更新日: 2024.09.10 厚生年金
夫に先立たれ「遺族年金」を受給中です。交際中の男性と“再婚”の話が出ているのですが、遺族年金は支給停止になりますか?「事実婚」であれば受給を続けられるでしょうか…?
本記事では、遺族厚生年金の概要や失権事由、事実婚の扱いなどについて紹介します。
遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金とは、会社員が在職中に亡くなった場合や、老齢厚生年金・一定の障害厚生年金の受給権者などが死亡した場合に、遺族に支給される年金です。
遺族厚生年金を受給できるのは
遺族厚生年金は、亡くなった人に生計を維持されていた「配偶者または子」「父母」「孫」「祖父母」のうち、最も優先順位の高い人に支給されます。遺族厚生年金は優先順位者が何らかの理由で受給権を失っても、次順位者に転給することはありません。
遺族厚生年金の額は
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金の3/4に相当する額です。まだ若い時期に亡くなったなど厚生年金被保険者期間が300月未満の場合は、被保険者期間は「300月」として年金額が計算されます。
例えば月給約50万円の人が在職20年で亡くなった場合、妻(40歳未満)が受給する遺族厚生年金は、1ヶ月につき5万1000円程です。
遺族厚生年金はずっと受給できる?
妻が次のいずれかに当てはまる場合、遺族厚生年金は終身受給できます。
・夫の死亡時に30歳以上
・子どもがいる
なお夫の死亡時に30歳未満で、かつ子どもがいない場合は、遺族年金の受給期間は「5年間」のみです。
しかしどちらの場合も、失権事由に該当すれば、その後ずっと遺族厚生年金が受給できなくなります。では、失権するのはどのようなケースでしょうか?
遺族厚生年金の失権
遺族厚生年金を受給していた人が結婚(内縁関係含む)したり、直系血族または直系姻族以外の人の養子になったりすると、遺族厚生年金は受けられなくなります。なお再婚し、のちに離婚しても受給権は復活しません。
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再婚すると失権
遺族厚生年金を受給している妻が再婚すると、遺族厚生年金を受ける権利を失います。これは法律上の婚姻関係にない事実婚の場合も同じ扱いです。では「事実婚」とは、どのような状態を指すのか解説していきます。
事実婚とは
事実婚とは、いわゆる「内縁」で結婚はしていないものの、事実上の夫婦関係が認められる状態のことです。厚生労働省の通達では「事実婚」は次のように定義されています。
婚姻の届出を欠くが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいい、次の要件を備えることを要するものであること。
(1)当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること
(2)当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること
つまり、戸籍の届出はしていないけれど、双方に夫婦となる意思があり、かつ共同生活をしていて社会的に夫婦と認められている状態のことです。
制度によって扱いが異なる「事実婚」
近年、増加傾向にあるとされる事実婚ですが、事実婚の一方を「配偶者」として扱うか否かは制度によって異なります。
例えば相続では、事実婚の一方には配偶者としての相続権が認められません。また事実婚の場合、所得税の配偶者控除なども受けることができません。
しかし社会保険では、実態として夫婦関係が認められる場合は、事実婚の配偶者も法律婚と同様に扱われています。そのため「事実婚」であっても、社会保険の扶養に入ることもできるし、事実婚の相手が死亡すれば遺族年金を受けることも可能です。その代わり、事実婚を開始すれば「婚姻した」ことになり、遺族厚生年金の失権事由に当てはまることになります。
まとめ
社会保険では夫婦としての実態があれば、「事実婚」も法律婚と同様に扱われます。そのため、遺族厚生年金を受給していた妻が新たなパートナーと内縁関係にある場合は、戸籍上の届出がなくても、遺族厚生年金は受給できなくなります。
近年は夫婦別姓問題もあってか、事実婚の夫婦が増加傾向にあるようです。制度によって事実婚の扱いは法律婚とは異なるため、何かあったときのために事前に制度をチェックし、様々な準備をしておくとよいかもしれません。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき
厚生労働省 生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて〔国民年金法〕
内閣府 いわゆる事実婚※に関する制度や運用等における取扱い
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士