夫の年金「月18万円」で生活してきた80代の妻は、夫の死後に「遺族年金」をいくら受け取れる?

配信日: 2025.06.14

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夫の年金「月18万円」で生活してきた80代の妻は、夫の死後に「遺族年金」をいくら受け取れる?
長年連れ添った夫が亡くなった後、妻の生活に大きく関わるのが「遺族年金」です。
 
特に、高齢の専業主婦やパート勤務だった女性にとっては、夫の年金が主な収入源となっていたケースも多く、夫の死後の生活資金がどうなるのか、不安に感じる方も少なくないでしょう。
 
そこで今回は、夫の年金が月18万円だった家庭を例に、妻が受け取る「遺族年金」がいくらになるのか、また、老後の生活資金としてどれほど役立つのかを解説します。
柘植輝

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

「遺族年金」の種類と受給のしくみ

遺族年金には、大きく分けて遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。まずは遺族基礎年金から解説しましょう。
 
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人が亡くなった場合に支給される年金で、主に子どもを養っている配偶者または子ども本人が対象です。今回のように80代の妻が対象となるケースはほとんどなく、多くは支給対象外となることが想定されます。
 
続いて遺族厚生年金です。これは、厚生年金に加入していた人(主に会社員や公務員など)が亡くなった場合、その方によって生計を維持されていたなど一定の条件を満たした遺族に支給される年金です。妻が65歳以上、または死亡当時に生計を共にしていた場合には支給対象となります。
 
今回のケースでは、夫が厚生年金受給者であり、妻が80代ということから、「遺族厚生年金」が支給される可能性が高いでしょう。
 

月18万円の年金受給者が亡くなった場合、妻は遺族年金をいくら受け取れる?

では実際に、夫が生前「月18万円」の年金を受け取っていた場合、妻は遺族厚生年金としていくら受け取れるのでしょうか? 考えてみましょう。
 
大雑把に説明すると、遺族厚生年金の金額は夫の厚生年金報酬比例部分の4分の3です。要は、夫の厚生年金のおおむね4分の3が妻の受け取る遺族厚生年金となるわけです。
 
厳密に厚生年金の報酬比例部分が総支給額とイコールとなるわけではありませんが、個別の事情もあるため、今回はイコールとして考えます。
 
では、実際に夫の年金が月18万円として考えていきましょう。
 
このうち、国民年金、すなわち老齢基礎年金が6万円と仮定して考えます(国民年金は満額でも6万8000円となるため)。すると、厚生年金部分は12万円になります。妻が受け取る遺族年金の額はその75%となるため、「12万円×0.75=9万円」。
 
したがって、妻が受け取れる遺族厚生年金は月額9万円となるわけです。ただし、これはあくまで目安であり、実際の金額は夫の加入期間や収入、年金受給記録など個別の事情によって前後することにご注意ください。
 

老後の生活費と「遺族年金」の現実

遺族厚生年金が支給されるとしても、それが月額9万円程度では生活が厳しくなるのが現実です。
 
仮に妻自身が国民年金をほぼ満額の6万円受け取れたとしても、総収入が15万円です。家賃や医療費などの支出、年金以外の他の収入の有無や額などによっては生活が厳しくなることでしょう。
 
実際、総務省統計局の家計調査によれば、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の支出額は、消費支出だけでおよそ15万円となっています。
 

まとめ

夫の年金が月18万円だった場合、妻が受け取れる遺族厚生年金はおおよそ9万円程度が目安です。しかし、それだけで安心した老後を過ごすには統計情報から考える限り、決して十分とはいえないのが現実です。
 
また、生活費、医療費、介護費など、年齢を重ねるごとに必要なお金は増える可能性もあります。
 
遺族年金はあくまで生活を支える「柱の一つ」と考え、預貯金・制度活用・資産運用など、複数の選択肢を視野に入れることが、これからの高齢社会で安心して生きていくためのカギとなるでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要(19ページ)
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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