更新日: 2019.09.12 その他年金
女性の人生はフクザツ。自分に合った老後資金対策のコツとは?【前編・年金のこと】
だから早くから老後に備えておきたいと思っていても、女性の場合、例えば会社員、専業主婦、フリーランスや自営業者、あるいはその妻といったように、人生の選択が幅広く、自分にふさわしい老後資金対策が分かりにくいといった声を聞きます。
そこで、女性が自分で老後に備える方法のコツについて2回に分けて詳しくお伝えします。前編の今回は、老後の収入の大きな柱である「公的年金」についてしっかり考えてみたいと思います。
老後の収入は年金が頼り……でも、もらえる金額は?
内閣府の調査によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯において、68.0%の世帯の公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%以上となっています。つまり、7割近い高齢者世帯で、収入のほとんどを年金に頼っている状況がうかがえます。
ところが、国が平成28年に行った別の調査によると、本人の公的年金年金額の平均は、男性は185.1万円に対し、女性は105.8万円と、受給額は女性のほうがかなり少ないことも分かっています。
高齢女性の貧困問題が注目される今、女性が自分で覚悟を持ってしっかり老後資金を準備しなくてはならない時代が来ているのかもしれません。
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女性の人生はいろいろ。それぞれの公的年金についておさらい
まずは老後の収入のメインとなる公的年金について確認しておきましょう。公的年金には、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」、「共済年金」があります。
国民年金については20歳以上60歳未満の人、全員に加入義務がありますので、おおまかに言うと、自営業者は国民年金のみ、会社員はそのほかに厚生年金、公務員や学校教員であれば共済年金に加入することになります。
・会社員等とその扶養される配偶者の場合
この国民年金の制度において、厚生年金や共済年金の被保険者にもなっている人が「第2号被保険者」の対象です。将来は国民年金のほかに、厚生年金や共済年金を受け取ることになります。
また、「第3号被保険者」は、第2号被保険者の扶養に入っている20歳以上60歳未満の専業主婦(主夫)、パートタイマーなどで、年収が130万円未満の人です。つまり会社員などの妻は、自身が他の会社などに勤めていて「第2号被保険者」でなければ、この「第3号被保険者」となります。
老後は厚生年金等も支給され、夫が亡くなった後は、遺族基礎年金に加えて(要件に該当する子がいない場合は支給されません)、「亡くなった配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額×4分の3」が遺族厚生年金として支払われます。
この制度は、多くの女性が専業主婦を選択していた時代から、日本の女性の老後を支えてきたと言えます。見直しの話がしばしば出るものの、現在のところは継続見込みです。
・自営業者やフリーランス、その配偶者の場合は?
「第1号被保険者」は、第2号被保険者、第3号被保険者以外の人が対象です(法人化して社長・役員となり役員報酬を受け取っている場合は、第2号被保険者です)。
具体的には、会社などに勤務せずに自分で事業を行っている自営業やフリーランス、農業・林業・漁業に従事する人や無職の人が対象です。そして自身が厚生年金などに加入していない場合は、その妻も同じく第1号被保険者になり、こちらは夫が亡くなった場合は遺族基礎年金のみが支払われます。
国民基礎年金だけでは暮らせない老後
この「第1号被保険者」については、厚生年金などに入らず国民年金保険料だけを納めているため、将来もらえる年金額は少なくなると思っておかなくてはなりません。
会社員の場合、支払う厚生年金保険料は給与の18%強にもなる大きな負担ではありますが、これが国民年金基礎年金にプラスして将来もらえる年金額となり、その半分の9%ほどは会社が負担してくれています。
パートなど非正規雇用の場合も、正社員並みの労働時間であれば同様です。2019年度の国民年金保険料は、所得にかかわらず定額で月額1万6410円です。
また、受給年齢になって受け取れる国民年金の金額を厚生年金の支給額と比較すると、平成29年度の年金支給額は国民年金支給額の平均が5万5615円なのに対し、厚生年金支給額の平均が14万7051円と大きく異なります。
参考:「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
つまり、自営業者やフリーランス、個人事業主の妻の場合、現在はある程度の収入がある暮らしをしていたとしても、サラリーマンの妻よりも老後に受け取れる年金額が少ないことはしっかり頭に入れておきたいところです。
もちろん自営業者には定年がないため、そのぶん長く働けるというメリットもあるのですが、サラリーマンと違って退職金はありません。
平均寿命の長い女性の場合、人によっては夫が亡くなった後の数年、数十年という期間をこの金額だけで生活することは厳しいかもしれません。夫に任せきりにせずに、自分で老後に必要なお金を用意する準備はやはり必要なのではないでしょうか。
これ以上年金を減らさないための注意点
人によっては十分な額とは言えない年金の受給額ですが、これ以上減らさないよう注意しておきたいことがあります。
一生のうち、就職、結婚や出産、退職、復職、再就職、パート職など、ライフイベントの変化に富む女性の場合、その都度、適用される年金制度が変わることも多いため、申請や記録が抜けがちになるのです。
例えば、サラリーマン男性の多くが退職する年齢まで「厚生年金」であるのに比べると、女性の場合、新卒で就職した会社員時代は「厚生年金」、結婚や出産を機に退職し、サラリーマンの妻である「第3号被保険者」になったり、パートを始めて「厚生年金」の時期がある、あるいは離婚をして「国民年金」になるといったように、これらの制度を行ったり来たりします。
年金制度の申請は基本的に自分で行わなければなりませんので、申請を忘れてしまわないよう注意が必要です。申請を忘れると空白期間が出てしまい、もらえる年金が大幅に少なくなることもあるのです。
例えばサラリーマンの妻が短期のパートをして一時的に厚生年金に加入したら、パートを辞めた時にまた第3号被保険者へ移行する手続きをしなくてはなりません。
ほかにも、会社員と離婚したけれど国民年金への移行を忘れていた、という場合も空白期間になってしまいますし、また、結婚で名字が変わった女性の年金加入記録が、旧姓時と新姓時で別々に管理されていたというケースもあるそうです。
送られてくる「年金定期便」をよく確認して記録や申請に漏れがないかを常にチェックして、少しでもおかしいと思ったら管轄の年金事務所に問い合わせましょう。
今回は老後の主な収入源である年金についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?次回は後編として、年金だけに頼らず女性が老後の資金を作るための具体的な方法について詳しくお伝えしたいと思います。
[参考]
参考:内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版) 高齢者の経済状況
年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)平成28年「調査結果の概要」
「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
執筆者:藤丸史果
ファイナンシャルプランナー