更新日: 2019.06.21 その他年金

医療費や年金等で膨れ上がる日本の社会支出、どれくらい増えているのか

医療費や年金等で膨れ上がる日本の社会支出、どれくらい増えているのか
日本は少子高齢化社会に突入し、既に人口が減り始めています。高齢者が増えることで医療費や年金等の社会支出が膨れ上がり、国の財政は相当厳しいと思っている人は多いかと思います。
 
そこで、実際のところ社会支出はどのくらい増えているのか、他の国に比べて支出は多いか等、国の現状を少し確認してみました。
 
松浦建二

執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/

社会支出は僅か10年で26兆円も増えている

社会支出とは、「厚生水準が極端に低下した場合に、それを補うために個人や世帯に対して財政支援・給付する、公的・私的に供給する社会的な支出」のことで、9つの政策分野に支出を分類できます。
 
(1)高齢……厚生年金や国民年金の老齢年金、国民年金基金等
(2)遺族……厚生年金や国民年金の遺族年金、健康保険の埋葬料等
(3)障害・業務災害・傷病……厚生年金や国民年金の障害年金、健康保険の傷病手当金等
(4)保健……健康保険の医療給付や出産育児一時金、生活保護の医療扶助等
(5)家族……児童手当や健康保険の出産手当金、雇用保険の男女均等雇用対策費等
(6)積極的労働市場政策……雇用保険の教育訓練給付や高年齢雇用継続給付等
(7)失業……雇用保険の求職者給付金や就職促進給付金等
(8)住宅……生活保護の住宅扶助や住宅対策諸費等
(9)他の政策分野……災害給付や生活保護の生活扶助等
 
下記のグラフは、これらの社会支出の推移を1980年から2016年まで分野別に表したものです。
 
政策分野別社会支出の推移
 

 
2016年度(平成28年度)の社会支出総額は119兆6384億円で、前年から1兆3604億円(1.2%)増えています。1980年(昭和55年)の支出額はまだ25兆6695億円でしたが、平成が始まって間もない1990年(平成2年)に50兆円を突破して51兆0236億円になりました。
 
そして2000年(平成12年)に83兆0559億円、2009年には100兆円を突破して105兆1858億円と、物凄いスピードで支出額が増えています。2016年度の国内総生産に対する比率は22.2%で、支出額を国民1人あたりで計算すると942,500円になります。
 
分野別では、(1)高齢の支出が55兆7549億円で最も多く、全体の46.6%にもなります。次が(4)保健の40兆6711億円(34.0%)で、この2分野だけで全体の80%にもなります。支出額を1980年と比較すると、全体では36年間で4.7倍になっており、(1)高齢は7.4倍に、(4)保健は3.6倍になっています。
 
増え方が特に大きいのは(8)の住宅で10.0倍になっています。高齢は老齢年金等の支出なので、社会支出の増加は高齢化の影響が相当大きいと考えられます。
 

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日本の社会支出は高齢と保健の比率が他国よりかなり高い

次に日本の社会支出を他の国と比べてみました。下記グラフは分野別の支出割合を欧米の5か国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデン)と比べたものです
 
政策分野別社会支出の国際比較(構成割合)
 

 
日本の支出割合が高い(1)高齢と(4)保健を合計すると81.1%になり、アメリカが78.2%で比較的日本に近いですが、(1)高齢と(4)保健の割合が日本とは逆で、アメリカは(4)保健の方が11%も大きくなっています。日本は(3)障害・業務災害・傷病、(7)失業、(8)住宅の3分野で、支出割合が最も小さくなっています。
 
また、日本では最近子育て支援が積極的になってきていますが、それでも(5)家族の支出割合はアメリカの次に小さく、イギリスとは10.3%もの大差があります。(2)遺族の割合が5.6%でドイツの次に大きくなっているのは昔の敗戦が何か影響しているのでしょうか?
 
他に国に比べて支出割合の小さい分野は強化してもらいたいところですが、一つ目のグラフをみてわかるように全体の支出を増やす余裕はありません。他の支出を削って捻出しようにも支出割合の大きい(1)高齢や(4)保健を削るのは簡単ではありません。どれも支出を減らせないなら収入を増やせば良いですが、これも簡単ではありません。
 
良い解決策を見つけるには、国民一人一人が危機感をもって国の将来を真剣に考えることが必要なのではないでしょうか。
 
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
 

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