年金月額が「18万円」だった父が亡くなりました。独り身となった母は「遺族年金」を同じくらい受け取れますか?

配信日: 2025.06.14

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夫が亡くなった後、残された配偶者が受け取る「遺族年金」は、生活の大きな支えとなります。
 
しかし、遺族年金の金額は、亡くなった方が受給していた年金額と同額ではない点に注意が必要です。本記事では、遺族年金の仕組みや計算方法、受給額の目安について解説します。
柘植輝

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

遺族年金の種類と受給条件

日本の公的年金制度における遺族年金は、大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。まずはこれらの大枠について確認しておきましょう。
 
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた方が亡くなった場合、以下の条件を満たす遺族が受給できるものです。


・亡くなった方に生計を維持されていた配偶者で、18歳未満の子がいる場合

※子が障害年金の障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳未満

このため、一般的に年金を受け取るほど高齢の配偶者は遺族基礎年金を受給できないケースがほとんどです。
 
続いて遺族厚生年金についてです。こちらは厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、亡くなった方に生計を維持されていた配偶者が受けられるものになります。こちらは子の要件がありませんので、高齢の方でも受給できる可能性が高いでしょう。
 

遺族厚生年金の計算方法と受給額の目安

遺族厚生年金の年金額は、おおむね亡くなった方の老齢厚生年金の4分の3 となります。仮に亡くなった方の老齢厚生年金が月額18万円だった場合、遺族厚生年金は18万円×4分の3=13万5000円ほどになると想定できます(具体的な額は個別の事情により異なります)。
 
そのため、基本的には遺族年金を妻が生前の夫の受け取っていた年金額と同じくらいの額で受け取ることは難しいと考えていいでしょう。
 
ただし、実際の受給額は、加給年金や中高齢寡婦加算などの加算がある場合や、報酬比例部分以外の部分がある場合など、個々の状況によって異なる点にはご注意ください。
 
なお、遺族年金を受け取る方が65歳以上で、かつ自身の老齢厚生年金を受け取れるという場合、老齢厚生年金は全額支給となりますが、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。例えば、母が老齢厚生年金を月額換算2万円受け取っている場合、遺族厚生年金は2万円減額されてしまうということです。
 

遺族年金受給の手続きと注意点

遺族年金を受給するためには、年金請求書に必要書類(戸籍謄本、住民票、死亡診断書、収入証明など)を添付して提出し、審査を経る必要があります。提出先はお近くの年金事務所や年金センターとなります。
 
また、受給の申請について不明な点や気になる点などがあれば相談なども受け付けていますので、まずは問い合わせだけでもしてみるといいでしょう。なお、遺族年金の受給の申請には時効があります。その期間は原則として、受給できる権利が発生してから5年以内となります。
 
そのため、遺族年金は5年以内に申請しないと受給権が消滅する可能性があります。早めの手続きを心がけましょう。
 

まとめ

遺族年金は、亡くなった方の年金額と同額ではありません。遺族厚生年金の場合は報酬比例部分の4分の3が基本となり、亡くなった方の受け取っていた額と同じくらいの額の年金を受け取ることは難しいものになるでしょう。
 
ただし、実際の受給額は、個々の状況によって異なるため、年金事務所で相談したり、自身で調べて確認することをおすすめします。遺族年金は遺族の生活を支える大切な制度です。大切な家族を失った後の生活を支えるためにも、遺族年金の制度を正しく理解し、早めの対応を心がけましょう。
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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