62歳で「月12万円」をパートで稼ぐ主婦。夫の定年退職でパート時間を増やし「社会保険」に加入しました。65歳までパートを続けると、年金はいくら増えますか? 70歳まで働くケースも試算
配信日: 2025.06.06

本記事では、60歳以上のパート従業員が社会保険に加入したときの影響や、社会保険加入により将来の老齢厚生年金がどのくらい増えるかについて紹介します。
社会保険に加入するパートは増加傾向
「扶養の範囲で働きたい」「給料から社会保険料を引かれたくない」という考えの人は依然として少なくないものの、社会保険に加入して働くパート従業員は増加傾向です。
パートの社会保険適用拡大
パートの社会保険の企業規模要件は、2022年と2024年に適用拡大が行われ、2022年10月からは従業員数101人以上、2024年10月からは51人以上の企業で、次の要件に該当するパート従業員が社会保険に強制加入となりました。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・1ヶ月の給与が8万8000円以上
・2ヶ月を超える雇用見込みがある
・学生ではない
適用拡大の結果、実際にどのくらいのパート従業員が社会保険に加入したのでしょうか?
パートの社会保険加入は増加傾向
2023年に、独立行政法人労働政策研究・研修機構がパート従業員に行ったアンケート調査によると、「社会保険が適用され、かつ手取りが維持できるよう所定労働時間を延長して社会保険に加入した」人は6.4%いました。
「所定労働時間はそのままで社会保険が適用された(14.5%)」と合わせると、2022年の適用拡大を受けて社会保険に加入したパート従業員は、全体の2割超に達します。
「社会保険が適用されないよう、所定労働時間を短縮した」も12.0%みられますが、全体として、パートの社会保険加入は増加傾向にあるといえるでしょう。
社会保険加入のメリット
同調査で社会保険に加入した理由を尋ねたところ、「将来の年金を増やしたいから(27.9%)」「(国民健康保険などと比べ)保険料の負担が軽くなるから(25.4%)」「障がい・遺族給付が充実(3.7%)」「(傷病手当金など)健康保険の給付の充実(4.5%)」などが挙げられていました。
月収12万円で働くと厚生年金はいくら増える?
社会保険に加入すると、将来の老齢厚生年はどのくらい増えるのでしょうか?
老齢厚生年金(報酬比例部分)は、次の1+2で計算されます。
1. 2003年3月以前の加入期間×平均標準報酬月額×7.125/1000
2. 2003年4月以降の加入期間×平均標準報酬額×5.481/1000
現在から将来に向けての加入期間は2に該当しますので、2の計算式に条件を当てはめて計算します。
65歳まで働いた場合
次の条件で、65歳まで働いた場合の老齢厚生年金(報酬比例部分)の増加額を計算しましょう。
年齢:現在62歳
月収:12万円(平均標準報酬額11万8000円)
賞与の支給:なし
11万8000円×5.481/1000×36ヶ月≒2万3283円で、約2万3000円の増加になります。
70歳まで働いた場合
同じ人が70歳まで働いた場合はどうでしょうか。
11万8000円×5.481/1000×96ヶ月≒6万2088円で、現在62歳の人が70歳まで働いた場合の増加額は6万2000円ほどです。
まとめ
2022年のパートへの社会保険適用拡大を受け、所定労働時間をあえて延長して社会保険に加入したパート労働者が6.4%みられました。
2024年の適用拡大後の調査はまだ発表されていませんが、社会保険加入のメリットが広く周知されつつある現状を考えると、「社会保険に加入して働きたい」というパートはさらに増えると予想されます。
出典
日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
独立行政法人労働政策研究・研修機構 「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(企業郵送調査)及び「働き方に関するアンケート調査」(労働者Web調査)結果
日本年金機構 報酬比例部分
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士