更新日: 2023.03.03 その他年金
「年収300万円」の会社員です。将来の年金はいくら受け取れますか?
特に会社員の場合、社会保険料の納付は会社が代行しているため、自分がどのくらい保険料を納めたのか分からない人が多いでしょう。本記事では、30年間同じ会社に勤めている年収300万円の会社員を例に、どのくらいの年金を受け取れるのか、年金受給を繰り上げ・繰り下げした場合とともに解説します。
執筆者:辻本剛士()
年金制度について
まず、年金についておさらいします。日本の年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金、会社員や公務員などが加入する厚生年金による「2階建て構造」となっています。
国民年金は、自営業者や学生、無職の人などが加入し、10年以上加入することで65歳から年金を受け取れます。厚生年金は、毎月の給料や賞与に応じて保険料が変わるため、給料などが多ければその分負担する保険料が増え、将来受け取れる年金も増額されます。なお、保険料の半分は会社が負担します。
繰上げ受給と繰下げ受給
年金の受け取り開始は65歳を基本として、繰上げ受給または繰下げ受給が可能です。
繰上げ受給は、60歳から65歳までの間に受給開始を早めて年金を受け取ることをいいます。繰上げ受給をすると、1962年4月1日以前に生まれた人は、ひと月当たり0.5%減額されて受給し、1962年4月2日以降であればひと月あたり0.4%の減額での受給です。
繰下げ受給は、66歳から75歳までの間に受給開始を遅らせて年金を受け取ることをいいます。繰下げ受給をすると、ひと月当たり0.7%が増額されて受給できます。
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年収300万円の場合いくら受け取れるか
30年間同じ会社に勤めている会社員が65歳時点で受け取れる年金額を算出するには、国民年金と厚生年金の両方を計算する必要があります。計算にあたって、給与が20万円、賞与が2回あってそれぞれ30万円とします。
国民年金の計算式は、77万7800円×(保険料納付済月数+全額免除月数×4/8+4分の1納付月数×5/8+半額納付月数×6/8+4分の3納付月数×7/8)÷(40年×12ヶ月)です。計算にあたって、免除などの期間はないものとします。
77万7800円×(40年×12ヶ月)÷(40年×12ヶ月)=77万7800円
将来受け取れる国民年金は、年額77万7800円です。
厚生年金の計算式は、2003年を境にして計算式が変わります。2003年3月以前の加入期間は、平均標準報酬月額×7.125÷1000×2003年3月までの厚生年金加入月数です。
20万円×7.125÷1000×(10年×12ヶ月)=17万1000円
2003年4月以降の加入期間は、平均標準報酬額×5.769÷1000×2003年4月以降の厚生年金加入月数です。
25万円×5.769÷1000×(35年×12ヶ月)=60万5745円
厚生年金は17万1000円+60万5745円=77万6745円となります。
よって現時点で受け取れる厚生年金は、年額77万6745円です。
国民年金と厚生年金を合わせた金額が公的年金の総額となります。
国民年金77万7800円+厚生年金77万6745円=155万4545円
つまり年額155万4545円であり、月額12万9545円が65歳時点で受け取れる公的年金額です。なお厚生年金保険料は原則として70歳まで納付が可能であり、その分支給額を増やすことができます。
繰上げ受給や繰下げ受給するといくらか
現時点の公的年金受給額を計算しました。続いて繰上げ受給や、繰下げ受給した場合、いくらになるか計算してみましょう。
繰上げ受給は、65歳より前に受け取りたい場合に手続きすれば繰り上げられます。もし60歳から受け取るとすれば、0.4%×(5年×12ヶ月)=24%となります。
公的年金155万4545円×(100%-繰上げによる減額率24%)=118万1454円
つまり年額118万1454円であり、月額9万8454円です。
繰下げ受給は、65歳より後に受け取りたい場合に手続きすれば繰り下げられます。もし75歳から受け取るとすれば、0.7×(10年×12ヶ月)=84%となります。
公的年金155万4545円×(100%+繰下げによる増額率84%)=286万362円
つまり年額286万362円であり、月額23万8363円です。
老後生活をより豊かにするためには
30年間同じ会社に勤めている年収300万円の会社員の年金額を計算してみました。年金は老後生活において大切な収入源となります。しかし公的年金だけでは、豊かに生活できるかといわれれば、十分とはいえないと思う人も多いでしょう。
繰下げ受給の計算をしたように、公的年金の受け取りを繰り下げれば最大84%の増額になります。しかしそのためには、65歳の定年以降10年間は年金がない状態となります。会社によっては65歳以降でも再雇用として働ける場合があることや、また第二の人生として他の業種や職種で働くという選択もあるでしょう。
その他にも現役時代にiDeCoなどの私的年金制度を活用したり、生命保険会社が販売している個人年金保険に加入したりして補うことも可能です。老後生活をより豊かにするために今から、工夫を凝らしてみるとよいでしょう。
出典
日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
日本年金機構 70歳以上の方が厚生年金保険に加入するとき(高齢任意加入)の手続き
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士