更新日: 2020.01.12 国民年金

年金機構に確認したら、未納期間に合算対象期間が見つかった! そんなことってあるの?

執筆者 : 大泉稔

年金機構に確認したら、未納期間に合算対象期間が見つかった! そんなことってあるの?
国民年金は「40年」きっちり納めるのが原則ですが、きっちり納めることができた人は、恵まれている方なのかも知れません。さまざまな事情で、国民年金保険料を納めることの難しい時期もあった人もいらっしゃるでしょう。
 
しかし40年に満たなくても、受給資格期間が10年あれば、65歳から国民年金をもらうことができます。
 
もしその10年に満たない場合でも、受給資格期間として見なされる「合算対象期間」というものがあり、保険料納付・免除・合算対象の各期間を合計した期間が10年以上あれば受給の要件を満たせます。受給資格期間と合算対象期間について確認していきましょう。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

「受給資格期間」を確認する

まずはじめに、「受給資格」の確認をしましょう。以下を全て合計して、「10年以上」になれば「受給資格を満たしている」ことになり、65歳の時点で国民年金をもらうことができます。

・保険料納付済期間

国民年金保険料を払った期間はもちろん、会社等に雇われ厚生年金保険料を天引きされていた期間(免除期間含む)、第三号被保険者として扶養に入っていた期間がここに含まれます。

・国民年金保険料の免除の期間

国民年金保険料の免除の手続きをした期間のことです。なお、受給資格の計算においては「免除の割合(全額・4分の3・半額・4分の1)」は関係ありません。「免除の割合」が影響してくるのは「受給額の計算」においてです。

・納付特例や納付猶予の期間

国民年金保険料の「若年者納付特例」や「学生納付猶予」の手続きをした期間のことです。これらの期間は国民年金保険料を全く納めていないので「受給額の計算」には含まれないのですが、「受給資格」には含まれます。

・合算対象期間

本稿のメインテーマです。以下、合算対象期間については、別項で詳細を見ていくことにしましょう。
 

そもそも合算対象期間とは?

合算対象期間は、老齢基礎年金の「受給額」の計算には含まれず年金額には反映されませんが、老齢基礎年金の「受給資格」の計算には含まれる期間です。合算対象期間は、具体的には以下があります。

1.昭和61年4月1日以降の期間(☆は20歳~60歳の期間に限る)

☆海外に住んでいたとき
☆平成3年3月までの学生だった期間
★20歳未満または60歳以上で第2号被保険者だった期間
☆国民年金の任意加入の手続きを行ったものの、保険料を払っていない期間
☆日本国籍の取得前、もしくは永住許可を受ける前の海外在住期間

2.昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間(☆は20歳~60歳の期間に限る)

☆厚生年金保険などの加入者の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間
☆厚生年金保険などから支給される老齢年金受給権者とその配偶者、老齢年金の受給資格期間を満たした人とその配偶者、障害年金受給権者とその配偶者、遺族年金受給権者で国民年金に任意加入しなかった期間
☆学生だった期間
☆昭和36年4月以降の国会議員であった期間(昭和55年4月以降は国民年金に任意加入しなかった期間)
☆昭和37年12月以降の地方議員であった期間で、国民年金に任意加入しなかった期間
☆.昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した、または永住許可を受けた方の、外国籍で
あるために国民年金の加入が除外されていた昭和56年12月までの在日期間。また日本国籍の取得前、もしくは永住許可を受ける前の海外在住期間
☆日本人であって海外に居住していた期間
★厚生年金保険・船員保険の脱退手当金を受けた期間(昭和61年4月から65歳に達する日の前月までの間に保険料納付済期間(免除期間を含む)がある人に限る)
☆国民年金の任意脱退の承認を受けて、国民年金の被保険者にならなかった期間
★厚生年金保険、船員保険の被保険者および共済組合の組合員期間のうち、20歳未満または60歳以上の期間
☆国民年金に任意加入したが保険料が未納となっている期間

3.昭和36年3月31日以前の期間

★厚生年金保険・船員保険の被保険者期間(昭和36年4月以降に公的年金加入期間がある場合に限る)
★共済組合の組合員期間(昭和36年4月以降に引き続いている場合に限る)
 
では、老齢基礎年金を受け取るにあたり、この合算対象期間が、どのように影響してくるのでしょうか? 実際に筆者が相談を受けた2つの事例をもとに見ていくことにしましょう。
 

<ケースその1>62歳女性の場合

この62歳の女性が国民年金保険料を納めていたは、40月(3年4ヶ月)のみでした。相談を受けた当時は、受給資格は120月(10年)ではなく、300月(25年)が必要でした。
 
ところが国民年金の納付記録を詳しく見ていくと、国民年金保険料の免除期間が75月(6年3ヶ月)ありました。しかし、先述の保険料納付済期間と免除期間を併せても115月ですから、300月に遠く及びません。
 
その場では女性の夫の年金記録についての確認はできませんでしたが、話を進めていくと夫には「昭和61年3月31日以前、結婚後に、少なくとも13年(160月)ほど、サラリーマンをしていた」時期があったことが分かりました。
 
これが先述した「合算対象期間」のうち「厚生年金保険などの加入者の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間」にあたり、160月が「合算対象期間」になります。
 
最終的に、この相談者の女性の受給資格期間は「保険料納付済期間40月+免除期間75月+合算対象期間160月」の275月であることが判明しました。
 
これでもまだ300月には足りませんが、相談者はこれから国民年金に任意加入する意味があるのか否かを知りたかったとのこと。あと25月で受給資格期間が満たされるため、任意加入し、残り2年ほど保険料を納付していくことを決めました。
 
合算対象期間の160月分は、昭和61年3月31日以前の国民年金の第3号被保険者がなかった時代です。「厚生年金保険被保険者の配偶者」という記録はなされていなかったのでしょうか。合算対象期間は、年金事務所でも把握できていない可能性があると言えそうです。
 

<ケースその2>夫を亡くした40代半ばの女性

続けて夫を亡くした40代半ばの相談者のケースをご紹介します。相談者の夫は会社勤めを辞め、起業した直後に事故で亡くなったとのこと。ですから当時は厚生年金保険ではなく、国民年金保険に加入していたということになります。
 
起業と同時に国民年金の保険料をまとめて支払い済みだったため、国民年金保険料の未納はありません。なお、夫妻には子どもはおらず「遺族基礎年金」の支給はありません。
 
夫が亡くなったのは46歳で、年金記録を見ると受給資格期間は19年5ヶ月(=233月)。当時の受給資格期間300月に足りませんが、話を進めるにつれ、大学を卒業したのが平成元年・26歳であることが分かりました。
 
先述の「合算対象期間」の「平成3年3月までの学生だった期間」に当てはまる、20歳~26歳のうち72月の合算対象期間が見つかったのです。
 
勤続19年5ヶ月、233月の期間は厚生年金保険の加入期間ですので、これに合算対象期間72月を加えれば305月です。遺族厚生年金の長期要件(※1)に該当しますので、相談者には遺族厚生年金が支給されることになります。
 
学生が任意加入だった時代、未加入学生については「学生のため国民年金保険料を納めていない」という年金記録はなされていません。合算対象期間は年金事務所でも把握できていない可能性が高いと言えそうです。
 
※1 参考:遺族厚生年金の長期要件
老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき、被保険者(=このケースでは亡夫)の死亡の当時、厚生年金の被保険者でなくとも他の要件を満たしていれば遺族厚生年金を受け取ることができます(老齢年金の受給資格期間は10年になりましたが、遺族厚生年金の長期要件は25年のままです)。
 

まとめに代えて

合算対象期間について、いかがでしたでしょうか?受給資格期間が10年間に短縮され、老齢基礎年金を受け取れる方が増えました。しかし冒頭に申し上げた通り、さまざまな事情で納付できなかった時期がある方もいるでしょう。
 
受給資格期間の関係で諦めていた方が、この記事をご覧いただいたことをきっかけに、老齢基礎年金の受給につながることを願ってやみません。
 
[参考] 国民年金機構「合算対象期間」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役


 

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