更新日: 2020.04.07 国民年金
60歳からでも増やせる! 学生時代の未加入分の年金を増やす方法
大学を卒業してから60歳になるまで、ずっと会社員を続けてきた人も多いことでしょうが、「大学生の頃、国民年金に加入していなかったので、その分年金が少なくなりそう……。年金を増やす方法はないか」と思う人も少なくないのではないでしょうか。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
老齢基礎年金の満額は480月の納付期間
会社員であれば、老齢厚生年金と老齢基礎年金が受けられます。このうち、65歳からの老齢基礎年金を満額77万9300円(平成30年度)で受け取るためには、20歳から60歳までの40年間(480月)の納付期間が必要となります。
平成3年3月まで、大学生(昼間部)で20歳から卒業するまでの期間については、国民年金への加入義務はなく、任意加入でした。その間、国民年金に加入せず、保険料を納めていなかった人も多かったかと思いますが、卒業後60歳まで会社員として勤務しても、学生時代の未加入・未納分があると、老齢基礎年金の額が満額より減ることにもつながるでしょう。
例えば、20歳から大学卒業までの期間が35カ月あり、保険料を納めていない場合では、老齢基礎年金は72万2476円(77万9300円×445月/480月)になり、満額より5万円以上少ないでしょう。
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60歳以降国民年金に任意加入する方法
60歳以降に満額に足りない分を増やす方法ですが、60歳で定年を迎え、その後に自営業者になる、もしくは仕事をしない場合、60歳から65歳までの間で、国民年金に任意加入すれば、480月分の満額に到達するまで、保険料(平成30年度:月額1万6340円)を納付することができます。
先述の例ですと、60歳から65歳までに最大35月の保険料を納付することが可能で、35月分納めれば、満額になります。
厚生年金に加入しても実質的に基礎年金相当分が増える
一方、60歳以降も引き続き会社員を続け、毎月の給与から厚生年金保険料を負担した場合はどうなるでしょう。20歳から60歳までに厚生年金に加入すると、老齢厚生年金の報酬比例部分の額だけでなく、国民年金の老齢基礎年金の額も増やせます。厚生年金保険料で2種類の年金の額を増やせるといえます。
しかし、60歳以降に加入した分の厚生年金保険料については、報酬比例部分としての老齢厚生年金は増やせますが、老齢基礎年金部分は増やせません。ただし、老齢基礎年金が増えない代わりに老齢厚生年金の経過的加算額という部分を増やすことができます【図表1】。
これは差額加算とも呼ばれているもので、老齢基礎年金同様65歳から支給されますが、以下の計算式のとおり(1)から(2)を差し引いて計算されます。
60歳以降厚生年金に加入すれば、合計480月分までは(1)の額が増えることになり、一方、(2)の額は増えないため、単純にその差額が経過的加算額として年金が増えることになります。
●60歳を迎える人の経過的加算額(平成30年度)の計算式
経過的加算額 =(1)-(2)
(1)1625円×厚生年金加入月数(最大480月)
(2)77万9300円×20歳以上60歳未満の厚生年金加入月数/480月
先ほどのように学生時代の国民年金未納・未加入分が35月あり、60歳以降の厚生年金加入期間が35月であれば、(1)が78万円(1625円×480月)で、そこから72万2476円のままの(2)を引くと、5万7524円が経過的加算額として増えることになります。
つまり、学生時代の未加入・未納分について、老齢基礎年金として増えなくても、実質的にそれに相当する額が老齢厚生年金として増やせることになるでしょう。
Text:井内 義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー