遺族年金が5年で打ち切り!? 「改悪」との声も上がっているけど、遺族年金を “一生もらえる”時代は終わるの?

配信日: 2025.06.12

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遺族年金が5年で打ち切り!? 「改悪」との声も上がっているけど、遺族年金を “一生もらえる”時代は終わるの?
共働きが当たり前になった今、年金制度にも男女平等の波が押し寄せています。2028年4月施行予定の新制度では、遺族厚生年金における男女間の格差が見直されました。改悪との声もありますが、その背景には格差是正と制度の持続性という2つのキーワードがあるとされています。
 
本記事では、遺族厚生年金の制度改正について解説します。生活を支える重要な制度がどう変わるのか、今のうちにしっかり確認しておきましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

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遺族年金制度の現状

遺族年金には「遺族基礎年金(国民年金から)」と「遺族厚生年金(厚生年金から)」の2種類があります。今回、改正対象となるのは「遺族厚生年金」であり、国民年金に基づく基礎年金部分は変更ありません。
 
現行制度では、遺族厚生年金の支給対象や期間に表1のような区別がありました。
 
表1

女性 男性
死別したときの配偶者の年齢
(子どもがいない場合)
<30歳未満>
5年間の有期給付
 
<30歳以上>
無期給付
<55歳未満>
給付なし
 
<55歳以上>
60歳から無期給付

出典:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」を基に筆者作成
 
遺族厚生年金の支給においては、子どもの有無や年齢によって受給期間が変わります。
 

誰が対象? 新制度における変更内容

厚生労働省によれば、今回の遺族厚生年金制度改正では、20~50代で「特定条件に該当する子どものいない配偶者」を中心とした変更になっています。
 

(1)男性は60歳未満、女性は2028年度末時点で40歳未満の、18歳年度末までの子どもがいない方が対象

従来は、子どものいない場合の受給対象に男女差がありましたが、改正後は男女ともに「子どもがいない60歳未満」であれば原則5年の有期給付対象になります。なお、2028年度に40歳以上となる妻は、これまでと変更はありません。
 

(2)年収850万円の収入要件を撤廃

現行制度では、死亡した方に生計を維持されていた遺族として、「前年の収入850万円未満」という条件があったものの、今回の改正で収入要件が廃止されます。
 

(3)有期給付加算の導入

死亡した被保険者の老齢厚生年金報酬比例部分の4分の3を上回る額を「有期給付加算」として5年間の有期給付に上乗せ支給、生活再建期を手厚くサポートする仕組みです。
 

(4)死亡分割による老齢厚生年金額の増額

亡くなった配偶者との婚姻期間中の厚生年金加入期間を分割し、65歳以降の老齢厚生年金額に反映させる仕組みが導入されます。
 

(5)中高齢寡婦加算の段階的廃止

40~65歳未満の中高齢の寡婦に支給される加算金は、男女平等ならびに現代社会に合った年金設計の観点から段階的に廃止する予定です。
 

なぜ制度変更されたの? 背景にある男女格差

遺族年金制度は長らく男女格差が存在してきました。現行制度では、男性は55歳以上でないと遺族厚生年金の対象にならず、女性は年齢によって無期限給付か期限付きかが分かれています。しかし近年、女性の社会進出が進み、就業率も上昇しました。
 
こうした背景を受けて、男女の格差を是正し平等を図るため、子どものいない60歳未満の配偶者については遺族厚生年金の受給が原則として一律で5年間の有期給付と変更されます。
 
また、財政的にも年金制度の持続可能性確保が不可欠です。男女間の格差是正とともに、制度の持続性を確保するための改正という側面もあります。
 

まとめ

改正後の遺族厚生年金は、収入制限がなくなり、収入の多い方でも安心して受給できる仕組みに変わりました。現行制度と比べて支給期間が短縮されるケースもありますが、その分、制度全体の公平性が高まっています。
 
全体としては、受給条件を分かりやすく整理しつつ、保障内容も一定の水準を維持するなど、できる限りバランスのとれた内容に変更されているといえるでしょう。今後も、状況に応じて持続可能な制度設計が模索されていくと見込まれます。
 

出典

厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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