更新日: 2019.09.03 その他年金

年金を担保にしてお金を借りることができる制度があるって本当?どんな人なら使えるの?

年金を担保にしてお金を借りることができる制度があるって本当?どんな人なら使えるの?
独立行政法人福祉医療機構の「年金担保貸付制度・労災年金担保貸付制度」は、年金を担保にして借りることができる、法律で唯一認められた制度です(この制度以外の年金担保貸付は違法です)。
 
一時的に小口に資金が必要なときに、無理のない範囲でお役立て下さい。(※平成34年3月末で申込が終了予定です)
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

どんな人が使えるの?

次の年金証書を持っていて、現在、その年金を受給している方です。

・国民年金・厚生年金保険年金証書

・国民年金証書

・厚生年金保険年金証書

・船員保険年金証書

 ※ただし、厚生年金基金、国民年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金、老齢福祉年金、特別障害年金は担保にできません。

・労働者災害補償保険年金証書

 ※ただし、石綿健康被害救済法に基づく特別遺族年金は担保にできません。
 
一方、融資が利用できない場合は次の通りです。

・現在借入残高がある場合(追加融資は出来ません)。

・繰り上げで返済が完了しても、融資決定時に予定した完済予定日に到達するまで、借り入れることは出来ません。

・生活保護を受けている場合、又は、生活保護を受けなくなって5年経ってない場合。

・特別支給の老齢年金を受給していて、65歳の年金決定手続き期間中の場合。

・現況届または定期報告書が未提出や遅れている場合。

・年金の支給が停止されている場合。

 
その他にも、独立行政法人福祉医療機構が定めによる場合があります。
 

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使い道は限られる

年金受給者が、保健・医療、介護・福祉、住宅修繕等、冠婚葬祭、生活必需品の購入など、一時的に小口の資金が必要な場合に利用することが出来ます。ただし、生活資金や旅行には使えません。
 
使える資金使途は、以下の通りです。

・保健・医療・・疾病の予防に必要な経費
        負傷や疾病の療養に必要な経費
        出産に必要な経費
        その他、保健・医療に必要な経費 
        ※通院等に必要な自動車等の購入や維持費(取得時の各種税金等)を含みます。
 
・介護・福祉・・介護・福祉に係るサービスの利用に必要な経費
        介護・福祉に係る物品の購入に必要な経費
        その他、介護・福祉に必要な経費
 
・住宅改修費・・住宅の改修等に必要な経費
        住宅や土地の購入に必要な経費
        住宅の引越しに必要な経費
 
・教育・・教育や学習等に必要な経費 
     ※資格取得や生涯学習の経費も含みます。
     毎月払いの授業料は対象外です。
     受験に係る費用には、移動経費を含みます。
 
・冠婚葬祭・・冠婚葬祭に必要な経費
        ※墓地・墓石、納骨堂の設置、改修も含みます。
       冠婚葬祭に係る移動費も含みます。
 
・事業維持・・生業を営むために必要な経費
       ※運転資金の他、事業に係る訴訟費用も含みます。
 
・債務等の一括整理・・債務等の返済に必要な経費
      
・生活必需物品の購入・・生活に必要な耐久消費財の購入に必要な経費
            ※自動車・家電・家具・寝具等
 

借入額と返済方法は?

借りられる範囲は、次の3つの条件を満たす範囲です。
(1)10万円~200万円の範囲内(1万円単位)
  ただし、使う目的が、「生活必需品物品の購入」の場合は80万円まで
(2)受給している年金の0.8倍以内(年額。所得税額の額分を除く。)
(3)1回あたりの定額返済額の15倍以内(おおむね2年6ヶ月以内で返済)
 借り入れ申込限度額の試算は、福祉医療機構のHPの「年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業」のコーナーで出来ます。
 
返済するときは、年金から直接返済します。返済終了まで、強制的に年金から返済額を差し引かれ、残りの年金(返済剰余金)が振り込まれます。一定額を毎月返済しますが、1回辺りの年金支給額の1/3以下とし、下限は1万円で、1万円単位です。
 
平成30年10月3日改定分の金利は、年金担保貸付は2.8%、労災年金担保は2.1%です。
 

借り入れに際し注意すること

返済期間は、介護保険料・後期高齢者医療制度の保険料、国民年金保険料、個人住民税を年金から直接差し引いて納めていた方は、返済期間中は年金から引かれなくなるため、市町村に保険料を各自で納めます。
 
繰り上げ返済をして返済期間が借り入れ決定時より早くなっても、決定した完済予定日を経過するまで、新たな借り入れは出来ません。年金担保融資を受けた後に、やむを得ぬ事情により返済が困難になった場合は、1回だけしか変更が出来ません。
 
しかも、変更をした場合、繰り上げ返済は出来なくなります。さらに困難になっても、年金担保貸付が残っていると生活保護も受けられません。
 
安易に借り入れをするのでは無く、返済計画を立てた上で借り入れしましょう。
 
申込は、「独立行政公人福祉医療機構代理店」と表示された金融機関(銀行・信用金庫・信用組合)の窓口で直接申し込めます(福祉医療機構HPに窓口の案内があります)。
 
借り入れ申込書(窓口にあります)、年金証書、現在の支給額を証明する書類、実印・印鑑証明、本人確認書、資金使途の確認資料をご用意の上、保証人と共に、または信用保証制度を利用して申し込みます。詳しくは取扱金融機関にお問い合わせください。
 
また、「有利に借り入れできます」という斡旋業者や、形だけの物品を質入れさせて、実際は年金担保で高金利の貸付けをする被害も発生しています。ご注意ください。
 
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
 


 

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