男女では遺族年金の受給権に違いがある? FPが分かりやすく解説!
配信日: 2020.06.09
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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遺族年金には男女格差があることを知っていますか
遺族年金の受給権には、男性と女性で違いがあります。どういうことなのか、詳しくみていきましょう。
1.遺族年金とは
遺族年金は、国民年金や厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族に支給されます。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の二種類があって、会社員など厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方は両方の年金が、それ以外の自営業者の方などは遺族基礎年金の対象となり、受給要件を満たすと年金を受給することができます(※1)。
2.男女平等になった遺族基礎年金
「遺族基礎年金」は、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある方が死亡したとき、その方によって生計を維持されていた次の方に支給されます。なお、一定の保険料納付要件を満たす必要があります(※1)。
(1)子(注1)のある配偶者
(2)子(注1)
(注1)18歳到達年度末(3月31日)を経過していない者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の者
平成26年4月に年金機能強化法が施行されるまでは、この受給権が「子のある配偶者」ではなく「子のある妻」となっており、男性である夫は遺族基礎年金を受給することができませんでした。したがって、遺族基礎年金は、この点で男女平等の制度になったといえるでしょう(※2)。
3.男女格差が色濃く残る遺族厚生年金
遺族基礎年金については男女平等となってきましたが、遺族厚生年金では未だ男女格差が色濃く残っています。
「遺族厚生年金」は、次のいずれかの場合に支給されます(※1)。
(1)厚生年金保険の被保険者が死亡したとき
(2)厚生年金保険の被保険者であった間の病気やけががもとで、初診日から5年以内に死亡したとき
(3)老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある方が死亡したとき
(4)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる方が死亡したとき
なお、(1)と(2)にあっては、一定の保険料納付要件を満たす必要があります。
遺族厚生年金を受給できる遺族は、死亡した方によって生計を維持されていた次の方が対象で、(1)から(4)の優先順位において最も優先順位の高い方が受け取ることができます。なお、子のある配偶者は、合わせて遺族基礎年金を受給することができます。
(1)妻(注2)、死亡当時55歳以上の夫(注3)、子(注1)
(2)死亡当時55歳以上の父母(注3)
(3)孫(注1)
(4)死亡当時55歳以上の祖父母(注3)
(注2)30歳未満の子のない妻に対する遺族厚生年金は、5年間の有期給付となります。
(注3)受給開始は60歳からになります。ただし、遺族基礎年金を受給中の夫は60歳前でも受給できます。
また、次の条件に該当する妻が受け取る遺族厚生年金には、妻が40歳から65歳になるまで「中高齢の寡婦加算額」が加算されます。
(1)夫が死亡したときに40歳以上65歳未満の、子(注1)のない妻
(2)遺族年金を受給していた子が18歳に到達し3月31日を迎えた(障害のある子が20歳に達した)ために、遺族基礎年金を受給できなくなった妻
以上のように、遺族厚生年金には、夫に年齢制限があったり、妻に中高年の寡婦加算があったり、男女に受給条件の格差があります。
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まとめ
「会社員の夫、専業主婦の妻と子ども」の家族をモデルに作られた遺族年金は、男女により受給権に大きな違いがありました。夫婦共働き世帯が増加し、男女平等が叫ばれる現在、遺族基礎年金については男女平等に変更されましたが、遺族厚生年金には未だ男女格差が色濃く残っているのです。
[出典]
(※1)日本年金機構「遺族年金ガイド」
(※2)日本年金機構「年⾦の受け取りなどの仕組みが⼀部変わります」
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士