障害年金を受給すると国民年金保険料が免除になるって本当?
配信日: 2019.07.17
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
障害年金を受給している人の保険料は法定免除に
20歳から60歳までの間、自営業など国民年金第1号被保険者である場合、毎月国民年金保険料(2019年度月額:1万6410円)を納付する義務があります。
納付義務がある人が、病気やケガが原因で障害が残って年金制度上の障害等級に該当し、その他の要件を満たしていると、障害年金(障害基礎年金や障害厚生年金)が受給できるようになりますが、障害等級1級、2級の場合、その受給権発生月の前月分以降の各月の国民年金保険料は全額が免除されることになります(【図表1】)。
これは、法定免除という法律上当然免除される免除制度で(市区町村への届出は必要です)、免除の申請をして、所得額等によって認められる申請免除とは異なります。
この法定免除については、障害等級1級、2級だった人の障害がその後軽くなって3級になった場合でも受けられますが、障害等級3級にも該当しなくなって3年が経過すると受けられません。
また、障害年金を受給しながらも在職し、厚生年金加入中である場合は、厚生年金保険料が給与や賞与から差し引かれ、負担することになります。
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保険料を納付することも可能
法定免除となった期間については、保険料を納めていないことにはなりますが、国庫負担(税金による負担)により、65歳以降の老齢基礎年金の計算上、その額に一部反映されることになっています(【図表2】)。
保険料を納付した場合を1とした場合、2009年3月以前の法定免除期間は3分の1、2009年4月以降の法定免除期間は2分の1が反映されることになります。
しかし、保険料を40年(480月)納めた場合の老齢基礎年金の額は、障害等級2級の障害基礎年金(2019年度:年額780,100円)と同じ額ですので、法定免除の期間があると、単純に、老齢基礎年金は2級の障害基礎年金より少ない額になります(【図表2】)。
老齢基礎年金と障害基礎年金はどちらか選択して受給することになりますので、結果、65歳以降も、金額が高く、非課税である障害基礎年金を受給し続けることにもなるでしょう。
ただし、障害が軽くなって障害等級3級にも該当しなくなった場合、該当しなくなってから3年が経過するか、65歳になるかいずれか遅い時期に障害年金の受給権がなくなることになっています。
そうなった場合、65歳以降の基礎年金は老齢基礎年金を受給することになりますが、20歳から60歳までの間に法定免除の期間が長いと、その額が障害基礎年金と比べかなり少なくなります。
そのため、法定免除の対象者であっても保険料の納付が可能になり、また、保険料を納付した後、さかのぼって法定免除と認められた期間についても、本人が希望すれば、保険料の還付を受けずにそのまま納付扱いとすることも可能となっています(2014年4月より)。
法定免除を受けると、国民年金保険料の納付義務はありませんが、納付することもできる柔軟な制度となっていると言えるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー