更新日: 2019.12.16 国民年金
国民年金の保険料が免除・猶予されるのはどんな人? 「未納」との違いに注意
何も手続きをせず保険料を納付しないことは「未納」として区別され、未納のまま放置すると年金の受給に大きく影響します。そのため、免除や納付猶予の制度が利用できる場合は未納を避けることが大事です。
そこで、今回は国民年金の保険料の免除や納付猶予を受けられるのはどんな人か、未納との違いなどについて解説します。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。
保険料を納付しない期間は年金にどう影響する?
年金制度の1階部分である国民年金では、老後の年金(老齢基礎年金)の年金額を決める要素として主に以下の2点があります。
・加入資格期間
・保険料の納付済期間(最大40年間)
「加入資格期間」とは、保険料をきちんと納付した期間(保険料納付済期間)に加え、「免除」や「納付猶予」が承認された期間も含みます。「未納」の期間は含まれないので注意してください。この期間が10年に満たないと年金は受給できません。
年金額については40年間納付すると、原則として65歳から満額の老齢基礎年金(78万100円。昭和16年4月2日以降生まれの方、2019年12月現在)を受給できます。
免除・納付猶予・未納のいずれであっても保険料を支払っていない期間があると、その期間分については減額されます。
仮に保険料納付済期間が35年10ヶ月、未納の期間が4年2ヶ月である場合、65歳から受給できる老齢基礎年金の年金額は以下のようになります。
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保険料の「免除」と「納付猶予」の違い
「免除」も「納付猶予」も保険料を納めなくて良いという点では同じですが、両者には違いがあります。以下ではこれらの違いについて解説します。
「免除」とは?
前年の所得が一定額以下であることなどの理由で、国民年金の保険料を納めることが経済的に困難な場合に利用できるのが「保険料免除制度」です。
審査の対象となるのは「本人・世帯主・配偶者」の所得で、承認されると保険料の納付が免除されます。
保険料の支払いが免除されている期間は加入資格期間に算入されますが、「追納」(10年以内であれば後から納付できます)をしない限り、老齢年金の金額が減ります。
免除のされ方は全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4とおりで、追納をしなかった場合、免除されている期間について受け取れる年金額はそれぞれ以下のようになります。免除の場合はゼロにならないのがポイントです。
前項の例で未納とした期間を全額免除の期間として計算すると、年金額は以下のようになります。
なお、保険料が全額免除される目安となる所得は(扶養親族の数+1)×35万円+22万円で計算した金額です。
仮に扶養親族が1人(本人とあわせて2人世帯)なら、(1+1)×35万円+22万円=92万円となります(「年収」ではなく「所得」である点にご注意ください)。
「納付猶予」とは?
20歳から50歳未満で、前年所得が一定額以下である場合に利用できるのが「保険料納付猶予制度」です。
審査の対象となるのは「本人・配偶者」の所得で、承認されると保険料の納付が猶予されます。免除のときとは違い、世帯主が含まれていない点に注意してください。
納付猶予を受けられる所得の目安を求める計算式は免除の場合と同じですが、世帯主が含まれていないので、免除よりも基準は緩くなります。
「猶予」と言っても期限が少し先に伸びるわけではなく、納付せずに済ませることができますが、年金額に反映されないので、なるべく余裕ができたら追納して年金額を満額に近づけるようにしましょう。
特例措置について
そのほかにも以下のような特例措置があり、それぞれ保険料の免除または納付猶予を受けることができます。
・学生納付特例
・法定免除(生活保護を受けている方など)
・産前産後期間の免除
・災害等により被災し、一定規模の損害を受けた方の免除
・配偶者からの暴力を受けた方の特例免除
なお、学生納付特例は納付猶予ですが、そのほかは全て免除という扱いになります。産前産後期間の免除制度は2019年4月から始まった新しい制度です。
「未納」を避けることが大事
保険料の納付を困難に感じている場合、基準を満たしているなら未納にするのではなく、免除または納付猶予を申請しましょう。
必要な手続きをせずに放置すると障害基礎年金や遺族基礎年金の加入資格期間にも算入されず、全ての年金が受給できなくなる可能性があります。そのため、なるべく未納は避けるべきです。
制度の利用ができるかどうか分からない場合は、お近くの年金事務所で相談することをおすすめします。
【出典】
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構)
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター