更新日: 2023.03.27 その他年金
【2023年4月から】年金額が改定!「引き上げ」だけど実質「増えてない」って本当?
そこで、本記事では、実質「増えていない」のは本当なのか、解説します。あわせて、給付と負担のバランスを調整する仕組みである「年金額の改定ルール」についても紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
2023年4月からの年金額とは?
2023年1月に総務省が公表した「平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)を踏まえ、法律に基づき2023年4月から年金額が引き上げられます。67歳以下の新規裁定者は前年度比較で2.2%、68歳以上の既裁定者は前年度比較で1.9%の引き上げです。
新規裁定者の実際の年金額でいうと、国民年金の場合、2022年度は月額で6万4816円、2023年度は6万6250円です。前年度と比べると、1434円増えたことになります。
一方、厚生年金の場合、2022年度は月額で21万9593円、2023年度は月額で22万4482円(新規裁定者である夫婦2人分が平均標準報酬額43万9000円で40年間勤務した場合、老齢基礎年金を含む標準的な年金額を想定)です。前年度と比べると、4889円増えたことになります。ちなみに、新しい年金額は、2023年6月の支給(4月分と5月分の年金)です。
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年金額の改定ルールとは?
年金額の改定ルールは、法律によって定められています。まず、年金額の引き上げは「名目手取り賃金変動率」が「物価変動率」を超えた場合に発動されます。2023年度は名目手取り賃金変動率が2.8%、物価変動率が2.5%だったため、年金額が改定されることになりました。
名目手取り賃金変動率は「2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率」+「前年の物価変動率」+「3年度前の可処分所得割合変化率」という計算式から求めます。「2019年度から2021年度までの3年度平均の実質賃金変動率=0.3%」+「2022年の物価変動率=2.5%」+「2020年度の可処分所得割合変化率=0%」だったため、2023年度の名目手取り賃金変動率は2.8%になりました。
新規裁定者の年金額の場合は名目手取り賃金変動率、既裁定者の年金額の場合は物価変動率を使って改定されます。同時に、今年度のマクロ経済スライドと2年度前と前年度のマクロ経済スライド未調整分による調整も行われます。マクロ経済スライドとは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するものです。
2023年度のマクロ経済スライドは-0.3%、2021年度と2022年度のマクロ経済スライド未調整分(前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持した上で、調整しきれずに翌年度以降に繰り越された未調整分)が-0.3%だったため、2023年度の年金額の改定率は、新規裁定者の場合2.2%、既裁定者の場合1.9%になりました。
そのため、年金額は増えても、物価や賃金が上昇分に追いついていないことが分かります。つまり、年金額は実質「増えていない」のです。
年金額は引き上げられたけど実質「増えていない」
年金額は物価や賃金の増減を踏まえて、改定されます。そのため、2023年4月から67歳以下の新規裁定者は前年度比較で2.2%、68歳以上の既裁定者は前年度比較で1.9%も引き上げられました。しかし、年金額は増えても、物価や賃金が上昇分には追いついていません。
むしろ、マクロ経済スライドの適用(未調整分を含む)により実質的には目減りしています。そのため、引き上げられたといっても、実質的には「増えていない」といえます。
出典
厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー