし、閑散期・繁盛期のある職場の場合は、月ごとに調整することは困難なことです。夫の職場に『扶養対象配偶者』と申告してあり、年末調整も済んだ後で自分の所得が扶養の枠を超えていることが分かった場合、どうすれば良いのでしょうか。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

夫の会社に扶養控除等移動申告書を提出します

扶養所得をはみ出してしまった場合、年初に会社に提出してある『扶養控除等申告書』の控除対象配偶者でなくなるのですから、変更があってから次の給与の支払いを受ける前日までに異動を届け出ます。年末調整後でも、「給与所得者の源泉徴収票」が交付される1月末までなら年末調整のやりなおしが出来ます。
 
その他、年末調整後に生命保険に加入したなど、控除金額に変更があった場合も同様です。平成28年分の扶養控除申告書から、マイナンバーの記入が義務づけられています。正しく申告しましょう。
 

103万の壁より怖い配偶者手当

A子さんのご主人は公務員。扶養配偶者に13,000円ほどの手当が付きます。扶養配偶者でいるためには、合計所得が38万円以下でないといけません。パート収入だけのA子さんは、収入が103万以下であれば所得は38万円以下になります。
 
合計所得38万円を超えても、配偶者特別控除があります。合計所得38万円以上40万円未満の場合でも、配偶者控除と同じ金額の38万円の配偶者特別控除があります。
 
例えば合計所得39万(収入104万円)の場合1万円の課税所得になります。所得税は5%で500円のマイナスですが、それよりも、扶養配偶者から外れたために13,000円×12=156,000円ほどの手当が付かなくなることが家計に大きく響きます。
 
住民税は意外に忘れられていますが、100万円超で課税です。
 

各種控除を利用すれば扶養でいられる?

所得控除を利用すれば、扶養の範囲でいられると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 
しかし、生命保険料控除やイデコの小規模企業共済等掛金控除などの各種所得控除は、本人の税額を計算するための所得控除です。扶養か否かは所得金額で判断します。給与所得者であれば、「給与から給与所得控除を引いたもの」、事業所得であれば、「収入から必要経費を引いたもの」で判断します。
 
例えば、妻の給与所得控除後の金額が39万円(給与収入104万円)の場合、夫の扶養配偶者にはなれません。
 
一方、妻の所得税はどうかと見ますと、妻本人に生命保険料が年額2万円有るとすれば、生命保険料控除が2万(2万円以下は払込全額控除)と基礎控除で課税所得が0(1,000円未満切り捨て)円になり、妻の所得税はゼロになります。
 
ただし、青色・白色の専従者給与を貰っている人は、幾ら給料が少なくても扶養になれません。
 

社会保険も被扶養者異動届を提出します。

扶養配偶者であれば、健康保険を払うことなく保険証が使え、年金保険料を払わずに国民年金が貰えます。
 
しかし、妻の収入が130万の扶養枠を超える見込みになったり、妻が社会保険に加入する事で扶養配偶者でなくなる場合は、夫の会社経由で、保険証を添えて被扶養者異動届を提出します。所得税の扶養枠を超えると次に出てくるのが、平成28年10月に出来た106万の壁というもの。
 
それまでは130万を超えなければ、社会保険料を払わなくても年金を貰えたのが、従業員501人以上の会社で、
(1)一週間20時間以上
(2)1月88,000円以上
(3)雇用期間飲み込み1年以上
(4)学生で無い場合、社会保険に加入となりました。平成29年4月からは従業員500人以下の場合でも、労使合意で加入となります。
 
しかし、扶養が外れて会社の社会保険に加入する場合、健康保険と年金で月々1万3千円(一ヶ月88,000円の場合)ほどかかりますが、社会保険料は会社が半分負担してくれます。この場合、年金については実質本人負担8,000円ほどの負担です。
 
仮に1年だけこの条件で勤めたとしましょう(第3号として受給期間を満たしているとします)。すると、65歳から毎月約500円の厚生年金が上乗せされます。16年でモトが取れます。500円の上乗せは一生涯続きます。
 
健康保険も月5千円ほど負担しなければならないのですが、健康保険の被保険者になればパートでも傷病手当金が支給されます。
 
もし、病気や怪我でパートを長期休まなければならなくなったときに、標準日額報酬の3分の2が、連続で休んだ4日目から最長1年6ヶ月支給されます。ごく希に、扶養配偶者でありながら夫の会社に傷病手当金を請求できると思われる方がいらっしゃいますが、被保険者のみの手当金です。
 
もし、いくつかパートを掛け持ちして、所得はあるのに社会保険の加入条件を満たさない場合、国民年金と国民健康保険に加入する事になります。
 
その際、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失確認通知書」の交付を求める請求書を提出し、通知書を持って市役所で国民年金・国民健康保険に加入手続きを自分でします。
 
※詳しくは国税庁、厚生労働省のHPをご覧下さい。
 
Text:林智慮 (はやし・ちりよ)
CFP®認定者,相続診断士 ,終活カウンセラー ,確定拠出年金相談ねっと認定FP
https://wiselife.biz/fp/chayashi/
 

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