更新日: 2019.08.15 厚生年金
40年を超えて働くと、年金は増えないってホント?
年金を受給できる年齢の人が引き続き働いて厚生年金保険料を負担すれば、将来、退職後などに年金額が再計算され、その分の年金が増えることになりますが、厚生年金加入月数によって増える額が変わることがあります。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
厚生年金加入時期によって計算される年金が異なる
会社員だった人の65歳から受けられる年金は、老齢基礎年金(国民年金制度・1階部分)と老齢厚生年金(厚生年金保険制度・2階部分)です。そのうち老齢厚生年金の内訳は報酬比例部分と経過的加算額となっています。他に一定の配偶者や子がいれば加給年金が加算されます。
老齢厚生年金は、これまでの厚生年金加入記録により年金額が計算されるわけですが、報酬比例部分は給与や賞与の額に応じて負担した厚生年金保険料によって、将来受け取る額が変わる部分となります。
20歳から60歳まで厚生年金被保険者となり、厚生年金保険料を負担した場合には、この報酬比例部分が増え、さらに加入月数に応じて老齢基礎年金(2019年度の満額は78万1000円)が増えることになります。
一方、20歳前や60歳以降の厚生年金加入期間については、老齢基礎年金は増えませんが、報酬比例部分と併せて経過的加算額が増えることになります(【図表1】)。老齢基礎年金と経過的加算額は厚生年金保険料の額に関係なく、加入した月数に応じて計算される部分です。
60歳以降に勤めた場合に増える経過的加算額の計算式は【図表2】のようになり、(1)から(2)を差し引いた額です。しかし、この計算式の(1)の厚生年金加入月数には上限月数が設けられており、上限は480月(1946年4月2日以降生まれの場合)になります。
つまり、40年(480月)を超えて勤務すると、計算式の(1)が増えないことになり、60歳以降の勤務期間ですので、(2)も増えません。結果、40年を超えた厚生年金加入期間分については、経過的加算額が増えず、増えるのは上限月数のない報酬比例部分のみです。
仮に60歳から標準報酬月額(給与)が24万円で2年間勤務した場合、自身で負担する保険料は月額2万1960円(24万円に2017年9月以降の保険料率18.3%を掛け、その2分の1を負担)となりますが、2年(24月)の勤務期間を加えた厚生年金加入期間が合計40年以内の人であれば、退職後、報酬比例部分が3万円強、経過的加算額が3万9024円(1626円×24月)増えることになり、合計では7万円ほど増えます。
一方、2年間の勤務前からすでに合計40年になっている場合は、退職後増えるのは3万円強の報酬比例部分のみです。
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会社員と公務員両方の勤務期間がある場合
2015年10月の被用者年金の一元化により、会社員だけでなく、国家公務員も、地方公務員も、私立学校教職員も厚生年金に加入することになりました。
それぞれ厚生年金被保険者に種別が設けられているわけですが、経過的加算額の計算において、【図表2】の計算式(1)ではそれぞれの種別は通算しません。会社員として420月、国家公務員として60月、合計480月勤務していても、単独では合計480月に達していません。
この場合、会社員、国家公務員の合計40年を超えてからその後会社員として勤務しても、会社員としての合計40年まで、あと5年(60月)ありますので、480月になるまでの勤務期間は経過的加算額が増えることになります。
40年間会社員だけだった人が引き続き会社員を続ける場合とは異なります。同じ40年を超えての勤務でも、過去の職業によっては増え方が変わってくることになるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー