退職した父の「企業年金」はいつからもらえるのですか? 厚生年金とはどう違うのでしょうか?

配信日: 2025.06.13

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退職した父の「企業年金」はいつからもらえるのですか? 厚生年金とはどう違うのでしょうか?
老後の資金の核となるのは公的年金ですが、公的年金だけでは不足するのも事実です。そこで、給与所得者のなかには企業年金の活用を考えている人もいるでしょう。しかし、活用するためには、企業年金と厚生年金の違いを把握することが大切です。
 
そこで本記事では、企業年金の受け取り方や厚生年金との違いを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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企業年金とは

企業年金とは、国の社会保障制度である公的年金に対して、私的年金と呼ばれている年金制度の一つです。私的年金制度には個人年金と企業年金があり、企業年金は従業員の退職後の生活資金を補う目的で運営されています。
 
企業年金制度には、以下の3つの制度があります。

●厚生年金基金
●確定給付企業年金(DB)
●確定拠出年金(DC)

本章では、企業年金の3つの制度について解説します。
 

厚生年金基金

厚生年金基金とは、企業が老齢厚生年金の一部を国に代わって給付するとともに、企業独自に上乗せ給付を行える企業年金制度の一つです。しかし、公的年金制度の健全性および信頼性の確保を図るため、平成26年4月以降は新規の設立が認められていません。
 
そのため、すでに厚生年金基金を設立している企業に勤務している必要があり、利用できる人は限られています。
 

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金(DB)は、企業が拠出から給付まで行う企業年金制度の一つです。柔軟に制度設計できるのが特徴で、老齢給付金の受給開始は「60~70歳の規約で定める年齢到達時」または「50歳以上で退職した場合(規約で定めた場合)」となります。
 
確定給付企業年金(DB)には、以下の2種類があります。

●規約型……企業が生命保険会社や信託銀行などと契約する。企業は掛金を拠出するが、資金運用や給付は契約会社が行う。
●基金型……企業が企業年金基金を設立して、拠出や給付まですべて自社で行う。

確定給付企業年金(DB)の主な特徴は以下のとおりです。

◆拠出時

●掛金……原則として、企業が全額負担。2分の1を上回らない範囲で、加入者の負担設定も可能
●拠出限度額……制限なし

 

◆受給時

●受給開始……60~65歳または50歳以上の退職時
●加入年齢……70歳まで
●支給方法……年金と一時金の選択が可能

 

確定拠出年金(DC)

確定拠出年金(DC)は、「掛金と自身の指図による運用益の合計額」に基づき給付額が決定する年金制度の一つです。企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金があり、企業型確定拠出年金では企業が拠出金を負担して従業員が運用します。
 
確定給付企業年金(DB)に比べると制約が多くリスクもありますが、うまく運用できれば老後の資金として十分に活用可能です。
 
企業型確定拠出年金(DC)の特徴は以下のとおりです。
 

◆拠出時

●掛金……原則として企業が全額負担。規約によっては加入者も拠出可能。拠出は月単位
●拠出限度額……確定拠出年金(DC)のみを導入している場合、月5万5000円が限度

 

◆受給時

●受給開始……原則として60~70歳未満
●加入年齢……厚生年金被保険者(原則70歳未満)であれば加入可能。ただし、労使で「60歳未満」や「65歳未満」などと制限できる
●支給方法……年金と一時金の選択が可能

 

企業年金と厚生年金の違い

年金制度は1階が国民年金、2階が厚生年金、3階が企業年金の3階建てといわれています。国民全員(20~60歳未満)が加入する国民年金、給与所得者や公務員が加入する厚生年金はいわゆる公的年金です。
 
対して、企業年金は公的年金を補完する目的で設立されている私的年金です。厚生年金と企業年金は併用することが可能ですが、企業によっては企業年金がない場合もあるので注意しましょう。
 
企業年金と厚生年金の主な違いは、図表1のとおりです。
 
【図表1】

厚生年金 企業年金
特徴 ・公的年金
・企業(社会保険適用事業所)の社員
または公務員に加入義務がある
・私的年金
・加入は任意
掛金(保険料) 企業と加入者が1/2ずつ負担 原則として企業負担
加入年齢 対象企業に勤務してから70歳まで 60歳あるいは70歳まで(種類によって異なる)
支給開始 原則65歳から 種類によって60~75歳または50歳の退職時
支給期間 終身年金 有期(5年~20年)、終身年金または一時金

筆者作成
 

企業年金の受取方法と受取時期

公的年金の給付は原則65歳以降、2ヶ月分を年6回に分けて行われます。しかし、企業年金では年金あるいは一時金として選択できます。
 
また、公的年金は案内が自動的に送付され、簡単な手続きで受け取れますが、企業年金は受け取り時期がそれぞれ違うため、自分で申請する必要があります。企業年金の種類別によっても異なるので、図表2を参考にしてください。
 
【図表2】

申請窓口 受給開始時期
確定拠出年金(DC) 生命保険会社や信託銀行などの運営管理機関 原則として60~75歳までの希望する時期
確定給付企業年金(DB)
基金型
各企業の年金基金 60~65歳または50歳以上の退職時
確定給付企業年金(DB)
規約型
各企業 同上
厚生年金基金 ・加入年数10~15年以上
(基金によって年数に違いがある)
各厚生年金金基金
・上記以外
企業年金連合会
原則、公的年金受給開始時または
60歳(各基金のルールによって違う場合がある)

筆者作成
 

企業年金は厚生年金と併用できるので公的年金を補完するために役立てよう

企業年金の主な目的は公的年金の補完であり、厚生年金との併用が可能です。企業年金の拠出金は原則として企業負担ですが、規定によっては個人での拠出も可能なので、より多くの年金を受け取ることもできます。
 
また、余裕があれば企業年金以外にも個人年金(iDeCoなど)に加入することで、より老後資金を充実させられるでしょう。
 

出典

厚生労働省 私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)
厚生労働省 確定拠出年金制度の概要
厚生労働省 第10回社会保障審議会年金部会、第30回社会保障審議会企業年金・個人年金部会(合同開催)資料
厚生労働省 第10回社会保障審議会年金部会、第30回社会保障審議会企業年金・個人年金部会(合同開催)資料
厚生労働省 令和4(2022)年5月から企業型DC加入者の加入可能年齢が引き上げられます
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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