国民年金と厚生年金で「受け取れる金額」が大きく違うと言いますが、国民年金ってそんなに金額が少ないのですか?それだけで生活していけるのでしょうか?
配信日: 2025.06.01

とはいえ、実際どれくらい差があるのでしょうか。また、国民年金だけで本当に生活できるのでしょうか。現実に即してわかりやすく整理していきます。

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国民年金と厚生年金、支給額にどれくらいの差があるか
まずは、国民年金と厚生年金の基本的な仕組みから整理しましょう。国民年金は、日本国内に住んでいるすべての20歳から60歳までの人が対象となる「基礎年金」です。
一方、厚生年金は、主に会社員や公務員が国民年金に上乗せするかたちで加入する制度です。
厚生労働省年金局が公表している「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は5万7700円ということです。また、厚生年金保険の平均受給額は14万7360円であることが分かりました。
単純比較しても、年金だけをみたときに国民年金と厚生年金とでは、受け取れる額に3倍近く開きがあることになります。こうして金額の差を目の当たりにすると、厚生年金の恩恵はやはり大きいと感じるのではないでしょうか。
国民年金だけで生活していけるのか
次に、国民年金だけで暮らす現実を考えてみます。
総務省の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」を見ると、65歳以上の単身無職世帯のひと月の平均消費支出は14万9286円です。この金額には食費や住居費、水道光熱費、医療費などの最低限の生活費が含まれています。
そのため、豪華な暮らしをしているわけではなく、どちらかといえば質素な生活を前提とした数字といえるでしょう。
ところが、国民年金の支給額は月々5万7700円ほどに過ぎません。この金額では到底足りず、毎月10万円近く赤字が出てしまいます。もし十分な貯金がなければ、生活を維持するために何らかの工夫が必要です。年金だけを頼りに老後を過ごすのは、かなり厳しい現実だといえます。
また、年齢を重ねるにつれて、医療費や介護費の負担が増えるリスクも無視できません。持ち家があれば多少安心ですが、もし賃貸に住み続ける場合は、家賃など固定費が重くのしかかります。年金生活は、思った以上にシビアなものだと知っておく必要がありそうです。
生活を支えるためにできる工夫とは
国民年金だけで安心して暮らすのは難しいのが現実です。少しでも老後の暮らし向きが安定したものになるよう、今からできる対策を考えてみましょう。
たとえば、付加年金や国民年金基金といった制度を利用して、将来もらえる年金額を少しでも上乗せしておく方法が挙げられます。どちらも比較的手軽に始められるため、早めの準備に向いています。
最近では、iDeCo(個人型確定拠出年金)に取り組む人も増えました。自分で掛け金を拠出して運用する仕組みですが、節税効果があるのが大きな特長です。将来のための資産づくりだけでなく、現役時代の家計にもプラスをもたらしてくれます。
また、体力や気力に余裕があれば、老後も無理のない範囲で働き続けるのも選択肢の一つです。最近は、シニア向けの求人も増え、週数回の勤務や短時間だけの仕事も見つけやすくなっています。収入面の補完だけでなく、社会とのつながりを持ち続ける意味でも、働くことには大きな意義があるでしょう。
さらに、どうしても家計のやりくりが難しいときは、国や自治体の支援制度を利用するという選択も有効です。たとえば、生活保護制度や医療費の助成制度など、条件を満たせばサポートを受けられる仕組みがあります。もしもの場面に備えて、制度の存在を知っておくことも大切です。
国民年金の現実と厚生年金との差を理解し、早期の対策を始めよう
ここまで国民年金の現実と対策についてお伝えしてきました。厚生年金に加入しているかどうかで、老後に受け取れる金額には大きな差が生まれます。もし国民年金だけに頼るなら、早い段階から備えておく意識が必要不可欠です。
小さな工夫や積み重ねでも、時間をかければ大きな違いにつながっていくことでしょう。未来の自分を守るために、今できることに一つずつ取り組んでいきましょう。少しずつでも前向きな準備を始めれば、不安もきっと軽くなっていきます。
出典
総務省 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要(19ページ)
厚生労働省年金局 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(8、19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー