大学生の間、「免除されている」と思い込んで2年分の年金保険料を払っていませんでした。社会人になった後でも、免除の手続きをとることは可能でしょうか?
配信日: 2025.06.06
今回は、「学生納付特例制度」について説明するとともに、保険料を後から納付する方法について解説します。

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
学生納付特例制度とは
1. 制度の概要
大学や専門学校などに在籍する学生などで、本人の前年所得が一定額以下の場合、申請して認められると在学中の保険料の納付が猶予されます(※1)。
前年所得の目安:128万円+扶養親族等の数×38万円
なお「所得」は本人の所得のみで判断され、同居家族の所得は関係ありません。
学生納付特例が認められると、承認を受けた期間中は保険料を納めなくても、老齢基礎年金の受給資格期間に算入され、さらに障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間にも含まれます。
2. 制度利用の注意点
学生納付特例を利用する際には、以下の点に十分注意する必要があります(※1)。
(1)制度を利用するためには、市町村役場や年金事務所に申請して、承認を受ける必要があります。
(2)この制度において、保険料は免除されるものではなく、納付を猶予されるものです。保険料を追納しないかぎり、老齢基礎年金の年金額には反映されません。
また、学生納付特例制度を申請しなかった保険料未納期間について、後から免除や納付猶予を申し出ることはできません。
保険料を後から納付する方法
1. 保険料の追納制度
学生の納付特例制度を受けた方など、保険料の納付猶予や免除を受けた方は、「追納制度」を利用して保険料を後から納付することにより、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます(※2)。追納制度で保険料を追納できる期間は、納付猶予・免除を受けた月の前10年以内の納付猶予・免除期間にかぎられます。
納付する保険料の額は、納付猶予・免除の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合、当時の保険料に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
2. 未納保険料の納付
学生納付特例制度などの申請をしないまま、保険料が未納となっている場合は、納付期限から2年以内であれば保険料を納めることができます。しかしながら、納付期限から2年を過ぎると、時効により保険料を納めることができなくなります(※3)。
まとめ
国民年金の学生納付特例制度は、申請して承認されると、国民年金保険料の納付が猶予される制度です。申請しないまま保険料を納付しなかった期間は、保険料の未納期間となりますので、納付期限から2年以内に保険料を納付するようにしましょう。
なお、学生の納付特例制度を利用しないで保険料が未納となっている期間は、老齢基礎年金の受給資格期間に算入されません。
加えて、保険料が未能のままだと、万が一の場合に障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格を得ることができません。そのため、大学などに在学中に20歳になったときは、忘れずに学生納付特例制度の申請を行いましょう。
出典
(※1)日本年金機構 学生納付特例制度のポイント 令和7年度版
(※2)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
(※3)日本年金機構 Q 保険料を納めなかった期間がありますが、今から納めることができますか。
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士