更新日: 2019.01.10 その他年金
60歳以降厚生年金に加入しても年金は増えない!? 遺族年金の注意点
遺族年金を受けながら、その後、働く人も多いでしょう。
働いて厚生年金に加入する場合は、毎月の給与から保険料も引かれることになりますが、その保険料の将来受け取る年金への影響について知り、備えておく必要があります。
Text:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
65歳以降の遺族年金は差額支給
会社員の夫が亡くなり、遺族厚生年金を受け取っている妻自身が、年金収入だけでは足りず働くこともあるでしょう。
フルタイムあるいはその4分の3以上の勤務時間(原則)で働き始めると、毎月の給与や賞与の額に応じて厚生年金の保険料を負担することになります。
60歳台前半に特別支給の老齢厚生年金を受ける権利が得られる場合は、65歳まで遺族厚生年金とどちらか選択して受給することとなりますが、65歳以降の年金については、種類の異なる老齢年金と遺族年金は併せて受け取ることができます。
ただし【図表1】のとおり、老齢基礎年金(1)と老齢厚生年金(2)をまず優先的に受給し、遺族厚生年金は老齢厚生年金相当額を差し引いた額(3)となります。
仮に老齢厚生年金が30万円、本来の遺族厚生年金が100万円であれば、30万円を差し引いた70万円が遺族厚生年金として受け取れることになるでしょう。
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厚生年金に加入すると増える年金とは
20歳以降60歳までに会社員として負担した厚生年金保険料は、老齢厚生年金の本体ともいうべき報酬比例部分の額だけでなく、国民年金の制度である65歳からの老齢基礎年金の額にも反映されます。
しかし、65歳からの遺族厚生年金は老齢厚生年金との差額支給となります。報酬比例部分の老齢厚生年金が増えた分については、遺族厚生年金が減ることになります。
ただし、調整の影響を受けない老齢基礎年金については増やすことができるといえます。
60歳以降厚生年金に加入しても年金は増えない!?
一方、60歳以降に厚生年金に加入した場合は、さらに要注意です。60歳以降の厚生年金加入期間分については、老齢基礎年金は増えないことになっています。
代わりに報酬比例部分に加え、老齢厚生年金の経過的加算額を増やすことができるようになっていますが、これはあくまでも厚生年金の制度です。
もし、老齢厚生年金より圧倒的に金額の高い遺族厚生年金がある場合は、報酬比例部分と経過的加算額が多少増えたとしても、その分の遺族厚生年金が減ることになり、年金の合計額では変わらないことにもなります【図表2】。
厚生年金は最大70歳までの加入となりますが、60歳から70歳まで、もし会社からの給与(標準報酬月額)が20万円であれば、月額1万8300円の保険料(平成29年9月以降の保険料率で計算)を負担する計算となり、10年では単純に合計219万6000円を負担する計算となります。
「将来の年金を増やそうと思って、60歳以降も頑張って働き、毎月の給与から厚生年金保険料が引かれていたのに、年金が増えていない……」ということがありますので、注意が必要です。
Text:井内 義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー