更新日: 2024.09.15 その他年金

久しぶりに実家に帰ると父親が「待てど暮らせど年金が払われない」と。聞いてみたら年金の請求をしていなかった!これまでの年金はどうなる?

久しぶりに実家に帰ると父親が「待てど暮らせど年金が払われない」と。聞いてみたら年金の請求をしていなかった!これまでの年金はどうなる?
Aさんの父親は遠方で一人暮らし、家庭内のことをすべて任せていた妻(A さん母)は数年前に他界しています。
 
退職後は家にこもりがちだと聞き、久しぶりに実家を訪れると父親が「待てど暮らせど年金が払われない」と言うので、よく聞いてみると年金の請求をしていませんでした。これまでの年金はどうなるのでしょうか?
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験。会社員の時、年金の仕組みに興味を持ち、仕事で役立つことがないかと社会保険の勉強をはじめ、出会った方のご縁もあり、開業。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、“社員に好かれる会社”、“社員に寄り添う会社”の実現を目指す。
年金の知識を強みに、会社の顧問、セミナー、個別相談などを行う。

https://fp-keiko.com/

請求しなければ、年金を受け取ることができない

公的年金で愚痴の1つに、「会社員の保険料は、黙っていても自動的に給与から天引きされるのに、受け取る時は請求手続きが必要なんだね」と言われます。
 
公的年金は請求しなければ受け取ることができません。国民年金法第16条と厚生年金保険法第33条に「保険給付(給付)を受ける権利は、その権利を有する者の請求にもとづいて、実施機関(厚生労働大臣)が裁定する」とあるためです。
 
受け取る時期になると、自動的に振り込まれるわけではありません。Aさんは父親と離れて暮らしています。母が他界してから一人暮らしのため、心配になることもしばしば。一人暮らしになり、家にこもりがちな父親に、スマートフォンを購入。SNS等の操作を覚えてもらい連絡をとるようにしました。
 
ある日、父親の「このままでは貯蓄がなくなってしまう。年金はいつ振り込まれるのだろうか」との書き込みを見たAさんは、久しぶりに実家を訪れます。すると、「待てど暮らせど年金が払われない」と言うので、よく聞いてみると年金の請求をしていませんでした。
 
Aさんは近くの年金事務所に連絡をしてみます。「詳細はご本人さまでないとお伝えできませんが、Aさんのお父さまの生年月日では62歳から、厚生年金保険(老齢厚生年金)を受け取ることができます」とのことでした。
 
Aさんの父親は、もうすぐ67歳。何かお知らせがきていなかったのかたずねると、「何か来ていたかもしれないが、お母さんに任せっきりだったから……」とのことでした。
 

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65歳前の年金は繰り下げできない

Aさんは父親に委任状を書いてもらい、年金事務所に相談にいきました。そこで言われたことが、「良かったです。もうすぐ時効にかかって年金が受け取れなくなるところでした」
 
Aさん、「え?! 年金が受け取れないとはどういうこと?」
 
相談員、「年金の時効は5年です。65歳前の年金はその時期に受け取るものなので、お父さまはもうすぐ67歳になります。67歳を過ぎてしまうと、5年経過するので年金が1ヶ月ずつ受け取れなくなる可能性が出てきます」
 
Aさんは、その日のうちに請求しことなきを得ました。間に合ってよかった。時効で消滅した年金はなく、初回にいままでの分がまとめて振り込まれるとのこと。放置していたら、受け取れなくなるところでした。
 

日本年金機構からのお知らせは必ずチェックしましょう

65歳からの年金は、遅らせると増やすこと(繰下げ)ができます。その人の受給開始年齢が65歳からであれば、請求しないことで、自動的に繰下げ待期に移行していきます。
 
特に注意が必要な人は、65歳前に受給開始年齢になる人です。なぜなら、65歳前の年金は繰下げすることができないからです。
 
年金には時効があり、年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅します(参考:国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)。
 
Aさんの父親のように、65歳前に受給開始年齢になる人は、厚生年金保険の加入期間が1年(12ヶ月)以上ある人です(共済も同様)。生年月日や性別、加入する年金等によって受給開始年齢が異なります。
 
Aさんの父親は、すでに仕事は引退しているため、年金がないとなると死活問題です。父親はもうすぐ67歳。今回、65歳前の年金をまとめて受け取ることができるため、65歳からの年金は繰下げし、増えた年金額で受け取ることにしました。
 
繰下げすることによってAさんの父親は、増えた年金を生涯受け取ることができ、日常生活は年金のみで賄っていけるとのことです。
 

出典

日本年金機構 老齢年金を請求する方の手続き
日本年金機構 年金の時効
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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