今まで「年収500万円」でしたが、定年後は65歳まで「月収20万円」の再雇用で働く予定です。60歳以降働かない場合と比べて“年金”はいくら増えますか? 受給額をシミュレーション
配信日: 2025.06.08
本記事では、年収500万円で60歳まで会社員として働き、その後は月収20万円で65歳まで再雇用されるケースをモデルとして、実際に年金額がどれくらい増えるのか試算します。

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60歳以降も働くと年金が増える
日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の「2階建て」になっています。国民年金は、日本国内の20歳以上60歳未満の全員が加入し、厚生年金は会社員や公務員がさらに上乗せとして加入します。そして、会社員の場合、老後は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。
年金の払い込みは、原則60歳になるまでですが、60歳で定年退職した後に再雇用として働くと、現役時代と同様に再び厚生年金に加入でき、その分受け取れる老齢厚生年金の報酬比例部分が増えることが期待されます。
60歳まで働いた場合の年金額
では、60歳で定年退職してそのまま働かない場合と、65歳まで再雇用で働き続けた場合でどれだけ年金の受給額が変わるのか、具体的に見ていきましょう。まずは、60歳まで会社員として働いた場合、65歳以降に受け取れる年金額を見ていきましょう。なお、前提は次のとおりとします。
●60歳まで40年間(480ヶ月)厚生年金に加入
●40年間の平均年収は500万円
今回の場合、老齢基礎年金は満額の年間83万1700円受け取れます。
続いて、老齢厚生年金の報酬比例部分(年間)の計算式は次の通りです。
・平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数
平均標準報酬額は、各月の標準報酬月額と標準賞与額の合計を加入月数で割って求められ、今回のケース(生涯の平均年収が500万円)では41万円となります。計算式に当てはめると、報酬比例部分として受け取れる年金額は年間で107万8661円です。
よって、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合せると年間で191万361円受け取れます。
65歳まで再雇用で働いた場合に増える年金額
続いて、60歳以降も65歳までの5年間、月額20万円稼いだ場合にどれだけ年金が増えるか見ていきましょう。
まず、老齢基礎年金は今回のケースでは増額はありません。
報酬比例部分の増額分は次の式で計算できます。
・20万円×5.481/1000×60ヶ月=6万5772円
先に計算した60歳までの老齢基礎年金・老齢厚生年金と合せると、197万6133円となります。
65歳まで毎月20万円稼いだ結果、年間の年金額が約6万6000円しか増えないのは少ないと感じる人もいるかもしれません。しかし、これを生涯で見ると、例えば85歳まで生きた場合は20年間で約132万円の差となります。
また、60歳以降も働くと所得が増え、生活費に余裕が生まれやすくなります。さらに、年金の受給開始年齢は65歳以降、最大75歳まで繰下げることが可能です。繰り下げると、繰り下げた期間に応じて年金受給額を増やせるため、60歳以降働くことで繰下げ受給の選択もしやすくなるでしょう。
まとめ
月20万円の再雇用で厚生年金に加入すると、将来の年金額は確実に増えます。その差額は小さく見えるかもしれませんが、生涯で見ると100万円以上の差になるかもしれません。
また、再雇用期間中の収入そのものが生活の安定にもつながります。年金額を増やすだけでなく、老後の安心感を高めるという意味でも、60歳以降の就業には大きなメリットがあるでしょう。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー