更新日: 2019.07.25 iDeCo(確定拠出年金)

ゆとりある老後のためにお金を準備する、選択制企業型確定拠出年金の活用法

ゆとりある老後のためにお金を準備する、選択制企業型確定拠出年金の活用法
先日、金融審議会市場ワーキング・グループが「高齢社会における資産形成・管理」という報告書を発表しました。
 
その後、金融担当大臣が受け取りを拒否し、実質的な撤回となりましたが、現実問題として老後に公的年金だけでは生活できないと感じておられる方は多いのではないかと思います。
 
今回は、厚生年金に上乗せができる「選択制確定拠出年金」についてみていきます。これは、企業に勤める従業員が任意で給与の一部を確定拠出年金に拠出し、老後に受け取れる制度です。
 

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吉野裕一

執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

http://moneysmith.biz

ゆとりある老後のために必要なお金とは?

今回、話題となった報告書(※1)では、65歳から30年生活するのに2000万円の取り崩しが必要とありました。リタイア後の生活には、3000万円が必要とは以前からよく言われていたことです。
 
生命保険文化センターの平成28年の「生活保障に関する調査」(※2)では、老後に夫婦2人で生活を送るうえで、生活費は最低でも月額平均22.0万円必要となっており、ゆとりある生活を送るにはさらに平均12.8万円が必要とされています。
 
会社員だった方の場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金の平均額の合計は20万421円(※3)で、上記にある最低限必要な生活費が月に約2万円不足します。ゆとりある老後生活を送ろうとすると、さらに約14.8万円の不足です。
 
ゆとりある生活を65歳から30年間送ろうとすると14.8万円×12ヶ月×30年間=約5330万円が必要となります。一般的に言われてきた3000万円以上の資産も、老後の豊かな生活のためには必要と言えるのかもしれません。
 

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選択制確定拠出年金のメリット:社会保険料や税金を抑えられる

老後の資産作りのために考慮したいのが、近年、注目されつつある「選択制確定拠出年金」です。
 
この制度は企業が採用していることが前提となる制度ですので、すべての方が利用できるものではありません。しかし、この制度を採用している企業では、正社員の方だけではなくパートの方も利用できます。
 
選択制確定拠出年金は、企業が従業員の給与や賞与の一部をライフプラン支給金(名称は「ライフプラン手当」や「ライフデザイン手当」などさまざまですが、ここでは仮に「ライフプラン支給金」とします)として支給し、従業員が積み立てを行う制度です。
 
積み立て先は選択制確定拠出年金のほか、後述する定期預金など、従業員が選ぶこともできます。
 
本記事では主に、選択制確定拠出年金に積み立てたときのメリットとデメリットを紹介します。
 
ライフプラン支給金は積み立てた部分が給与や賞与とみなされないので、所得税の対象外となります。また、社会保険料の算定の元となる標準報酬月額(4月から6月の3ヶ月間の給与の平均額)が少なくなり、厚生年金保険料の等級が下がって社会保険料も安くなります。
 
同じ金額を確定拠出年金に積み立てる場合、給与や賞与の手取りから積み立てをするより、選択制確定拠出年金で積み立てをしたほうが、給与の手取り額が多くなります。
 
例えば、40歳未満で配偶者がいる標準報酬月額30万円の方の手取りは約23.7万円ですが、ライフプラン支給金で2万円を積み立てると、手取りが約22.2万円になります。
 
一見、1.5万円ほど少なくなったように思えますが、いったん給与として受け取った後に2万円の積み立てをすることで、手元には21.7万円が残ります。選択制確定拠出年金で積み立てを行ったほうが5000円ほど手元に残るお金が多くなるのです。
 

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選択制確定拠出年金のデメリット:厚生年金が減ってしまう!?

前述では、選択制確定拠出年金の掛金を払うメリットをご紹介しました。一方で、掛金を払うことで社会保険料の算出の基準となる標準報酬月額が少なくなり、将来受け取る厚生老齢年金の額も減少するというデメリットがあります。
 
しかし、掛金の拠出の際の所得税と、社会保険料の負担が減るメリットのほうが大きいので、老齢厚生年金の額が減っても、選択制確定拠出年金で老後資金を増やすほうが総収入額は多くなると考えられます。
 

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リスクが気になる方は、元本確保型商品への積み立てを検討

確定拠出年金と聞くと、運用によっては年金がマイナスになると考える方もいると思います。たしかに、運用期間中にマイナスになる可能性はありますが、運用期間は10年以上と長期。マイナスになる可能性は低いとも考えられます。
 
それでもやはり気になる方は、定期預金などの元本確保型商品にライフプラン支給金のお金を積み立てはいかがでしょうか。ライフプラン支給金のお金に対しては、所得税や社会保険料はかかりませんので、給与や賞与として受け取るよりもメリットがあります。
 
老後資金を作るために、これらの制度の活用を考えてみてもよさそうです。
 
出典:※1 金融審議会市場ワーキング・グループ 「高齢社会における資産形成・管理」 報告書(案)
   ※2 公益財団法人 生命保険文化センター「老後の生活費はいくら必要と考える?」
   ※3 厚生労働省「平成29年度 厚生年金・国民年金事業の概況」P28より、厚生年金保険(第1号)の平均年金月額と国民年金の平均年金月額を足した額
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
 

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