現在の年収「850万円」のサラリーマン→「遺族年金」の「条件」が見直されると聞いたのですが、具体的にどう変わるでしょうか? すでに受け取っている人への「影響」はありますか?
配信日: 2025.06.15

今回は、遺族年金の見直しの概要やすでに受給中の方への影響、受給金額の計算方法などについてご紹介します。

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遺族年金の見直しでどう変わる
日本年金機構によると、現在の遺族基礎年金の受給対象者は以下の通りです。なお、受給対象者の子どもとは、18歳になった年度の3月31日までの人か、20歳未満かつ障害等級が1級か2級の状態に該当する人を指します。
・子どものいる配偶者
・子ども
また、現在の遺族厚生年金の受給対象者(優先順位)は以下の通りです
・1:子どものいる配偶者
・2:子ども
・3:子どものいない配偶者
(妻:30歳未満の場合は5年間の期限付き)
(夫:原則55歳以上の場合のみ60歳から受給可能、遺族基礎年金を受け取る人は55歳からでも可能)
・4:父母
・5:孫
・6:祖父母
対象者の優先順位を見ても分かるように、現在の制度では遺族厚生年金を受け取る場合、子どものいない妻と夫では条件に大きな差があります。妻は30歳以上であれば期限がないのに対し、夫は55歳以上でないと受け取れません。
さらに、受給対象者はすべて亡くなった人に生計を維持されていたことが条件の1つです。日本年金機構によると、生計を維持されている状態とは生計を同じくしており、自身の前年の年収が850万円未満であること、または所得が655万5000円未満であることです。
つまり、例え亡くなった人の妻や夫が年齢の条件を満たしていても、共働きだったなどで収入を得ていると、受け取れない可能性があります。
もし見直しが実現すれば、男女ともに60歳未満は5年間の期限付きとなり、収入要件もありません。そのため、子どものいない配偶者の男女差や収入制限は、実質ほとんどなくなるでしょう。
受給中の方への影響は?
すでに遺族年金の受給権を得ている方は、見直しの内容が実現すると遺族年金を受け取れなくなると考える人もいるでしょう。
例えば、30歳以上の子どものいない妻が現在遺族年金を受け取っているとすると、今までなら無期で受け取れたものが5年間のみになるためです。生活のやりくりも大きく変わるでしょう。
しかし、厚生労働省の話し合いでは、見直し案が実際に改正法として承認・施行された場合、施行日前までに受給権を有していた方は、見直し前の制度のままで遺族年金を受け取れるとしています。そのため、仮に見直し案が採用され改正されたとしても、影響はないといえるでしょう。
遺族年金の計算方法
もし見直し案が採用されて改正されても、改正の内容は受給対象者なので、計算方法自体は変わらないと考えられます。
今回は、子どものいない妻が遺族厚生年金を受け取る場合の金額を計算しましょう。条件は以下の通りです。
・亡くなった夫は平成15年4月以降に40年間厚生年金保険に加入
・平均標準報酬額は30万円
・妻は老齢厚生年金を受け取っていない
遺族厚生年金は、亡くなった妻や夫の報酬比例部分の4分の3を受け取れます。報酬比例部分は、厚生年金の加入期間や収入によって金額が変動するもので、老齢厚生年金の計算の基礎となる金額です。平成15年4月以降に厚生年金保険に加入した場合、「平均標準報酬額×0.005481×加入月数」で求められます。
今回のケースだと、夫の報酬比例部分は「30万円×0.005481×480ヶ月」で求められ、78万9264円です。そのため、妻の遺族厚生年金額は「78万9264円×4分の3」で59万1948円を受け取れます。
現時点で受給対象者なら見直しは適用されない可能性がある
遺族厚生年金の見直し案では、夫や妻に子どものいないケースの遺族厚生年金の男女差や収入要件が基本的になくなります。高収入の方や、男女差により対象でなかった方なども受け取れるようになるでしょう。
一方で、すでに遺族年金を受け取っている方は、見直しは適用されません。仮に見直し案が採用されたとしても、いきなり遺族年金がなくなることはないと考えられるでしょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 さ行 生計維持
厚生労働省 遺族年金制度等の見直しについて②
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー