妻は8歳年下です。繰下げ受給しようと思っていたら、同僚に「奥さんが年下なら繰下げしないほうがいいのでは?」と言われました。どういうことですか?
配信日: 2025.06.19


日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント
人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。
繰下げ受給の仕組み
老齢基礎年金や老齢厚生年金を65歳から受け取らずに66歳以後75歳までの間に繰下げると、生涯にわたって年金が加算されます。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げもできます。
《繰下げ受給をした場合の加算額》
原則として、老齢基礎年金の額(振替加算額を除く)および老齢厚生年金の額(加給年金額を除く)に、下記の計算式で算出した増額率により計算をします。
増額率 = 0.7% × 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
例えば70歳まで5年間繰下げをした場合の増加率を算出すると、[ 0.7% × 5年間 × 12ヶ月 = 42% ] となり、元の年金額の1.42倍になります。
繰下げ受給の注意点
次に、年金の繰下げ受給における注意点をご紹介します。
(1)加給年金額や振替加算
老齢厚生年金の受給開始年齢の65歳になったときに、生計を維持している配偶者がいるときに年金額が加算される場合があります。これを加給年金といいます。
この場合、配偶者が65歳になると加給年金額は打ち切られますが、その代わりに一定の基準により配偶者が受け取る老齢基礎年金に加算がされます。これを振替加算といいます(振替加算は昭和41年4月2日以後生まれの方には支給はありません)。
繰下げ受給をする場合には、この加給年金額や振替加算額は繰下げ受給による増額の対象にはなりません。また、繰下げ待機期間として年金を受け取っていない間は、加給年金額や振替加算を受け取ることはできませんので、奥さまが年下で年齢差がある場合には検討したいところです。ちなみに、平成7年4月現在の加給年金の額は23万9300円です。
(2)繰下げ期間中に死亡した場合
繰下げ期間中に本人が亡くなった場合には、遺族であっても代わって繰下げ請求をすることはできなくなります。
遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で過去の分の年金額を一括して支払われます。この場合には繰下げ待機期間に応じた年金の加算はありません。また、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなりますので、この点についても認識しておきましょう。
(3)在職老齢年金
老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険の被保険者として仕事をする場合には、受け取る年金と給与と賞与の合計額によっては年金の全部または一部が支給停止となる場合があります。支給停止になるラインは、老齢厚生年金の月額と給与月額と賞与(過去一年分を月額換算した額)の合計が月額で51万円を超えるかどうかです(細かい部分は省きます)。
合計が51万円を超える場合には、51万円を超えた額の2分の1が支給停止となり、老齢厚生年金の月額から差し引かれます。これを支給停止といいます。
繰下げ受給をする場合には、この支給停止となる部分は年金の割り増しの対象になりませんので要注意です。
(4)特別支給の老齢厚生年金
男性の場合は昭和36年4月1日以前に生まれた方、女性の場合は昭和41年4月1日以前に生まれた方で一定の要件に満たしている方には、特別支給の老齢年金が支給されます。特別支給の老齢厚生年金は「繰下げ制度」はありませんので、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達したときは速やかに請求しましょう。
まとめ
繰下げ受給は将来受け取る年金額を増やすことができますが、注意もあります。慎重に選択をしましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 加給年金額と振替加算
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 老齢年金の受取方法確認書(老齢年金の繰下げ意思についての確認)
執筆者 : 仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント