更新日: 2023.03.09 その他年金
年金受給「60歳から」と「65歳から」でいくら違う? 早めに受給すると絶対に損なの?
老後の生活費が足りない場合には、60歳で年金を受け取ることが現実的となるケースもあるでしょう。しかし、何十年も保険料を支払ってきたのだから、損をしないでできるだけ多くの額を受け取りたいところです。
本記事では、年金の繰上げ受給の減額の仕組みをはじめ、実際に減額率が適用された場合の年金額について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
年金を60歳で繰上げ受給すると24.0%も減額される
原則、65歳で老齢年金の受給資格を得ますが、繰上げ制度を利用すれば、60歳から65歳になるまでの希望した期間で受け取れるようになります。
ただし、年金を受け取る時期を早めた期間に応じて年金額が減り、受取開始時期を60歳にした場合の減額率は24.0%となります。適用された減額率は一生涯継続し、後から変更はできないので注意する必要があります。
繰上げ受給によって減額する年金は「0.4%×繰上げ請求月から65歳に到達する日の前月までの月数」で計算(昭和37年4月1日以前生まれの人の減額率は0.5%)します。
老齢基礎年金を20歳から60歳まで満額納付して、65歳から77万7800円(令和4年度)を受け取るものとして計算してみましょう。
年金の受取開始時期を60歳から65歳になるまでに繰上げた場合、受け取れる年金額は図表1のとおりです。
【図表1】
請求時の年齢 | 減額率 | 減額後の年金額 |
---|---|---|
60歳 | 24.0% | 約59万1100円 |
61歳 | 19.2% | 約62万8400円 |
62歳 | 14.4% | 約66万5700円 |
63歳 | 9.6% | 約70万3100円 |
64歳 | 4.8% | 約74万400円 |
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年金を60歳で繰上げ受給すると損をする?減額以外の注意点
公的年金の受取開始時期を60歳から65歳になるまでに前倒しした場合、年金額が一生涯減額する以外にも注意が必要なデメリットがあります。
●国民年金の任意加入や、保険料の追納ができなくなる
●老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰上げはできない
●繰上げ受給開始後に障害状態になっても障害基礎年金の新規請求ができない
●65歳までは老齢年金と遺族年金の併給不可
●寡婦年金を受給中の場合は受給資格を喪失する
年金の繰上げ受給を検討する際には、本当に制度の恩恵を受けられるかどうかを十分に確認する必要があるでしょう。
年金の繰上げ受給の損益分岐点は80歳〜84歳
年金の繰上げ受給の損益分岐点(繰上げ受給によって減額された年金額が65歳受給開始時の年金額に追い付く年齢)は、減額率0.4%の場合は図表2のとおり80歳〜84歳です。
【図表2】
請求時の年齢 | 損益分岐点の年齢 |
---|---|
60歳 | 80歳10ヶ月 |
61歳 | 81歳10ヶ月 |
62歳 | 82歳10ヶ月 |
63歳 | 83歳10ヶ月 |
64歳 | 84歳10ヶ月 |
損益分岐点となる年齢よりも長生きしなれば年金の繰上げ受給が得になりませんが、その年齢まで生きられるのかは誰にも分かりません。厚生労働省の「令和2年簡易生命表」では、男性の平均寿命は81.64歳、女性の平均寿命は87.74歳と伝えています。
持病があるなど長生きをする自信がない、生活費を確保できそうにないなら、繰上げ受給で確実に年金を受け取っておくのは有効な方法といえるでしょう。
繰上げ受給が損か得か判断した上で請求手続きを行おう
年金の繰上げ受給には、年金を早く受け取れるメリットはありますが、受取開始時期を早めるほどに減額率が高くなって年金総額が少なくなります。
そのほかにも、年金額が生涯にわたって減額されるだけでなく、国民年金の任意加入や追納ができない、ほかの公的年金と併給できない点にも注意が必要です。
しかし、年金の繰上げ受給をすれば、年金を確実に受け取れます。繰下げ受給をしたものの待機期間中などに死亡した場合、受給権者本人は年金を受け取れなくなる可能性が高いです。
年金の繰上げ受給はデメリットばかりの制度ではありません。自分の健康や貯蓄の状況などを把握した上で、適切なタイミングで年金の受給を行ってください。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部