更新日: 2019.06.14 その他年金
将来の不安の表れ?公的年金の納付率が上昇しているワケ
日本年金機構の主要統計をみながら、公的年金の収納状況について考えてみました。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
国民年金保険料の収納額は変動が大きい
日本年金機構では、主要統計で公的年金の現状(適用関係・徴収関係・年金給付関係)を毎月公表しています。この中の徴収関係から国民年金保険料の収納済歳入額(現年度・過年度)の推移をグラフにしてみました。
グラフでは、毎月発表している主要統計の毎年12月発表の統計を8年間取り上げており、過年度の保険料は過去2年(前年度と前々年度の保険料)の保険料ことを言います。また、10年・5年後納制度による2年超経過の収納分は過年度に含まれていません。
厚生年金保険標準報酬月額の平均の推移
資料:日本年金機構「主要統計(6・18・30・42・54・66・78・90・102)」
国民年金保険料収納済歳入額は、年によって大きく異なっています。グラフでは800億円~1200億円程度の年が5年あれば、400億円程度の年も3年あります。2012年は358億円ですが、僅か2年後の2014年は1278億円にもなります。年単位でこれだけ収納額に変動があると、景気よりも政策の影響が強いと考えられます。
国民年金保険料は納付し忘れても2年間は後から納付できましたが、2年経過後は時効により、通常は納付できません。しかし将来の年金を少しでも多く確保するために年金確保支援法ができ、下記の後納制度が期間限定でできました。
10年後納制度
10年の後納制度は、2年を経過しても過去10年間に納付し忘れた国民年金保険料を後から納付できる期間限定の制度で、2012年10月1日から3年間実施し、2015年9月30日で終了しました。
3年間の利用者総数……1,184,747人
後納保険料納付月数……16,140,719ヵ月(1人あたり平均13.6ヵ月)
後納保険料納付済額……239,666,843,900円)1人あたり平均202,294円)
5年後納制度
10年の後納制度が終わった直後の2015年10月1日から3年間の期間限定で行われた制度で、過去5年間に納付し忘れた国民年金保険料を後から納付することができました。2018年9月30日に終了しました。
3年間の利用者総数……295,582人
後納保険料納付月数……2,338,289ヵ月(1人あたり平均7.91ヵ月)
後納保険料納付済額……36,324,601,210円(1人あたり平均122,892円)
2つの後納制度により老齢基礎年金の受給権を得た人が約11万人、年金額を増やせた人が約21万人もいるので、効果は大きかったようです。また後納制度があったことで現年度の納付をする人も増えたのではないでしょうか。
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国民年金の1年経過納付率が70%越え
次に同じ日本年金機構の統計から、国民年金保険料と厚生年金保険料の収納率の推移をグラフにしてみました。2017年度までの国民年金納付率については、1年経過納付率は現年度分の納付率、2年経過納付率は過年度(前年度)分の納付率、3年経過納付率は過年度(前々年度)分の納付率となっているので、2018年とは対象期間が異なっています。
例
2017年12月……現年度分は2017年10月末納付期限の分、過年度分は2016年度分および2015年度分の保険料のうち、2017年10月末までに納付された分の率
2018年12月……1年経過納付率は2018年10月末までに納付された2017年10月分の率、2年経過納付率は2018年末までに納付された2016年10月分の率、3年経過納付率は2018年末までに納付された2015年10月分の率
国民・厚生年金の給付(収納)率の推移
資料:日本年金機構「主要統計(6・18・30・42・54・66・78・90・102)」
グラフを見ると分かりやすいですが、国民年金の納付率が最近上昇しています。2018年度は納付率の対象期間が異なるので2017年までで見たとしても、5年前に比べて何れも5%以上上昇しています。例えば過年度分(グラフの国民年金2年経過納付率)は、2012年度の61.3%から2017年度には69.0%に上がっています。国民年金は自らが行動して納付する仕組みや年金制度の将来不安等により、以前から納付していない人が一定割合いましたが、後納制度の効果もあって少し上昇しています。
厚生年金保険の収納率は95%前後で安定していますが、給与から強制的に天引きされるので収納率が高いのは当然であり、100%でないのが不思議なくらいです。
人生100年時代を迎え、頼りになる持続可能な公的年金制度であってほしいものです。そのためにも国民年金・厚生年金保険料は欠かさずに納付するようにしましょう。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者