更新日: 2020.05.19 その他年金

二つの年金を組み合わせて受け取れる。それって一体どんなとき?

二つの年金を組み合わせて受け取れる。それって一体どんなとき?
日本の公的年金制度には、「1人1年金の原則」というものがあります。
 
しかし、特定の条件を満たす場合には、2つの年金を同時に受け取れることがあります。それはどのようなときなのか、今回は、その条件と手続き方法について解説します。
 
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

「1人1年金の原則」とは

「1人1年金の原則」とは、支給理由(老齢、障害および遺族)が異なる2つ以上の公的年金(国民年金、厚生年金および共済年金)を受け取ることができる場合は、受給者がいずれか1つの年金を選択することが求められる原則です。
 
一方、支給理由が同じ年金であれば、【図1】のとおり1つの年金とみなされます。
 


 
ただし、「1人1年金の原則」には、「遺族年金を受け取れる方の特例」というものがあります。この特例について以下で詳しく解説します。

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遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給している方が65歳になったときには

「遺族厚生年金と遺族基礎年金」を受給されている方が、65歳になって自分自身の老齢基礎年金を受給できるようになった場合には、【図2】のとおり「遺族厚生年金と老齢基礎年金」の組み合わせを選択することができます。
 


 
なお、遺族厚生年金と老齢基礎年金は、65歳になるまで合わせて受給することはできません。
 
そして、「遺族厚生年金と老齢基礎年金」の組み合わせを選択した方が、老齢基礎年金を繰り上げ受給する際には、繰り上げ受給を開始した以降65歳になるまでは、【図3】のとおり遺族厚生年金が支給停止となりますので注意してください。
 

 
また、老齢基礎年金を繰り上げ受給している方が、遺族厚生年金を受給できるようになった場合に、遺族厚生年金の受給を選択すると【図4】のとおり、繰り上げ中の老齢基礎年金は支給停止されます。
 

遺族厚生年金を受給している方が65歳になったときには

遺族厚生年金を受給していた方が、65歳以上となり老齢厚生年金を受給できるようになったときは、自分自身の老齢厚生年金が優先されますので、老齢厚生年金の額(注)が遺族厚生年金の額より多い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止されます。
 
一方、遺族厚生年金の額の方が老齢厚生年金の額より多い場合は、【図5】のとおり老齢厚生年金の額に相当する分だけの遺族厚生年金が支給停止され、差額分の遺族厚生年金は受給することができます。
 


 
(注)老齢厚生年金の額とは、老齢厚生年金額相当額をいいます(経過的加算額や加給年金額は対象外)。
 
なお、2007年(平成19年)4月1日より前に、配偶者が死亡したことで遺族厚生年金を受ける権利を有し、かつ、同日において既に65歳以上である場合は、老齢厚生年金の額は、【図6】のいずれか高い額となります。
 

障害年金を受給できる方が65歳になったときには

「遺族厚生年金と遺族基礎年金」を受給できる方が、障害基礎年金を受給できるようになった場合は、65歳以降、【図7】のとおり「遺族厚生年金と障害基礎年金」の組み合わせを選択できる特例があります。
 
また、この特例は、「障害厚生年金と障害基礎年金」を受給できる方にも適用されます。
 

2つの年金を選択するときの手続きは

遺族年金を受給していた方が65歳になってご自身の老齢年金を受給できるようになったときなど、支給理由が異なる2つ以上の年金を受け取ることができるようになったときには、年金選択の申し出が必要となります。
 
この手続きは、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターにおいて「年金受給選択申出書」(※3)を提出することになります。
 
その際、添付書類が必要となる場合がありますので、不明点などはねんきんダイヤルで確認されると良いでしょう。
ねんきんダイヤル:0570-05-1165(または03-6700-1165)

まとめ

日本の公的年金は「1人1年金が原則」ですが、遺族年金受給者が65歳になり自分自身の年金を受給できる場合は、特例により2つの年金を同時に受給することができます。ご自身やご家族に特例が適用できるのか、ぜひ確認してみてください。
 
出典
(※1)日本年金機構「受け取る年金を選択する手続きのご案内」
(※2)日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・受給開始時期・計算方法)」
(※3)日本年金機構「2つ以上の年金を受ける権利ができたとき」「年金受給選択申出書」
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士


 

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