もし離婚したら、専業主婦の私の年金はどうなる? 知っておきたい年金分割制度
配信日: 2020.04.08
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
年金の基本を知っておこう
まず、知っておいてほしいのが専業主婦の年金についてです。よく、年金保険料を支払っていないので、専業主婦は年金に加入していないと思っている人がいますが、それは違います。
日本では、国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人(含む外国人)は、国民年金に加入することが決められています。
加入者は1号被保険者から3号被保険者に分かれており、1号被保険者は自営業者や学生、フリーランサー等、2号被保険者は会社員や公務員等、3号被保険者は2号被保険者の会社員や公務員等に扶養されている妻や夫が加入する年金です。
つまり、専業主婦の年金は3号被保険者となります。3号被保険者には年金保険料の納付義務がなく、配偶者が加入している年金制度が保険料を負担しますので、個人ベースでは保険料の納付義務がありません。このため、加入していないと勘違いしてしまう人がいるのかもしれませんね。
とはいえ、結婚したら無条件で3号被保険者となるのではなく、手続きをすることで3号被保険者になることが可能です。
例えば結婚のために会社を辞めて、3号被保険者の届け出をしていない場合には、1号被保険者という立場ですので、ご自身による年金の保険料の納付義務はその後も継続して発生します。
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離婚したらどうなるの?
基本が分かったところで、いよいよ本題に!
離婚した場合、問題になるのが財産分与についてです。以前は、年金はあくまでも個人のものという観点から、夫の年金は一切受け取ることができませんでした。
そうなると熟年離婚した専業主婦の生活は立ち行かなくなります。「それでは大変」ということで法改正され、妻は夫の年金の一部をもらうことができる、という制度が創設されました。これを年金分割制度といいます。
年金分割制度には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類があります。
合意分割制度は、当事者の一方からの請求で、下記すべての条件をクリアしていることが必要です。
・平成19年4月1日以後に離婚している、または事実婚関係を解消している
・2人の合意や裁判手続きにより按分割合を定めている
・請求期限である、離婚等をした日の翌日から起算をして2年を経過していないこと
3号分割制度は、3号被保険者であった妻や夫から請求することで、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の相手方の保険料納付記録を2分の1ずつ分割できる制度です。下記すべての条件をクリアしていることが必要です。
・平成20年5月1日以後に離婚している、または事実婚関係を解消している
・平成20年4月1日以後に、国民年金の第3号被保険者期間の厚生年金記録がある
・請求期限である、離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過していないこと
また、3号分割制度には按分割合があり、上限は、2号である夫の厚生年金の50%まで。夫の国民年金の部分は、分割の対象ではありません。
熟年離婚はハイリスク?!
最近では、熟年離婚や卒婚という言葉を耳にすることが増えてきました。離婚して年金の分割請求をしたところで、年金額として増えるのは、夫や妻の厚生年金部分の50%が限度。おそらく、受給できる年金は、1ヶ月当たりでは数万円程度と思われます。
年金の分割分だけをあてにして生活を考えていると、熟年離婚はハイリスクそのものです。とはいえ、決して離婚がいけないということではありません。
「もう無理」となったら、慌てて離婚をするのではなく、一度冷静になって、どれだけの財産が確保できるのかをしっかりと試算してみてください。年金関連は社会保険事務所へ行くと教えてくれますので、一度訪問しておきましょう。
その他の財産分与等で分からないことは、弁護士に相談すると安心ですね。法テラスであれば無料で相談に乗ってくれますし、自治体の弁護士相談も無料で受けられることがあります。どのようにすれば損をしないのか、戦略を練ることが大切です。
たまに、できるだけ多くの年金の分割分をもらおうと、金額が増えるまで離婚しない、定年まで待ってから離婚するという人もいます。
離婚したいと思ったタイミングにもよりますが、残り10年以上もあるようなら、早めに決別して新しい人生をスタートしたほうが、状況によっては心身ともに充実するかもしれません。反対に10年以上も待てるのなら、離婚しなくても良いのでは? と個人的には思います。
今や専業主婦は、立派な職業としても認められています。年金分割制度は、そんな妻のための退職金ともいえるかもしれませんね。もらえるものはしっかりと請求し、セカンドライフをどのように送るのかを考えて、行動することが必要なのです。
執筆者:飯田道子
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会