「年金だけで夫婦が暮らしていけるのはすごい!」と言われました。実際はカツカツで全く余裕はないのですが、割合としては少ないのでしょうか?

配信日: 2025.06.04

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「年金だけで夫婦が暮らしていけるのはすごい!」と言われました。実際はカツカツで全く余裕はないのですが、割合としては少ないのでしょうか?
高齢者世帯において、大事な収入源となるのが年金です。年金収入のみで老後生活を送りたいと考える方も少なくないでしょう。しかし、実際に年金収入のみで生活している世帯がどれくらいあるのかを知らない方は多いはずです。
 
そこで本記事では、年金収入のみで生活している高齢者世帯の割合について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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老後生活に必要な生活費

総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」から、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における支出額の平均を図表1にまとめました。
 
図表1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯

月平均額
消費支出 25万959円
非消費支出 3万1538円
合計額 28万2497円

出典:総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」より筆者作成
 
図表1の非消費支出とは、直接税と社会保険料を合わせたものです。あくまで平均額ですが、夫婦のみの高齢者世帯は1ヶ月あたり28万2497円、年間では338万9964円を生活費として用意する必要があります。
 

年金だけで生活している世帯の割合

厚生労働省の「2023(令和5)年国民生活基礎調査の概況」では、公的年金や恩給を受給している高齢者世帯のうち、総所得のなかで公的年金と恩給の所得が占める割合が明らかにされています。
 
その割合が100%、つまり総所得のすべてが公的年金や恩給である高齢者世帯は41.7%でした。この結果からは、約4割の高齢者世帯が年金と恩給だけで生活していることになります。
 
なお、恩給とは公務員が公務による傷病で退職した場合、公務のために死亡した場合、相当年限忠実に勤務した場合において、当人やその遺族の生活を支援するために給付される年金制度のことです。
 

老後に受給できる年金

年金にはさまざまな種類があり、人によってもらえる年金の種類や金額は異なります。一般的に年金は「公的年金」と「私的年金」の2種類ですが、老後に多くの方が受給できるのは公的年金に分類される、「国民年金」と「厚生年金」です。
 
ここからは国民年金と厚生年金について、平均受給額も含めて解説します。
 

国民年金

国民年金は老齢基礎年金とも呼ばれるもので、20歳以上60歳未満の日本に居住するすべての人が加入対象となります。国民年金には受給条件があり、保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある場合に受給資格を得られるのです。
 
国民年金の受給額はその年の支給額の満額と、保険料を納めた期間を基に算出されます。国民年金の満額は経済状況などを考慮し、年度ごとに変更されます。
 
令和7年度における国民年金の満額は、月額で6万9308円です。令和6年度が月額6万8000円だったため、1308円増加しています。国民年金の納付可能月数は480ヶ月なので、40年間分の保険料を納めれば満額の国民年金を受け取ることができます。
 
厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均受給額は月額で5万7700円でした。なお、令和5年度の国民年金の満額は月額で6万6250円です。
 

厚生年金

厚生年金は老齢厚生年金とも呼ばれるもので、公務員や会社員などが加入できる年金制度です。自営業者や専業主婦(夫)などは加入できないため、厚生年金の受給もできません。厚生年金を受給するためには、国民年金の受給条件を満たしていることと、厚生年金に加入していた時期があることが求められます。
 
厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均受給額(国民年金を含む)は14万7360円でした。
 
厚生年金の受給額には、厚生年金に加入していた期間の収入が大きく関係するため、人によって受給額に大きな差が生まれます。
 

年金収入だけでも生活は可能

国民年金と厚生年金を合わせた平均受給額は14万7360円なので、夫婦2人が平均額の国民年金と厚生年金を受給できる場合、世帯収入は29万4720円となります。
 
「家計調査報告」による、夫婦のみの高齢者世帯の生活費は月28万2497円が平均なので、年金収入のみでの生活は可能といえます。ただし、これはあくまで平均額による試算です。実際の生活費や年金受給額によっては、年金収入だけでは生活できないケースもあるでしょう。
 
(公財)生命保険文化センターが行った、「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後生活を送るための費用として、必要と考える金額の平均は月37万9000円です。この金額から考えると毎月約8万5000円不足するため、節約や収入を増やすなど工夫が必要になります。
 

よい豊かな生活を送りたい人は早めに対策をしよう

厚生労働省の調査によると、公的年金や恩給を受給している高齢者世帯のうち、総所得のなかで公的年金と恩給の所得割合が100%、つまり所得のすべてが公的年金と恩給である高齢者世帯は41.7%であることが分かっています。
 
夫婦のみの高齢者世帯において、生活費の月平均額は28万2497円です。国民年金を含めた厚生年金の平均受給額が14万7360円、夫婦2人分では29万4720円になるので、平均額を基にした計算では、会社員などの厚生年金加入者は年金収入のみで生活することは可能といえます。
 
ただし、ゆとりある老後生活を送るには、毎月約8万5000円不足すると考えられます。ゆとりある老後生活を送りたい人は、早めに不足分を補う対策をするとよいでしょう。
 

出典

総務省 家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要
厚生労働省 2023(令和5)年国民生活基礎調査の概況
総務省 恩給制度の概要
厚生労働省 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
厚生労働省 令和7年度の年金額改定について
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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