更新日: 2020.03.04 iDeCo(確定拠出年金)

選択型DC(選択型確定拠出年金)で、本当に大丈夫?

執筆者 : 大泉稔

選択型DC(選択型確定拠出年金)で、本当に大丈夫?
企業年金連合会の統計によれば、企業型DC(企業型確定拠出年金)の加入者は、平成20年に310.9万人だったのが平成29年には648.1万人と、10年間で倍を超える勢いで増えています。
 
ところで、企業型DCは導入した企業にお勤めの方は全員加入が原則なのですが、選択型DC(=選択型確定拠出年金)といわれる制度もあります。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

選択型DCとは?

企業型DCは、企業が給料とは別に確定拠出年金の掛け金を支給するのが一般的です。
 
選択型DCは、会社が給料を減額し、減額した分をあらためて「選択型DCの掛け金」として受け取る、もしくは「減額分を今受け取る給料」として受け取る……どちらを受け取るのかを従業員が選ぶことができます。
 
つまり、従業員は選択型DCを利用するのか否かを自ら選ぶことができることから、選択DCといわれているのです。「企業型DCの掛け金」を新たに支給する必要がないのは、会社にとって大きなメリットですね。

選択型DCのメリット

選択型DCは「(現在受け取る)給料の減額」が前提です。会社側の負担(=企業型DCの掛け金)を増やさないためです。先述のとおり、これは会社側のメリットですが、従業員にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?
 
現時点で受け取る給料の額面は減額しますが、減額した分は企業型DCの掛け金に充てられているため、従業員の受け取り給与増額は実質的にはマイナスにはなっていません。
 
給料が減額していますので、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)と労働保険料(雇用保険料)も減ります。社会保険料や雇用保険料は会社側にも負担がありますから、これらが減るのは会社側にとってもメリットです。
 
また、それに伴い従業員の所得税や住民税も当然減ります。ちなみに、企業型DCの掛け金に充てるお金には、税金や社会保険料は掛かりません。こうしてみると、企業型DCは会社側と従業員側のどちらにもメリットがありますよね。

選択型DCのデメリット

では、デメリットはなんでしょうか?
 
例えば、負担する社会保険料が少ないということは、将来受け取るものも少なくなるということです。年を取った時に受け取る老齢厚生年金、ケガや病気などで休業を余儀なくされた時に受け取る傷病手当金、失業や定年退職などによって職を失った時に受け取る(雇用保険の)基本手当など、いずれももともとは給料がベースです。
 
また、残業手当や深夜手当などは給料をベースに計算しますし、勤め先によってはボーナスや退職金も給料をベースとするところもあるでしょう。
 
ただし、選択型DCを導入した会社もメリットばかりとはいえないでしょう。選択型DCを選んだ従業員と、選ばない従業員が併存することになります。また、選択型DCを選んだ従業員には、この制度の仕組みを学ぶ「教育の機会」を提供しなくてはなりません。いずれにせよ、会社は管理する手間が増えそうですよね。
 
ちなみに、選択型DCを導入した企業は「選択型DCを選ばない」従業員には「本来の基本給」を支給しています。一度給与を減額した上でその分を差し戻し、本来の基本給額を支給します。

まとめに代えて……選択型DCを選んだ方へ

そもそもDCとは、ご自身で運用して将来の年金を作るものです。また、繰り返しになりますが、給与を減額してその分を選択型DCの掛け金に充てています。給料が減った分=DCの掛け金の分、将来の老齢厚生年金が減ってしまいます。
 
つまり、DCの運用で「減った老齢厚生年金のリカバリー」ができて初めて「運用の結果がプラスマイナスゼロ」という状態なのです。ということは、「減った厚生年金のリカバリーを超えるパフォーマンス」を上げて初めて選択型DCを選んだ意味があるということなのです。
 
(参考)企業年金連合会「確定拠出年金の統計」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役


 

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