ねんきんネットの金額欄に「10万円」と書いてあったので「月額」だろうと思っていたら友人から「年額では?」と言われました。年金はそんなに少ないのでしょうか?
配信日: 2025.06.12

公的年金は、一生に関わる大切な収入源です。しかし、制度や表示方法が分かりにくく、正しく読み取れないと不安ばかりが募ってしまいます。
そこで本記事では、「ねんきんネット」の表示金額の正しい見方を解説するとともに、金額が少なく表示される理由や、今後の対策についても説明していきます。

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目次
ねんきんネットの金額表示は「年額」
まず結論からお伝えすると、「ねんきんネット」で表示される将来の年金額は“月額”ではなく“年額”です。
例えば、年金見込額の欄に「10万円」と表示されていた場合、それは年間の受取見込額であり、月額では約8333円ということになります。
将来の年金見込額(老齢年金見込額)の表示形式については、日本年金機構の公式サイトにも明記されており、ねんきんネット上で「老齢年金見込額」として表示される金額は原則“年額”での記載となっています。このように月額表示ではないため、誤解してしまう方が多いと思われます。
なお、実際に支給される年金額の端数は、各支払期に1円未満を切り捨てて計算し、切り捨てた端数の合計は2月期の支払期に加算されます。このため、月額や年額の見込みと実際の支給額が完全に一致しない場合もあります。
年間10万円はあり得る金額? 年金が少ない理由とは
年金が年間10万円程度というのは、確かに少ない金額に感じられるかもしれませんが、加入期間が短い場合や未納が多い場合は、そのような金額になるケースもあります。その理由として、主に以下のようなものが考えられます。
1. 国民年金のみ加入している場合
国民年金(自営業やフリーランスなどが対象)にしか加入していない方は、満額で支給されたとしても、令和7年度の場合は年額83万1696円(月額6万9308円)です。
さらに、未納期間や未加入期間があると、支給額はその分減額されてしまいます。仮に数年しか加入していない場合、年金額が10万円以下となることもあります。
2. 加入期間が短かった場合
例えば、20〜60歳までの40年間きっちり加入すれば満額に近い支給を受けられますが、途中で未納になったり、加入そのものをしていなかった期間があったりすると、年金額はその分減ります。
会社員や公務員のように厚生年金に加入していれば、収入に応じて年金額が加算される仕組みになっていますが、パートタイムや短期契約などで加入要件を満たしていないと、厚生年金に加入できず、年金額は低くなります。
3. 年金受給資格の最低加入期間は10年
年金制度は、原則として10年以上保険料を納めなければ、老齢年金を受け取る資格がありません。ただし、10年ぴったり加入しているだけでは、年額10万円〜20万円程度にしかならないケースもあります。
表示金額に不安を感じたらどうすればいい?
「表示されていた金額があまりに少ない……」と不安に思ったとき、まず確認しておきたいのは以下のポイントです。
1. 表示金額の前提条件を確認する
ねんきんネットの年金見込額には、以下の2つのパターンがあります。
・現在の加入状況が継続された場合の将来見込額(60歳や65歳時点など)
・現時点までの加入実績に基づく見込額
もし、まだ働いていて年金の支払いを継続しているなら、現時点の実績のみで表示される金額は当然少なくなります。つまり、今のまま何もしなかった場合の金額として10万円が表示されている可能性があるのです。
2. 年金記録に漏れがないか確認
もらえるはずの年金が少ないと感じた場合、年金記録の確認も重要です。過去に転職や引っ越しをしていたり、名前の表記が違っていたりすると、記録が分断されている可能性があります。
ねんきんネットや年金事務所では、こうした記録の修正手続きも受け付けています。年金記録に漏れや誤りがないか、一度確認してみましょう。
将来に向けてできる対策はある?
現在の年金見込額が少ないと感じても、今からできることはあります。本章では、年金を増やす主な方法3つを紹介します。
1. 保険料の未納や免除・猶予期間がある場合は「追納」を検討
過去に国民年金保険料を納めていない未納期間や免除・猶予・学生納付特例期間がある場合、そのままにしておくと将来の年金額が減る原因になります。
この場合、最大過去10年分までさかのぼって保険料を納め直すことができる「追納制度」があります。追納を行うことで、その分年金額を増やすことができ、将来の受給権の確保や年金額の底上げにつながります。追納には時効があるため、早めの確認と手続きが重要です。
2. 付加年金や国民年金基金の活用
国民年金第1号被保険者や65歳未満の任意加入被保険者の方は、月額400円の追加で付加年金に加入することができ、2年で元が取れるともいわれています。ただし、国民年金保険料の免除や猶予を受けている人や国民年金基金の加入者は対象外です。
また、国民年金基金を利用することで、将来の年金を補強することも可能ですが、付加年金と国民年金基金は同時に加入できませんのでご注意ください。
3. iDeCoやNISAで自助努力を
将来の年金が不安な方には、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなどの制度を利用して、老後資金を自分で準備していくのも一つの方法です。これらの制度を上手に活用することで、公的年金だけに頼らない生活設計が可能になります。
年金の金額は「見方」が大事。落ち着いて確認を
「ねんきんネット」の金額が10万円だったとしても、それは月額ではなく年額であること、また、表示金額が現時点での見込額である点を理解しておくことが大切です。
少なく表示されていたとしても、今後の保険料納付や働き方次第で年金額は増やせる余地があります。不安なままにせず、まずは自分の状況を正しく把握し、必要に応じて専門機関へ相談してみましょう。
出典
日本年金機構 ねんきんネット
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
日本年金機構 「ねんきんネット」による年金記録の確認
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 付加年金
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト
金融庁 NISA特設ウェブサイト
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー