年金は“会社負担分”も含めると「払い損」に!? 年収400万円の会社員が「払うお金・もらうお金」はどれだけの差がある? 金額を試算
配信日: 2025.06.14

本記事では、平均年収400万円の会社員を例に、生涯で支払う保険料と受け取る年金を試算し、本当に「払い損」なのか検証してみましょう。
年金の仕組みをおさらいしよう
日本の公的年金制度は、現役世代が納める保険料で高齢者を支える「世代間扶養」の仕組みとなっています。会社員は、国民年金と厚生年金の両方に加入します。
国民年金(老齢基礎年金):20歳から60歳までの全国民が加入する、老齢年金の基礎となる部分。
厚生年金(老齢厚生年金):会社員や公務員が加入する、主に報酬比例で給付される年金。
ただ、実際は「国民年金」の掛け金は「厚生年金」の掛け金、つまり厚生年金保険料に含まれているので、会社員は見かけ上、両方の掛け金を支払っているわけではありません。
厚生年金保険料は毎月の給与から天引きされ、その月の標準報酬月額によって金額が決定されます。また、天引きされる金額は実際に支払われる厚生年金保険料の半額であり、残りの半額は会社負担になっていること(労使折半)もおさえておきましょう。
年収が400万円で固定の場合、40年間の支払保険料・老後の受取額は?
ここでは、20歳から60歳まで平均年収400万円(給与の標準報酬月額は34万円、ボーナスはないものとして仮定)の会社員が、40年間保険料を納めると仮定して、支払保険料の総額と老後の受取額をシミュレーションしてみましょう。
まず、支払保険料の総額を計算します。前記のとおり、厚生年金保険料は給与の金額(標準報酬月額)と保険料率によって決まります。保険料率は変動しますが、ここでは現在の基準である18.3%(労使折半)としてシミュレーションします。
日本年金機構が公表している資料によると、標準報酬月額が34万円であるサラリーマンの負担額は毎月3万1110円となっています。
年間の厚生年金保険料:3万1110円×12ヶ月=37万3320円
40年間の厚生年金保険料:37万3320円×40年=1493万2800円
よって、会社員が40年間で支払う年金保険料の合計は「約1493万円」、年金保険料の企業負担分も合わせると「約2987万円」と計算できます。
一方、上記のように年金保険料を支払ってきた場合の年金支払額を、厚生労働省のサイトにある「公的年金シミュレーター」で計算してみると「年額167万円」と試算されました。
通常の制度通り、65歳から年金を受け取り、男性の平均寿命である81歳まで16年間年金を受給すると考えると、年金受給総額は167万円×16年=2672万円となります。
結果として年金受給総額(2672万円)は、給与から天引きされる年金保険料総額(1493万円)の約1.8倍となり、「払い損ではない」ように見えますが、企業負担分も合わせた負担額「2987万円」と比較すると約0.9倍となり、「払い損」であるとも言えます。
さらに時間的な考えを加えると、「40年間という長期間にわたって保険料を積立していながら、元本が1.8倍にしか増えていない。企業負担分も合わせれば、減少すらしている」という解釈も成り立ちます。厚生年金保険をiDeCoのような長期投資だと考えた場合は、これは明確に「望ましくない投資」だと言えてしまうでしょう。
年金制度には、遺族年金や障害年金という万一の際に保障される「保険」としての側面がありますが、「将来の年金」としての点だけを考えるとわが国の年金制度について見直しが必要になっていることは、数字の上からうかがえるのではないでしょうか。
老後資金を充実させるためには、年金制度だけに頼らずに自らも投資などで対策してくことが求められています。
まとめ
年収400万円の会社員は、厚生年金保険料の自己負担額は約1493万円、年金受給総額は2672万円となり、受給総額は負担額の1.8倍程度になる計算です。しかし、年金保険料の企業負担分も合わせれば、受給総額は負担額の0.9倍程度になり「払い損」となっている状況とも言えます。
国民としては年金制度だけに頼らずに、自衛していくことが求められていると言えるでしょう。
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
厚生労働省 年金シミュレーター
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント