70歳から「繰下げ受給」をしようとしていた父が、年金受給前に68歳で他界。もらえるはずだった年金はなくなってしまうのでしょうか?
配信日: 2025.06.08

しかし今回のケースのように、繰下げ受給をするつもりだった人が、受け取る前に死亡するケースがあります。この場合、本来受け取れるはずだった分がどうなってしまうのか気になるかもしれません。
本記事では、繰り下げ待機中に本人が亡くなってしまった場合、受け取れなかった分の受給の可否について解説します。

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年金の繰下げ受給とは
通常、老齢年金は65歳に到達した段階で受け取れますが、60歳から65歳になるまでの間の早期受け取りも可能です。
これを「繰上げ受給」と呼びます。ただし、繰上げ受給すると繰り上げ1ヶ月あたり0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5%)減額されてしまうので、注意しましょう。
一方、65歳で受け取らずに後で受け取ることを「繰下げ受給」と呼びます。最大で75歳まで、1ヶ月単位で繰り下げ可能です(昭和27年4月1日以前生まれの方は70歳まで)。繰り下げ1ヶ月あたり、0.7%増額されます。
増額率は生涯変わらないため、より多くの年金を受け取りたい人は、あえて65歳で受給開始はせずに繰下げ受給をする選択肢があります。
繰り下げ待機中に死亡した場合はどうなる?
今回のケースのように、繰下げ受給を選択していた本人が死亡してしまった場合、先送りしていた年金は「未支給年金」として遺族に支給されます。通常、年金受給者が死亡すると、その時点で年金を受け取る権利は消滅します。
ただし、年金を受ける権利のあった人が死亡したときに、まだ支給されていなかった年金や死亡した月分までの年金については、未支給年金として故人と生計を同じくしていた遺族が受け取り可能です。
今回のケースでは、父親が65歳から繰下げ受給を選択していたものの、3年後に死亡しています。この場合、65歳~死亡した月までの年金について、遺族が受け取り請求できます。
未支給年金の注意点
未支給年金の請求をする際は、受け取れる年金額についていくつか注意すべき点があります。
通常、年金を繰下げ受給すると受給額は増額されますが、未支給年金は例外です。日本年金機構によれば、未支給年金として支給されるのは死亡した人の「65歳時点の年金額」となり、繰り下げによる増額分は含まれません。
また、請求時点からさかのぼって5年以上前の年金については「時効」となり、受け取ることはできない点にも注意しましょう。
未支給年金の請求方法
日本年金機構によると、未支給年金を受け取れるのは、死亡した人と当時生計を同じくしていた、以下に該当する人です。
1.配偶者
2.子ども
3.父母
4.孫
5.祖父母
6.兄弟姉妹
7.1~6以外の3親等内の親族
受け取り順位も上記の数字順となります。未支給年金の請求は、年金事務所または年金相談センターで行えます。添付書類は以下の通りです。
・死亡した人の年金証書
・死亡の事実を明らかにできる書類(住民票除票、市区町村長に提出した死亡診断書のコピーなど)
・死亡した人の年金証書
・死亡した人と請求者の続柄を証明する書類(戸籍謄本など)
・死亡した人と請求者が生計を同じくしていたことを証明する書類
・受け取りを希望する金融機関の通帳
個々のケースによって必要な書類が異なる場合があります。ねんきんダイヤルや、年金事務所で詳細を確認するようおすすめします。
未支給の年金は遺族が受け取れる
繰下げ受給しようとしていて受け取っていなかった年金は「未支給年金」として、死亡した人と生計を同じくしていた遺族が請求できます。ただし増額後の額を受け取れるわけではなく、死亡した人が65歳時点で受け取るはずだった額の支給となる点に注意が必要です。
請求時には、それより5年以上前の年金については「時効」扱いとなる点にも注意しましょう。詳細な事項については、ねんきんダイヤルや年金事務所の担当に尋ねるようおすすめします。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー