最近また「年金の底上げ」についてのニュースを耳にすることが増えました。年金が増えるのはいいことのように思えるのですが、何が問題なのでしょうか?
配信日: 2025.06.06


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与野党が正式合意! ついに「基礎年金底上げ」なるか?
2025年5月、自民・公明・立憲民主の三党党首による会談が行われ、注目の「基礎年金の底上げ」について正式に合意がなされました。
これまで与党は、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の水準を引き上げる構想を検討していたものの、財源や制度設計を巡る議論から法案提出段階で断念していました。しかし、野党の立憲民主党がこの構想を法案に盛り込むよう強く求めたことで、事実上の合意に至った形です。
この動きにより、今後の年金財政の検証結果次第では、基礎年金の底上げが現実の政策として実行される可能性が高まりました。
財源の壁は越えられるのか? 厚生年金積立金の行方
今回の会談で注目されたのは、財源の問題です。議論の中心は、厚生年金の積立金にあります。本来この積立金は、将来の年金給付に備えるためのものであり、安易な取り崩しは制度の持続性を揺るがしかねません。
積立金の原資は、主に厚生年金加入者(会社員や公務員など)の保険料です。そのため、国民年金の受給者(自営業者や非正規労働者など)だけが恩恵を受けるかたちになれば、負担と受益のバランスが不公平になるおそれがあります。
さらに、基礎年金の引き上げには、厚生年金の積立金65兆円に加え、国庫負担として約70兆円が必要とされています。この財源を消費税でまかなうのか、高齢者の医療費負担を増やして捻出するのかは、現時点では決まっていません。国民が納得できる財源の確保が、今後の最大の課題といえるでしょう。
課題は山積み……。それでも年金底上げが必要とされる背景とは?
財源問題など、多くの課題がある一方で、底上げに賛成する声が多いのも事実です。というのも、国民年金(基礎年金)のみを受給している人の中には、月額6万円程度の年金しか得られず、最低限の生活すらままならない場合があります。特に高齢の単身者や女性において、老後の貧困リスクが深刻な社会課題になりつつあります。
「長く働いても、年金が少ない」「安心して老後を迎えられない」という不満が噴出する中で、年金制度そのものの信頼性を取り戻すためにも、底上げは避けられない施策といえるでしょう。また、物価の変動やインフレ傾向も考慮すれば、現行の給付水準では実質的な生活水準がさらに下がる懸念もあります。
まとめ
年金の底上げは、単なる給付額の増額ではなく、「誰もが老後に最低限の暮らしを営める社会の基盤」を整えるための制度的再構築ともいえます。もちろん、積立金の活用や税財源のあり方、さらには世代間の公平性など、多くの論点を含む複雑なテーマではありますが、今回の与野党合意はその第一歩を踏み出したともいえるでしょう。
不安が先行しがちな年金の話題ですが、今回の合意が「老後の安心」を実感できる社会への第一歩となるよう、国民一人ひとりが関心を持ち、議論に目を向けていくことが求められています。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー