「国の年金」である加給年金 どんな年金をもらっている人が受け取れる?

配信日: 2019.04.01 更新日: 2019.06.14

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「国の年金」である加給年金 どんな年金をもらっている人が受け取れる?
複雑な制度、難解な用語の「国の年金」。そんな「国の年金」のうち、今日は「加給年金(かきゅうねんきん)」について見ていくことにしましょう。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

加給年金ってどんなもの?

加給年金を、すごく簡単に表現してみましょう。「年金をもらっている人」にとっての「家族手当」のイメージです。なので、単身で「年金をもらっている人」に、加給年金はありません。
 
では、「家族がいれば」加給年金がもらえるのか、というと、そんなに単純ではありません。
 

(1)どんな年金をもらっている人が受け取れる?

 
「国の年金」が二本立てというのは、ご存じでしょうか?「基礎年金(=国民年金)」と「厚生年金」です。
 
加給年金がもらえるのは、「厚生年金」をもらっている人です。なので、「基礎年金だけをもらっている人」には加給年金がありません(基礎年金をもらっている人には「子の加算」が付く場合がありますが、本稿では「子の加算」は割愛します)。
 

(2)「厚生年金」には3つの種類がありますが…

 
ひと口に「厚生年金」と言っても、3つの種類があります。「老齢厚生年金」「障害厚生年金」、そして「遺族厚生年金」です。
 
この3つのうち、「遺族厚生年金」には加給年金がありませんが、「老齢厚生年金」と「1級or2級障害厚生年金」には加給年金があります。ただし、「3級障害厚生年金」には加給年金がありません。
 

(3)どんな家族がいれば、加給年金がもらえるの?

 
「老齢厚生年金か1級もしくは2級障害厚生年金のどちらかをもらっていて、家族がいれば加給年金がもらえるの?」いえいえ、やっぱり、そんな単純ではなく、「家族」にもいろいろな条件があります。
 
では、どんな「家族」なら良いのでしょうか?その「家族の条件」を以下に、まとめてみました。
 

*は老齢厚生年金だけにあるものです。
*以外は、老齢厚生年金にも、障害厚生年金にもあります。
ちなみに、配偶者は配偶者であれば良く、男女は問われません。また、内縁もOKです。
 
上の表をご覧いただいてお気づきになったかと思いますが、老齢厚生年金の場合、「年齢差」のあるご夫婦が加給年金の対象となるのです。
 
例えば、同じ年齢のご夫婦の場合、ご夫婦が同じ月に65歳になると、加給年金をもらうことができません。逆に、夫婦の年齢差が20歳であれば、加給年金を20年間受け取ることができるのです。
 
なお、配偶者の年齢が65歳になることにより、加給年金が終わってしまっても、配偶者自らの老齢基礎年金を受け取ることができます。
 
老齢厚生年金における加給年金、中でも配偶者を対象にした加給年金には特別加算があります。「家族手当にプラスアルファ」というイメージですかね。
 

(4)もちろん、本人にも条件があります。

 
老齢厚生年金における加給年金をもらう本人にも、もちろん条件があります。(障害厚生年金における加給年金には、本人に条件はありません)。
 
条件を具体的に見ていくと。
※厚生年金保険の被保険者期間が20年(=240月)以上あること、もしくはあったこと(厚生年金保険の被保険者期間とは、厚生年金保険料をお給料から天引きされていた期間のこと)。
☆ 65歳以上:老齢基礎年金をもらっていること。
☆ 60歳~64歳:特別支給の老齢厚生年金の定額部分をもらっていること。
 
※は必須です。ですので、☆のいずれかに当てはまる人でも、※を満たしていない人には加給年金はありません。
 
ということで、離職・転職や派遣、出向、それにパートやアルバイトの期間があったとしても、給与所得者として20年以上勤めた上げた人が対象、ということなのですね。
 
逆に、自営業者の期間が長く、そのため厚生年金保険の被保険者期間が短いと、加給年金をもらえない可能性もあります。
 

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モデルケース1

男性会社員/43歳/年収600万円/妻と子ども1人
 

 
モデルケースの男性会社員は現時点で43歳ですので、1978年生まれということになります。60歳~64歳の間の特別支給の老齢厚生年金は対象外です。そのため、加給年金の表は「-」と表示しました。
 
また、要件に該当すれば障害厚生年金を受け取ることができます。もっとも、妻の年齢が22歳以上離れていれば対象外となります。
 
お子さまが1人いらっしゃいますが、加給年金の対象にはならなそうです。そもそも、障害厚生年金では、子どもは加給年金の対象ではありません。(障害基礎年金には「子の加算」がありますが、本稿では割愛します)。
 
また、この男性会社員が43歳の今、お子さまの年齢が0歳だとしても、65歳のときにはお子さまの年齢は22歳ですので加給年金の対象となる子どもではありません。
 

加給年金の注意点はどこにある?

加給年金の注意点として、先述のように年齢と生計維持の2つの要件を満たした配偶者がいたとしても、その配偶者自身が(65歳前に)「厚生年金の被保険者期間が20年以上ある」老齢厚生年金の受け取りを開始したり、障害厚生年金の受け取りを開始した場合には、加給年金が支給停止となる点が挙げられます。
 
また、老齢厚生年金と共に加給年金をもらっている方が在職老齢年金に該当し、支給停止となった場合、その支給停止が「一部停止」のときは加給年金が全額支給されますが、在職老齢年金により「全額停止」になったときは加給年金も全額停止となります(在職老齢年金とは、厚生年金保険の保険料を天引きされながら、老齢厚生年金をもらっている人のことです)。
 
また、配偶者の年齢が65歳になると加給年金が終わり、代わって配偶者自らの老齢基礎年金が始まるという具合に「年金の変化の流れ」を知っていないと、いきなり加給年金が打ち切られて戸惑ってしまうことになりますね(いちおう、通知はありますが…)。
 
また、遺族厚生年金は「亡くなった人がもらっていた老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」ということですので、加給年金の金額は遺族厚生年金の金額に含まれていません。遺族厚生年金の計算をするときには留意しなくてはなりません。
 

まとめ

加給年金は家族手当のイメージですが、もらうための条件や注意点がいろいろと細かく定められていることが分かりました。なるべく専門的な言葉を避けながら書いてみましたが、これを読んで「加給年金」について理解を深めていただければ幸いです。
 
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
 

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