年金未加入のまま60歳に。年金がもらえない…そんな場合に使える「任意加入制度」とは?
配信日: 2019.11.27
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士
終活カウンセラー
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
「任意加入制度」で加入期間を増やす
老齢年金を受け取るには、納付済み期間と免除期間を合わせて10年必要です。老齢年金を受けられる加入期間を満たしていない場合は、国民年金に任意加入して、加入期間を増やすことができます。
また、国民年金の「未納」や「免除」期間があるため満額を受け取れない場合に、60歳以上65歳未満の5年間に国民年金保険料を納めることで、65歳からの老齢年金を増やすことができます。
加入条件は以下のとおりです。
1. 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
2. 老齢期の年金の繰り上げ支給を受けていない方
3. 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の方
4. 厚生年金に加入していない方
国民年金は、480ヶ月(40年)間保険料を支払ったら、満額を受け取ることができます。任意加入は480ヶ月を満たした時点で終了します。任意加入は申し出た月から加入ができます。さかのぼっての加入はできません。60歳からの加入を希望する場合は、60歳の誕生日の前から任意加入の手続きができます。
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70歳まで加入できる特例高齢任意加入
もし、65歳まで任意加入しても老齢年金を受け取る要件を満たせない場合、昭和40年4月1日以前に生まれた人は、70歳まで任意加入できる特例任意加入制度があります。
これは、満額を目指して増額した年金を受け取れることが目的ではなく、受給資格期間を満たすことが目的です。年金受給資格期間を満たした時点で終了します。
一方、厚生年金保険の加入資格は70歳までですが、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取れる加入期間が足りない場合、期間を満たすまで任意加入できます(厚生年金保険の高齢任意加入)。厚生年金の高齢任意加入は全額個人で負担しますが、事業主の同意があれば、通常と同様に労使折半の負担で済みます。
任意加入するメリット
任意加入することで、65歳から受け取れる老齢年金が増えます。どれだけ増えるのでしょうか?令和元年の国民年金保険料は月額1万6410円で、5年間の任意加入をする場合1万6410円×12×5=98万4600円の保険料を納付します。
また、増加分に対する受け取り年金額は、平成31年4月からの国民年金額は78万100円であるので、78万100円/40×5≒9万7513円が年金増加額となり、
70歳まで(5年間)総額48万7565円
75歳まで(10年間)総額97万5130円
80歳まで(15年間)総額146万2695円
を増額できます(令和元年)。
国民年金に加入期間中に、万が一、障害を負う場合、以下の要件を満たすと障害年金を受けることができます。
・初診日のある月の前々月までに加入期間の3分の2以上の納付または免除がある
・初診日が2026年年4月1日前であり、初診日において65歳未満で、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納期間がない
以上の場合に受け取ることができます。18歳未満の子がいれば、残された遺族が遺族基礎年金を受け取ることも可能です。保険料の納期限(納付対象月の翌月末)から2年間、さかのぼって免除申請や納付ができます。任意加入については、申し出があった月からの加入となります。
60歳を過ぎてすぐなら、60歳までの約2年分を免除や納付をして、60歳から65歳を任意加入、65歳から70歳を特例高齢任意加入で10年間の資格期間も可能です。また、厚生年金に加入することで、受給期間まで任意加入もできます。詳しくは、お近くの年金事務所にご相談ください。
(参照、引用)
日本年金機構「任意加入制度」
日本年金機構「付加保険料の納付のご案内」
日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
日本年金機構「か行 高齢任意加入」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者