更新日: 2020.01.17 厚生年金
給与が大幅に変わると厚生年金保険料が変わる! 随時改定のルールとは?
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
原則は次の8月まで同じ保険料
厚生年金保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算されます。標準報酬月額は厚生年金保険料の計算にあたって用いる給与などの報酬の額となっています。
標準報酬月額の算出において、基本給の他に通勤手当、家族手当といった手当も報酬に含まれ、その報酬の月額に応じて1等級(8万8000円)から31等級(62万円)までの標準報酬月額に当てはめることになります(【図表1】)。
そして、掛け合わせる保険料率は18.3%(会社員等第1号厚生年金被保険者の2017年9月以降の保険料率)です。保険料は会社と被保険者(厚生年金加入者)が折半して負担しますので、被保険者は9.15%分を負担することになります。
新規に入社した人については、入社時・厚生年金加入時の給与の額を元に標準報酬月額が決まり、その標準報酬月額で、翌年8月分(1月~5月の入社の場合は同年8月分)までの厚生年金保険料が決まります(資格取得時決定)。
また、すでに勤務し続けている人については、原則、毎年4月、5月、6月の3ヶ月間の給与の平均額を元に標準報酬月額が算出されて、その年の9月分から翌年8月分までの毎月の厚生年金保険料が決まります(定時決定)。
もし、標準報酬月額が26万円と決まれば、翌年8月分(1月~5月の入社の場合は当年8月分)までの保険料は4万7580円(26万円×18.3%)になり、被保険者負担分はその半分の2万3790円となって、2万3790円が給与から引かれます。
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給与が大幅に変わると見直し
しかし、その次の8月までの間に給与の額が変わることもあるでしょう。給与の額が変わったのに、保険料が同じのままでは実態に合わないことにもなります。そこで、昇給・降給、手当の支給額の変更などで固定的賃金の変動があり、受け取る給与の額が大幅に変わった場合は標準報酬月額が改定されます。
実際の改定は、変動のあった月も含めた引き続く3ヶ月間の報酬の平均額から標準報酬月額に当てはめ、変動月前と比べて原則2等級以上の差が生じた場合に行います。そして、変動のあった月から数えて4ヶ月目から標準報酬月額、厚生年金保険料は変わることになります。
2等級以上の変動が条件ですので、数千円変動したくらいでは改定は行われないことになり、また、4ヶ月目からですので、大幅な昇給があったからといって、昇給月分からすぐに保険料が変わるわけではありません。
これは随時改定と呼ばれる改定ですが、例えば、【図表2】のように標準報酬月額が26万円(17等級)だった人が10月の昇給で2等級上がり、30万円(19等級)に変わった場合では、昇給月(10月)から4ヶ月目である1月分から標準報酬月額が改定され、1月分から保険料が変わります。
1月から6月までに改定がされると、これが同年8月分までの各月の保険料となり、7月から12月までに改定が行われると、翌年8月までの各月の保険料となりますので、【図表2】の場合の改定では、1月分から同年8月分までの保険料となります。
そして、次の9月分以降については、また4月、5月、6月の給与に基づいた定時決定で保険料が決まります。昇給があった時に保険料額が変わっていないかどうか、給与明細で確認してみましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー